人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
4月18日
我等帝国軍が主催するマジノ線防衛戦の慰労会が、レリコフ元帥とその幕僚達そしてその旗下の兵士達を招いて行われた。
マジノドームに設けられた広大な広場には、一般の兵士やマジノドームに入植を求めて来た一般の人民も、自由に会場に出入り出来るというかなり開かれた会場設定なので、非常に賑やかだ。
レリコフ元帥とその幕僚達そしてその旗下の兵士達とは、此の1ヶ月間寝食を共に過ごして居たのでかなり親密な仲になれたので、もしノルデン諸国連合が帝国にこのまま編入する事になれば、同じ帝国軍に合流してくれるだろうから、気心が知れているだけに対スラブ連邦への有り難い味方だ。
本日は無礼講で、あらゆる酒類と食べ物の飲食が許可されていて。
ノルデン諸国連合の方々は、かなりアルコール度数の高い酒が好みらしく、そこかしこでウオッカベースのカクテルや、此方が用意した蒸留したワインとバーボンそしてウイスキーが飲まれている。
「・・・これは、美味い!
今まで、西方で主に飲まれていたワイン類は、アルコール度数が低すぎてとても酒と云えないと思っていたが、このワインは充分北方人にも通用する酒だ!
一体この酒は、どこ産ですかな?」
とレリコフ元帥がアラン様に尋ねられ、笑いながらアラン様は、
「今回用意した酒類は全て、帝国産ですよ。
今帝国では、あらゆる国の方々が御国の自慢の酒類を持ち寄り、帝都コリントで行われている酒の品評会や、毎夜何処かの華族の邸宅で行われているサロン等で飲みかわされていて、私の用意した酒造に特化した工房や、工場、そして新たに起こした『酒造ギルド』にて、其れ等の酒類を研究し更に美味しくする努力を日夜取り組んでおります。
此処に用意した酒類は、その努力の結晶の一例ですよ」
と説明された。
「・・・すると帝都コリントにお伺いすれば、此処にある酒以外にも多数の酒類に出会える訳ですな?」
と席から乗り出してアラン様に質問されていて、アラン様は可笑しそうに、
「ふふっ、酒類だけでは無いですよ!・・・
あらゆる食材、あらゆる工芸品、あらゆる鉱物、あらゆる魔道具、そして魔法技術が、今現在も帝国には凄い勢いで集まって来ており、今後の西方教会圏の文化・文明を帝国から新たに誕生させるのだ!と皆が其々の分野で頑張っていますから、何れはその波は良い方向でしノルデン諸国連合に波及します。
是非其処から生まれる波及効果を、酒類等でお楽しみ下さい」
とレリコフ元帥のグラスに、アラン様がカトルに教授して生み出された、新たな酒『大吟醸酒』を注がれながら、解説された。
レリコフ元帥も初めて飲む、酒米から醸造した『大吟醸酒』に感動された様子で、その後も帝国産のあらゆる酒類を飲まれて、最後にはへべれけになられて、幕僚達に抱えられて宿舎にお帰りになられた。
4月19日
レリコフ元帥達に見送られながら、我等帝国軍は大回りでの帝国への帰路に着いた。
既に殆どの帝国軍兵員と、例の戦奴隷だった者達約10万人は、帝都コリントまで魔導列車で送り出していて、最後に残っていたのは、陸上戦艦ビスマルクと陸上空母のアイン、ツヴァイ、ドライの計4隻とその兵員達だ。
我等はこれから往路に通った道では無くて、西廻りで西方諸国を周り大陸西端の『魔法大国マージナル』に向かい、旧ルーシア王国の王女『アナスタシア姫』をお迎えし、帝都に帰還する事になっている。
その帰路の途上に、ゲイツ王国・イリリカ王国・ザイリンク帝国に来訪し、同じ西方教会圏の国として誼を結ぶべく行動する予定だ。
凡そ2ヶ月の旅になるだろうが、帝国に何かあっても現在のドラゴン達に乗れば、音速で飛ぶ事が出来る為、ものの数時間で帝都コリントに帰還出来るから、あまり心配する必要は無いし、常に帝都コリントとは連絡出来る体勢は陸上戦艦と陸上空母は構築済みだ。
そんな事より、『テュポン』との激戦で途中退避したミーシャが、対戦翌日に陸上空母の医療用カプセルから出た後も、気分が悪いと自分に申告して来たので、魔導列車で帝都コリントに戻らせて、『国営帝国総合病院』に入院して貰った。
今まで、例の『ナノム玉2』の服用のお陰か、怪我以外の病気に掛から無くなったと、喜んでいただけに何の病気だろうと気になった。
何でも漏れ聞く処によると、剣王シュバルツ殿の奥さんで有るターニャさん、ミツルギ殿の奥さんで有る剣王オウカ殿、親友のハリーの奥さんで有るハーマイオニーさんも『国営帝国総合病院』に入院されたそうだ。
幸い全員入院したのは1日だけで、翌日には退院して特に不調だという続報は無い。
ただ極めつけは皇妃クレリア様が同じく『国営帝国総合病院』に入院した、という情報が帝国上層部だけに齎されていて、帝国上層部はその情報を聞いた当初激震したのだが、直ぐに退院したようなので皆胸を撫で下ろした。
恐らくは、今までの激務の疲れが偶々一斉に出たのだろうと、魔導列車に乗って合流した親友のハリーと、男同士で陸上空母の艦橋に備え付けの魔道具で有る、珈琲メーカーで作られた熱い珈琲を飲みながら語り合った。