人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
これからの本編は恐らくかなり長くなりますが、お付き合いお願いします。
西方教会圏全ての国の漫遊と帝国への併合。
そして全ての体制を整えての、対スラブ連邦最終決戦直前まで書く事になるからです。
どうぞお楽しみに。
5月1日
今現在我ら帝国軍は、かの海洋大国デグリート王国に滞在している。
自分とアラン様は、4月後半に急遽グローリア度のとガイに乗り、マッハ1の音速巡航速度で帝都コリントに戻り、クレリア皇妃様とミーシャの妊娠騒動を3日という短さで乗り切り、シュバルツ殿とミツルギ殿そしてカトウを連れて陸上戦艦ビスマルクを旗艦とした、帝国艦隊にとんぼ返りして来たのだ。
「しかし、壮観な景色だなこの『ドライ』の艦橋は!」
と気楽な感じで感想を述べてるのは、ミツルギ殿でその横にはシュバルツ殿が興味深そうに、海洋大国デグリート王国の誇る海に浮かぶ2大艦隊の戦闘艦を眺めている。
そもそもこの2人が、ミーシャの妊娠を教えてくれなければ、自分はこの長い出張期間中に、自分の奥さんの妊娠を知らずに居たかも知れないので、感謝しているのだが、自分の艦長室でまるでお客さんの様に寛いでいる姿は、色々な報告書や今後の計画書を業務として行っている身の上としては、どうしても親衛隊長の仕事をせずに遊んでいる様に見える。
「・・・ところでお二人は、アラン様の警護はしなくて良いんですか?」
と聞いたら、
「いや其れが、某とミツルギ殿が警備したいと願い出たら、カトウが是非自分だけで警護してみて、『絶影』の能力でデグリート王国の首脳陣の本音を探りたいと、申し出て来てな。
アラン陛下からも、次の訪問地である『ザイリンク帝国』で年1回行われる『西方武術魔術競技大会』へ出場するのだから、訓練したらどうか?と言われてな」
とシュバルツ殿が返答したので、
「なら、アラン様の言われる通り訓練したらどうだ」
と言ってやったら、
「ケニー殿の言われる通り訓練して居たんだよ、デグリート王国が貸してくれた練兵場で。
すると、デグリート王国の兵士達が見学に来てな、感心してくれるのは別に良いんだが、是非一手指南して欲しいと言ってくる輩がやたらと多くて、俺自身の訓練が何も出来なくて困るんだよ」
とミツルギ殿が心底参ったといった様子で、慨嘆している。
まあそうだろうなと、見なくてもその様子がありありと想像出来た。
剣王と元拳王の訓練など、金を払ってでも見たがる人間は多いだろうし、然も二人共が己の師匠にこれ迄の研鑽を見せる為に、専用の武器・武具で有る『右月・左月』と『轟雷』での新技の練り込みをしているから、少しでも武術に興味がある者にとっては、垂涎の状況だろう。
「だから、ケニー殿に人気が無くなった夜にでも、『ドライ』の飛行甲板上で練習させて貰いたいと、願いに来たという訳さ」
とミツルギ殿が、備え付けの珈琲メーカーから作った『カフェオレ』に、たっぷりと角砂糖を3個も入れて(この男、厳つい顔をしてる癖に重度の甘党なのだ)美味そうに飲んで、言ってきた。
「其れは構わないが、飛行甲板を壊さないでくれよ!」
と二人に釘を差したら、「了解!」と戯けたような感じで返事したので、3人で笑いながらそれぞれの好みの珈琲を飲んで艦長室から見える、デグリート王国の港湾施設でも最大の造船所を眺めた。
今其処では、アラン様と帝国の技術者が、デグリート王国の上層部とデグリート王国の誇る造船技術者に、新機軸の輸送艦と、貿易に使用する動力運搬船の設計図を渡し、説明した上で50隻に及ぶ発注の商談を行っている最中だ。
こういった商談やインフラ整備を、西方教会圏全ての国で行う為に、陸上戦艦ビスマルクの大金庫には、凄まじい量のギニーが保管されている。
もう既に、帝国に於いてはギニーよりもポイントが決済の主流になっていて、自分もギニーは外国に出ている今の状況の様な時以外は全然使わない。
財務省のレオン大臣に以前聞かされたが、元のベルタ王国・スターヴェーク王国・セシリオ王国のギニーアルケミン3機は(この内、元ベルタ王国のギニーアルケミンは我等空軍の初任務で奪ったんだよなあ)、最大稼働させて鉱石からギニーを作り続けてるが、作ったギニーは一切帝国内で流通させず、こういった諸外国との商談や決済の場合に使用するだけらしい。
何でも、以前の3国での市場規模と現在の帝国の市場規模では、比べるのも愚かしい程の千倍という数字になっていてこれをギニーで回すのは完全に無理であり、今後市場規模が西方教会圏全ての国で大きくなる事を想定すると遠く無い未来に、全ての国がギニーからポイントに基軸通貨が代わるだろうと説明してくれた。
そして基軸通貨が代わった段階で、帝国の大陸制覇は完了すると教えて貰った。
自分の様な武人でしか無い者には理解し難いが、経済や市場原理の法則から考えると数年後には、その体制になるのは自明の理であり、諸外国の目端が利く者は其れを理解して、一刻も早く帝国の傘下に加わって帝国の中で栄達を図るべく、売り込んで来る人材がいるそうだ。
そういった、この段階で判っている人物は充分優秀なので、『ナノム玉』と動画での基礎を学ばせた後は、英才教育を受けさせて、上級官僚として養成しているそうだ。
実は、戦争で勝負を着ける方法は、既に時代遅れなのかも知れないなと、些か軍人としては複雑な心境になったものだ。