人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

135 / 352
5月の日記⑤(人類銀河帝国 コリント朝元年)《コロシアムの罠》

 5月14日(前編)

 

 昨日は『モーガン』殿の『ザイリンク帝国』の現状の説明と、それに対しての対応策そしてアラン様の提案を受けて、『モーガン』殿は昨夜の内に飛空船に乗り『魔法大国マージナル』に戻られて行った。

 そして午前5時に早朝にも関わらず、ザイリンク帝国皇帝令として特使が我等の宿舎に来訪し、朝の内に面会したいので朝食を共にするべく、朝食を摂らずに”コロシアム”まで来て欲しいと通達して来た。

 とても、一国の元首に対しての対応では無いし、突っ込み所が満載過ぎて何処から怒れば良いのか混乱して居たが、アラン様が、

 

 「・・・どうやら、早々に決着を着けたいようだ。

 皆も判っているだろうが、既にして此処は事実上の敵地だ!

 事前に想定した幾つかのパターンに則り、対応する様に!」

 

 と改めて命令されたので、

 

 「「「ハッ!了解であります!!」」」

 

 と何時もの返事をして、全員が気合を入れ直した。

 そして宿舎から出ると、宿舎の周りは十重二十重に兵士が取り囲んで居た。

 恐らく兵士達には、事情を明かさないままの命令なのだろう、どの兵士も困惑した様な顔をしている。

 思わず、この兵士達も朝早くからご苦労な事だと、同情してしまった。

 すると道路脇から見すぼらしい馬車がやって来て、近くに居た隊長と覚しき兵士がアラン様に馬車への乗車を求めて来た。

 だが、今にも壊れそうな馬車を気の毒に感じたのか、アラン様は苦笑しながら、

 

 「どうやら都合の良い馬車は用意出来なかった様だ、”コロシアム”までは2キロメートル程しか距離も無いし、帝都ザイリンクの都市見学もしていない事だし、皆で歩いて行こうではないか!」

 

 と我々に振り返りながら仰ったので、我々も「ハッ!」と短く返答した。

 すると、隊長と覚しき兵士が慌てて、

 

 「皇帝陛下からは、是非にもその馬車で”コロシアム”に来て頂くようにと厳命されております。

 どうか馬車にお乗り下さい!」

 

 と言って来たが、

 

 「だが、其の方も見たら判る様に、今にもこの馬車は壊れそうでは無いか。

 ゴラム陛下が折角用意して頂いた馬車を、我等が乗車する事で壊してしまう訳にはいかぬ。

 其の方の役目も判るが、我等の思いを汲み取ってご寛恕頂きたい!」

 

 とアラン様は返答し、我等帝国上層部を率いてサッサと、”コロシアム”に向かう幹線道路を進んで行く。

 尚も言いすがってきた兵士に、アラン様では無くセリーナ准将が、

 

 「クドい!」

 

 と一喝して黙らせた。

 幹線道路は両側に兵士が配置され、”コロシアム”までその状態が続いている様だ。

 

 「・・・此れはザイリンク帝国国民にとっては、朝も早くから日々の暮らしに支障が生じそうだな、致し方無いから、帝都ザイリンクの都市見学は後日にしよう」

 

 とアラン様は、のんびりとした口調で我等に提案し、我等も、

 

 「そうですね、決着が着いたらゆっくりと見学しましょう!」

 

 と笑いながら返答した。

 そんな気楽そうな我等を、幹線道路両側を固める兵士達は、薄気味悪そうな態度で見送っていく。

 《哀れなものだ》と自分は思った。

 もしこの兵士達が他の国と同様に、モニターで繰り返し放送される、我等帝国軍の今までの戦闘の歴史を少しでも見ていれば、如何に危険極まりない存在が目の前にいるか判っただろう。

 幹線道路両側には片側2千人ずつ兵士が配置していて、計4千人の兵士が警戒している事になるが、

 アラン様、セリーナ・シャロン両准将、シュバルツ・ミツルギ両親衛隊長、そして自分と書記官2人の計8人(実は透明化しているカトウとフランツ副官が、人知れず近くに居るので本当は10人)にとっては、いないも同然だ。

 まあ此れが倍の8千人居た処で、我等の内1人にもかすり傷一つ付ける事は出来ないから、兵士など幾らいようが無駄だから、どうでも良い事だが。

 そうこうしている内に”コロシアム”に到着すると、そのまま案内されてコロシアムの中央にワザワザ設けられたらしい、朝食用の大きなテーブルと座席へと誘われた。

 座席に着席して、暫くの間用意された飲み物(紅茶とハーブ・ティー)を飲んでいた。

 やがて、選手入場門と思われるゲートが開き、豪壮な御位(4隅に取っ手の有る台座)に乗った金ピカな鎧を纏った皇帝と思われる人物を4人の屈強そうな男が御位を担いで入場して来て、その後に宮廷魔術師と思われる扮装の男1人と兵士50人程が続いた。

 特にアラン様に挨拶もせずに御位に担がれていた金ピカ鎧が、奇妙にギクシャクとした動きでテーブルの上座に有る座席に座った。

 そしてその金ピカ鎧の後ろに宮廷魔術師風な男が立ち、50人の兵士達は我等の座席の後方に立った。

 

