人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月10日
海洋大国デグリート王国を出立して、幾つかの小国を通り過ぎたが、此れ等の小国は『ザイリンク帝国』の従属国なので、『ザイリンク帝国』の首都である、帝都ザイリンクで開かれる『西方武術魔術競技大会』の開催パーティーにて、全員と面談する事になっている。
なので、検問等の煩わしい手続きも無く一路『ザイリンク帝国』の首都帝都ザイリンクへ向かう。
その間、新しく仲間になった『トカレフ』達5人の若者達は、荷物の搬入搬出作業・炊事係・トイレ掃除等の水回り管理・等の下働きをアラン様から命じられ、船員の生活実態を下働きする事によっていざ造船を考慮する時に、其れ等を活かせる様に考えながら仕事をしてみろ、と訓示されて良くその訓示を理解して『トカレフ』達5人の若者達は、真剣に仕事を熟していった。
5月12日
今迄の従属国でのツケを払わせるかの如く、凄まじい額の入国税を課され(そもそも招聘した国賓に対し入国税を取る事が異常だが)『ザイリンク帝国』に入国した。
『ザイリンク帝国』の指示に従い帝都ザイリンクから100キロメートル離れた、旧都ペインの荒廃した王宮跡地に陸上戦艦と陸上空母を停泊させ、『ザイリンク帝国』から差し向けられた馬車に分乗し、我等帝国の上層部は帝都ザイリンクに向かった。
しかし、かなり遠い距離に留め置かされたものだ、まさか馬車で一両日掛かる距離に離されるとは、デグリート王国では王都にそのまま入る事が出来たのにえらい違いだ。
全然舗装されていない幹線道路は、乗せられた馬車が時々飛び跳ねる様に揺れるので、尻が痛くなる程だ。
漸く帝都ザイリンクまで40キロメートルの、今夜逗留する中継都市に入れたがどうやら『ザイリンク帝国』側は、我々の為に便宜を図るつもりは無い様で、宿泊施設は用意されていなかった。
どう考えても外交非礼に中ると思うので、我々は強く憤慨したが、アラン様は苦笑するだけで特に不満を漏らさなかった。
仕方ないので、小さい一般の民宿等に分散宿泊して、今夜は過ごした。
5月13日(前編)
帝都ザイリンクに到着し、かなり綿密な検閲が行われた。
アラン様にまで身体検査をすると検閲官が言い出したので、「国の代表へ対するこれがザイリンクの態度か!」と我々が怒りを表すと、検閲官は額に大粒の汗をかきながら、
「本当に申し訳有りません。
全て『ザイリンク皇帝ゴラム陛下』直々の勅命に従っての行動なのです・・・・」
と最後には消え入りそうな声で訴えて来たので、我々も気勢を削がれて検閲官を気の毒に思った。
アラン様も検閲官を気の毒に思った様で、そのまま身体検査させてやり、問題無しとなって指定された宿舎に向かった。
宿舎は其れなりに高級ではあったが、特別に立派というわけではなく、何故か他国の王族の宿泊している区画からは、かなり離れた場所に有り、宿舎前には検問所まで設けられている。
アラン様は、
「・・・・・随分と警戒されたものだな・・・・」
と此処まであからさまな『ザイリンク帝国』の我々への、警戒行動に些か辟易している感想を述べられた。
我々も、この『ザイリンク帝国』の警戒ぶりに、当初の憤慨は無くなり、逆にこの裏に何が有るのか?と慎重に対応しようと感じた。
夕食も持参した物で済ませ、上層部全員で宿舎の大きな食堂に集まり、宿舎の従業員には一旦離れた一室に居てもらい、会議を行う事にした。
「もう姿を現して良いぞ!」
とアラン様が言われると、中央情報局局長のエルヴィン局長の懐刀と言われるフランツ副官と、3人の中央情報局局員が姿を現した。
昨日からアラン様の周囲は彼等4人が秘密裏に警護し、いざとなれば彼等が命を賭けてアラン様の身代わりになるべく行動する事になっていた。
「で、情報は掴めたか?」
とフランツ副官にアラン様が問うと、
「ハッ、予め潜らせて置いた草から、かなりの情報を受け取りました。
やはり、『ザイリンク皇帝ゴラム陛下』は在位10年に当たる式典を『西方武術魔術競技大会』の後に行う際に、何かを画策している様です。
我等『人類銀河帝国』の情報は、一切ザイリンク帝国民と従属国民には明かされて居らず、此方から提供されたモニター等の情報入手出来る魔道具は、ザイリンク帝国のみならず従属国に提供された物も全て没収されていて、他国から来訪した商人や旅人は、自国民との接触を許さず取引等を終えたらザイリンク帝国から追い出しています。
此の様な状況をいつまでも続けられる訳も無いので、恐らく何らかの状況変化を今回の式典で発表すると想定されます!」
とフランツ副官は、ザイリンク帝国の現状と己の推測を報告した。
成程、我等帝国の隔離とも呼べる現状と、他国との接触を許さないザイリンク帝国の態度は何らかの理由が有るという訳か。
「フムッ、何となく予想は出来るが、しかし何とも短絡的で行き当たりばったりな気がするな。
その辺の経緯はご存知ですか?『モーガン』殿!」
とアラン様が言われたので、我等は此の場に居ない筈の人物を探し、キョロキョロと周りを見渡す。
「・・・・・流石はアラン陛下、お見事だわ!
インビジブル(不可視)魔法と、気配撹乱アーティファクトを併用してるのに、アッサリと私を認識するとは!」
とテーブルのアラン様の対面に空いていた席に、座った状態の『モーガン』殿が姿を現した。
我々が驚いているのに構わず、『モーガン』殿は、
「アラン陛下とフランツ副官が懸念している通り、私と『剣聖ヒエン』、『拳聖ダンテ』も例年は断っていた『西方武術魔術競技大会』へのオブザーバー参加を決めたのは、諸々の理由が有るわ。
それとコロシアムに機材設置に向かったハリー君達は、私の飛空船に保護しているから、安心してね!」
と言われたので、アラン様は、
「其れは忝なかった、感謝します。
処で、諸々の理由とは?」
感謝とともに質問された。
「・・・そうね、だけど理由の説明は結構長くなるから、覚悟してね!」
と言われ、それにアラン様は頷かれ我等も了承したが、まさかあんなに長くなるとは、想像を越えていた。