人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月13日(後編)
「そもそもが、今のザイリンク帝国に於いて至尊の地位に居る男は、皇帝家の血筋では無いのよ!」
といきなりとんでもない事実を『モーガン』殿は、我々にぶちまけた。
「彼ゴラムは、前皇帝の弟にあたる大公が何処からか見つけてきた浮浪児で、大公が亡くなった自分の息子の代わりに何らかの理由で育てていて、今から11年前にその大公夫妻が馬車の橋からの転落事故で亡くなると、大公家の後継者となったの。
そして今から10年前に、前皇帝が突然死するとその葬儀の席で、半ば無理矢理な宮廷クーデターを起こし、『ザイリンク皇帝ゴラム陛下』に成りおおせたという訳よ。
その宮廷クーデターを起こした際に、葬儀の席に居合わせた王族と己に従わなかった貴族そして廷臣は、尽く殺されてしまい、現在宮廷に居る貴族達はゴラムに人質を取られたり進んで忠誠を誓った者達よ。
それに続いて彼ゴラムは、ザイリンク帝国の巨大な軍事力で脅して、従属国からも人質を差し出させて無理矢理な忠誠を誓わせているわ、更に毎年前皇帝が課していた税金の3倍にあたる額をザイリンク帝国に奉納させているの」
と此処で息をつくように『モーガン』殿は一旦話を止め、紅茶を口に含んで喉を潤した。
この段階で既に、ゴラムという男に自分を含め帝国上層部は嫌悪感を抱いたが、『モーガン』殿は更に話しを進めた。
「・・・つまり彼ゴラムは、何ら正当性の無い皇帝の座に力づくで居座り、従属国に対してはザイリンク帝国の持つ巨大な軍事力で脅して、朝貢させているのよ。
この行動にザイリンク帝国民と従属国の国民は、面従腹背で通しているわ。
その事を彼ゴラムは、把握していてより一層頑なに権力を保持しようと、自分の権威を脅かす存在に牙を向け続けているの。
今まで西方教会圏に於いて、国力が最大と云って良いザイリンク帝国は、西方教会圏の盟主と云うべき立場に居て、私の国の『魔法大国マージナル』とルミナス教本拠である『パルテノン市国』は隣国という事もあって、仲の良い交流を続けて居たのだけど、ゴラムがザイリンク帝国皇帝に就任してからは、上辺だけの付き合いの留めていたんだけど、皇帝在位10年という事で軍事力をチラつかせながら来訪する様に求めて来て、『魔法大国マージナル』からは仕方なく私が代表して出席する事になり、『パルテノン市国』からは『ヨハネ教皇』の代わりに『ペトロ枢機卿』が出席するわ。
だけどこれ迄まともな外交をした事も無いゴラムが、どんな行動に出るか判らないから、丁度『魔法大国マージナル』に滞在していた、元私のパーティーメンバーの『剣聖ヒエン』と『拳聖ダンテ』に護衛を依頼したの」
つまり皇帝ゴラムは、己の権威を見せつける為に、『魔法大国マージナル』とルミナス教本拠である『パルテノン市国』そして『人類銀河帝国』の我等を呼び寄せた訳か。
しかし、こんな横紙破りな行動を取り続けていて、権力を維持出来るものなのだろうか?
その点を、『モーガン』殿に質問すると、
「ご存知の通り、ザイリンク帝国は西方教会圏に於いて随一の魔道具とアーティファクトの輸出国だったから、豊富な財源を誇っていて己の手足となる軍隊には、豊富な資金で購入した大量のイリリカ王国製の魔法剣を配布して己への忠誠を繋ぎ止めているし、頭脳としてはアラム聖国から来たギロンと云う宮廷魔術師が居て、この男が皇帝ゴラムの相談役となってあらゆる策謀と施策を練っているみたいよ」
と答えてくれた。
アラム聖国だって?!
随分とまた久し振りに聞く名前だが、今我等帝国とは休戦状態なので、積極的な帝国への敵対行為とは考え難いが、油断は禁物だ。
我々が抱いた懸念を察して『モーガン』殿は、
「貴方達が心配しているのは判るけど、話しはもっと前からで更に深い話しなのよ。
そうね帝国として成立する前の貴方達には、密接な関係があるから無関係では無いわ。
そもそも事は15年前に遡って、スターヴェーク王国に度々アラム聖国が領土侵攻を繰り返してた時期に、多数の工作員がスターヴェーク王国と西方教会圏に派遣された事から始まるわ。
スターヴェーク王国に潜り込んだ工作員達は、スターヴェーク王国に併合されていた旧アロイス王国の貴族達を扇動して、スターヴェーク王国を一旦滅ぼす事に成功したけど、貴方達の手により逆にアロイス王国は完全に滅びてしまったわ。
それとは別に西方教会圏に派遣された工作員達は、ルミナス教本拠である『パルテノン市国』に眠る門外不出の様々なアーティファクトを盗む事が目的だったの。
だけど『パルテノン市国』には、普通には入国出来ないし、アーティファクトが保管されているパルテノン神殿は警備が厳重だわ。
だから彼等工作員達は遠大な計画を立てて、ルミナス教本拠である『パルテノン市国』にそれなりに意見を通せるザイリンク帝国を利用する事にしたの。
其処で彼等が目をつけたのが、大公家に居たゴラムだったという訳よ。
恐らく彼等工作員達とゴラムは何らかの約束をして、ゴラムを皇帝位に就ける様に協力し、ゴラムは工作員達が『パルテノン市国』に容易に入国出来る様に図ったわ。
後の事は、アラン陛下もご存知の通り、彼等工作員達は門外不出の様々なアーティファクト、例の『テンプテーション』、『ゾンビマスター』等をアラム聖国に持ち帰ったんだけど。
その内の一人のギロンだけは、ザイリンク帝国の宮廷魔術師としてゴラムの側近くに残っているの」
と説明してくれた。
アラム聖国はありとあらゆる策動を、西方教会圏に対して行っていて、どうやら我等はまたアラム聖国の野望と戦わねばならないらしい。