人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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10. 8月の日記①

 8月4日

 

 タラス村と同じ対応を各町村に行っていたが、セシリオ王国軍の一部隊がゴタニアを目指して行軍中との連絡が「黒」から入る。

 約3千人程の部隊でゴタニア守備軍300人では対抗も出来ないと推測された。

 よって我々「紅」は全軍を以ってゴタニアへ救援に赴く事になった。

 魔石を使用して通常有り得ない強行軍を可能にしてセシリオ王国軍よりも2時間早くゴタニアに全軍(空軍を除く)入る事が出来た。

 ゴタニア守備軍にアラン様は護国卿の権限を以って指揮権を預かり自分の指示に従う様に命じられた。

 2時間後現れたセシリオ王国軍は到着早々ゴタニアに対して大声で降伏勧告がなされた。

 それに対して城壁上に居たアラン様が、

 

 「笑止、貴様達愚かな侵略者に降る者は此処ゴタニアには居らぬ!

  つべこべ言わずに力を以って攻撃してみよ、存分にこのアラン護国卿と我が軍「紅」が相手をしてやる!」

 

 と、大音声をセシリオ王国軍に向かって浴びせられた。

 援軍が居る事にセシリオ王国軍は戸惑った様だが南門に布陣すると北、東、西の各門に各500人ずつを配置して攻城戦の体制に入った。

 これも想定内の行動なので予め「支援軍」はゴタニア守備軍と共に城壁上に陣取り、「近衛軍」は北、東、西の各門の内側に100人ずつ待機させた。

 セシリオ王国軍は攻城兵器こそ持っていなかったが「氷雪魔術師団」の一部隊が含まれていて得意の軍団魔法「ブリザード」が城壁上のゴタニア守備軍目掛け早速叩きつけるが「支援軍」が「ファイアーウオール」で炎の壁を作り対抗するとセシリオ王国軍は弓と各種攻撃魔法を浴びせてくるが「ファイアーウオール」に阻まれ効果を発揮しない。

 セシリオ王国軍に疲れが見えて来た段階で、城壁上に居たクレリア様が合図の「ファイアーボール」を空高くで爆発させる。

 それを契機に北、東、西の各門から「近衛軍」100人ずつが打って出た。

 セシリオ王国軍はそれに対して弓と各種攻撃魔法を浴びせてくるが、当たる前に「近衛軍」の軍団魔法「イフリート」が各隊一斉に展開される。

 

 軍団魔法「イフリート」・・・「近衛軍」の軍団魔法の一つで鋒矢の陣の形で敵に突っ込む際に「ファイアーストーム」の膜が部隊を覆い尽くし敵の攻撃を燃やし尽くしながら吶喊する「攻性防壁魔法」で有る。

 

 それぞれの巨大な炎の塊が各門に配置された軍を木っ端微塵に蹴散らし、返す刀で南門の主力に突っ込み縦横無尽に敵陣を切り裂いた。

 撤退するセシリオ王国軍は千人に届かず大多数の怪我で動けない者が捕虜になった。

 武装解除した捕虜をゴタニア守備軍に預け王都からの沙汰に従う様にアラン様が命じると、キビキビとした反応で対処していた、きっとあまりにも凄まじい「紅」の強さに感銘を受けたのだろう。

 我々「紅」が街に戻ると民衆が歓呼の嵐で迎えてくれた。

 その中からカトルの親で大商人のタルスさん達が進み出て御礼を申し上げて来た。

 シャイニングスターの面々も進み出て無事を喜び合い、当面の危機は除いたがまだ戦争中で有り警戒を厳にして欲しいと述べられ、戦争が終わったら是非コリント領に遊びに来て欲しいと仰られた。

 大商人のタルスさん始め民衆は、必ず行きますと笑いながら返答された。

 此の街の領主は王都にいて留守で、代わりの代官に後事を託し我々は暫くの休憩の後、戦場たるファーン辺境伯の城邑目指して行軍を再開させた。

 

 8月16日

 

 諸々の小部隊(といっても我が軍より多い)を蹴散らしながらファーン辺境伯領に到着した。

 そのまま小高い丘の上に布陣しファーン辺境伯の城邑と包囲しているセシリオ王国軍を望めるベルタ王国の迎撃軍駐屯地に入った。

 アラン様とシャロン殿、セリーナ殿が陣幕の作戦会議に呼ばれしばらくしてから我々の駐屯する場所に戻られて作戦会議の内容と、明日からの行動指針を我々に開示された。

 先にこの迎撃軍に潜り込ませていた「黒」の報告を受け討論をしている処に、アラン様達と作戦会議に出席されていたブリテン伯爵とフランシス子爵が陣地に来られアラン様に相談事があると会談を求めて来た、アラン様が迎え入れて用向きを尋ねられると、両者はこれ迄の司令部への鬱憤をこぼし始めた。

 どうやら迎撃軍司令官のロドン将軍は積極的にセシリオ王国軍と戦う意思が無いらしく、この2週間の間1歩も陣地から出ず、やたらと王都の宰相との書簡のやり取りをしていたらしい。

 度々開かれた作戦会議も積極的にロドン将軍は発言せず、結論を得ぬまま時間切れで終わっていたようだ。

 業を煮やしていた処に、幸い各地を目覚ましい活躍をしながら合流されたアラン護国卿に自分達に同心してもらい、是非とも侵略者に対しての攻撃の許可を我等と共に上申して欲しいと同心を願い出られた。

 アラン様は両者の申し出に快く応じられたがそのタイミングに伝令が来て、迎撃軍司令官のロドン将軍から明日又作戦会議を開くので参加する様にとの事だ。

 アラン様は両者に明日の作戦会議が終わったら再度陣地に来て頂き、その際攻撃作戦を練りましょうと告げられた。

 

 8月17日

 

 朝から作戦会議が開かれたが、アラン様達主戦派と宰相派閥の傍観派の意見が対立し

 「戦いたいならお前達だけで戦え!」

 とロドン将軍が言われたのでアラン様達主戦派は言質は取れたとばかりに喜び、作戦会議が終了したと同時にアラン様達主戦派は我々「紅」の陣地に集まってアラン様主導の元作戦が練られた。

 ブリテン伯爵とフランシス子爵は作戦内容に驚かれていたが、両者は王城でのアラン様がドラゴンを追い返した(演技だったのだが)場面を見られていたので作戦内容に同意して明日の戦闘に備える為に自分の陣地に帰られた。

 


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