 「・・・・・余が、神聖不可侵にして西方教会圏の支配者で有る、『ザイリンク帝国皇帝ゴラム一世』で有る・・・・・!」

 

 と酷く聞き取り難い、嗄れた声で皇帝と思われる金ピカ鎧が発言した。

 

 「・・・私は、『人類銀河帝国皇帝アラン・コリント一世』と申します。

 お見知り置き下さい」

 

 とアラン様は席に着いたまま、昂然と胸を張ったまま述べた。

 その様子に、宮廷魔術師風な男が眉を寄せて発言した。

 

 「無礼では無いかな?アラン殿。

 『ザイリンク帝国皇帝ゴラム一世』陛下に向かって、席も立たず頭も下げないと云うのは!」

 

 と妄言を吐いてきたが、アラン様は宮廷魔術師風な男を見向きもせずに、目の前の紅茶を飲まれて寛いで居られる。

 その態度に、宮廷魔術師風な男は激昂し、

 

 「その態度は何だ!無礼であろう!!」

 

 と怒鳴ってきたので、初めてアラン様は宮廷魔術師風な男に視線を移し、

 

 「・・・おや、私に対しての発言だったのかな?」

 

 とアラン様は、トボけた感じで仰られ、その態度に更にエキサイトした宮廷魔術師風な男は、

 

 「当たり前だろう、トボけるな!」

 

 と言い返したので、アラン様は、

 

 「いや、此の場はコロシアムの中央にあるから、天井が吹き抜けで風の音かと勘違いした」

 

 とヌケヌケと言われたので、宮廷魔術師風な男は顔を真っ赤にして、今にも顔から火を吹きそうだ。

 そんな宮廷魔術師風な男は顔を手で制して、金ピカ鎧が聞き取り難い声で、

 

 「ところで、アラン殿はせっかく余が用意した馬車に乗ってくれなかったらしいな、なぜかな?」

 

 と聞いてきたので、アラン様は、

 

 「なに、そちらで用意された馬車の馬が疲れている様なので、我等も朝の散歩に丁度良いと、このコロシアムまで歩いて来た次第」

 

 と人を食った様な返事をされると、

 

 「それは国賓に対して大変失礼した、やはりそれは担当者に罰を与えねばな!

 連れて来い!」

 

 と兵士に命じ、命じられた兵士が指示すると先程の入場門から、磔にされた男が拷問吏と磔台ごと運ばれて来た。

 よく見ると、しきりと我々に馬車に乗る様に勧めていた、隊長ではないか。

 然も鞭で打たれたのか、裸の上半身には鞭打ちされた跡のミミズ腫れが無数に有る。

 

 「この者には、どんな事があろうとアラン殿達を馬車に乗せる用に命じていたのだが、役目を果たす事が出来なかった。

 余の命令を遂行出来なかった罪は万死に値する、拷問吏よ処刑せよ!」

 

 と命じた。

 その命に従い拷問吏は、磔にされた隊長の脇目掛け槍を突こうと身構える、隊長は叫ぼうとするが喉を潰されているらしく、ヒューヒューという音が口から出るだけだ!

 いよいよ拷問吏が槍を突きだそうとした瞬間、

 

 「グアッ!」

 

 と拷問吏が呻き、槍を地面に落として蹲る。

 その腕には、深々と木で出来たフォークが突き刺さっている!

 見ると、目の前に有るサラダボウルに入れてあった、木製のフォークが無くなっている。

 

 「おや、手が滑った様だお許しあれ」

 

 と戯けた様子でアラン様は言われた。

 

 「何をする、無礼ではないか!」

 

 と宮廷魔術師風な男が、アラン様を非難して来たが、アラン様は馬耳東風といった様子で聞き流す。

 すると金ピカ鎧が、ワナワナと震え出したかと思うと、

 

 「・・・・・おいっ、ギロンよ、充分に時は稼げたから、もう茶番はいいだろう!

 俺はもうこれ以上コイツの近くで耐える事は無理だ!

 コイツ(アラン様を指差し)は、あの大公の息子だった『アサイラム』を思い出させるんだ!

 あの偽善者は、貴族でありながらスラム街に度々やって来ては、炊き出しを行い。

 浮浪児だった俺を憐れむ様な眼で見て、常に蔑んでいたんだよ。

 絶対に許すものか!この世にいる恵まれた奴らは全て俺の敵だ!

 必ず俺の目の前に跪かせてやる!」

 

 と怨念じみた独白を行い、ギロン(宮廷魔術師風な男)と呼ばれた男は、

 

 「そうですね、座席に仕込んだ物と飲み物に入れて置いた、遅効性の麻痺毒は充分に効いた筈です。

 処で、アランと男共は例の奇妙な船の操作法を聞きだしたら殺すとして、この女二人はどうします?」

 

 と舌舐めずりして、金ピカ鎧に聞いた。

 

 「当然俺が頂く!

 俺が飽きたら、お前に下げ渡すからその後は、好きにすれば良い」

 

 とピクリとも動かないセリーナ・シャロン両准将を見ながら、とんでもない台詞を吐き我等の後ろに立っていた兵士達に、我等を拘束する様に命じた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。