人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月14日(中編)
「しかし、思ったより呆気なく済んだな。
残りの3個の罠を使う必要が無かった、警戒しすぎたか?」
と金ピカ鎧が呟き、ギロンが、
「まあまあ、ゴラム陛下。
今後他国を例の船で蹂躙して行く際に、今回使用しなかった罠は使えますので、無駄では無いですよ」
と返事し、自分に近づいて来た。
「・・・・・もう芝居しなくて良いぞ!」
とアラン様が、仰られたので両肩を掴んでいた兵士を両手でギロン目掛け投げ飛ばした。
慌ててギロンは避けようとしたが、避けきれずにぶつかり無様にひっくり返った。
「な、何だと!」
とギロン倒れたままは、心底驚いた様子で狼狽えている。
「・・・どうやらアラム聖国とは繋がりの切れた、はぐれ工作員という情報は正しかった様だな」
とアラン様は呟かれ、何事も無かった様にスクッと立ち上がった。
「なにっ!毒が効いていないのか?!」
金ピカ鎧が狼狽えた様に叫ぶが、我等にはアラン様を抑えようと近づいた兵士の急所に、アラン様の寸勁が叩き込まれたのは見えており、今まで抑え込まれている様に見せて居たのは、アラン様が兵士を支えて居たからに過ぎない。
しかし、此奴等は真正の馬鹿だな、普通罠に掛ける相手の情報は、事前に入念な迄にチェックして計画に穴の無いように完璧を目指すものだ、だが此奴等は巷に溢れる程出回っている、我等の強さの情報を少しも入手していない様だ、その情報にはまことしやかに、帝国軍には毒が効かない(実際その通りなのだが)というものもあるというのに。
此処まで馬鹿だと或る意味感心してしまいそうだ、こんな体たらくでよくザイリンク帝国という大国を掌握出来たものだ、いや、もしかすると当初の宮廷クーデターは、優秀なアラム聖国の工作員が手を貸していたからこそ出来た事で、目的を達成した彼等工作員はサッサと撤退している事を考えると、この愚かな二人はアラム聖国にとって策謀が終わり価値が無くなったザイリンク帝国と云う残骸を、火事場泥棒よろしく掻っ払っただけの、盗人に過ぎないのだろう。
我等が全員似たりよったりの感想を持って立ち上がり、二人を見下ろしているのにどうやら気付いたらしく、全身から怒気を発して金ピカ鎧が叫んだ。
「貴様らー!
この俺を、蔑んだ眼で見下すんじゃねえ!
あああああああああ、憎い!憎い!憎過ぎて気が狂いそうだあああああああああ!
殺す!絶対に殺してやるぞ!!俺を見下した奴はどんな事があろうと惨たらしく殺してやる!!!
殺した後は、肉を細切れにして豚に喰わせ、骨や他の部分は肥溜めに沈めてやるぞおおおおおお!」
と凄まじい怨念めいた呪詛を、我等に叩きつける様に金ピカ鎧が吠えている。
よくもまあ僻みや嫉みだけで、此処まで人を恨めるのかと呆れていると、
「ギロン!
”コロシアム”のペナルティーシステムを最大稼働させよ、コイツらを身動きできないようにするんだ!!」
と金ピカ鎧が叫ぶと、ギロンが持っていた杖を翳しながら叫んだ!
「ペナルティーシステム起動!対象個体全員に《マナ阻害MAX!》《身体拘束MAX!》期間は私が止めるまで!」
すると、突然身体が重くなり、身体のキレも悪くなった。
「おいっ、シュバルツ何だか身体の周りの空気が、まとわり付いて動き難く無いか?」
「嗚呼、某の身体も重くなった様に感じるぞ!」
とミツルギ・シュバルツ両親衛隊長も、身体の異変を訴えた。
「・・・・・どうやら、此れが『モーガン』殿が説明してくれたこの”コロシアム”の能力らしいな。
皆、予定通りなので、各々『循環魔法』を発動せよ!」
とアラン様が指示され、我等も「了解しました!」と返事した。
昨日の『モーガン』殿の言葉が脳裏に浮かぶ。
《恐らく、ゴラン達は貴方方を何らかの方法で”コロシアム”に誘い出す筈よ。
何故なら”コロシアム”ならば、貴方方の戦闘力の大半を奪えて無力化出来るとゴラン達は考えると思うわ。
”コロシアム”は、実はそれ自体がアーティファクトで、古代の遺物そのものなの。
魔力は使えなくなるし、身体は拘束された様になるわ。
50年前くらいに私が試した事があるんだけど、大体感覚としては体重が3倍位に重くなるし、魔法は撃ち出せなくなるわ》
『モーガン』殿の言われた通りの様で、ファイアーをイメージしても炎は出てこない、
しかし、アラン様が指示された『循環魔法』ならば体内で問題無く発動出来るようだ。
我等が其々で、身体の状態を確かめているのを見て、気を良くしたのか、
「どうだ!魔法も使えず、身体もまともに動かせまい!今から惨たらしく殺してやるぞ!
特にアラン!貴様は弟の仇だからな!じっくりと殺してやる!」
とギロンがアラン様に対して、憎悪を込めた呪詛を吐いた。
「・・・弟?・・・」
と数秒アラン様は考え込まれ、何かに気付かれた様に、
「・・・もしかしてお前の弟の名前は、『ギラン』というのか?」
と発言されたが、自分は『ギラン』と言われても、中々思い出せない。
「そうだ!弟はアラム聖国の命令の元で、工作員としてセシリオ王国のルージ王の側近となり、順調にセシリオ王国を乗っ取っていたのに、貴様の所為で弟は命をおとしたのだ!」
其処まで言われて、漸く自分も思い出した。
『ギラン』と云う男は、セシリオ王国のルージ愚王の側近となり、貴族や家臣達をアーティファクトで操り、ヒルダ嬢も操る事でフェンリルを従え、ケットシー128世の猫の王国を凍りつかせた上に、魔獣や魔物をアーティファクトで操って、ファーン侯爵領に攻め込んで来た男だ。
結局魔獣や魔物達はアーティファクトの命令を解除出来ず、ケットシー128世がアーティファクトを使用する事で戦争の道具として使うしか無かった、後味の悪い出来事だった。
常に人を罠に落とそうとする手口は弟とソックリで、兄弟共によく似ている。
「さあ、出て来い『ブラック・アーミー』よ、コイツらを殺さない程度に痛めつけろ!」
と金ピカ鎧が嗄れた大声を上げると、”コロシアム”の入場門以外のゲート3つが開いて、其処から黒い鎧を着た兵士達が姿を現した。
総勢凡そ300人といった処か、と数えていると、
「どうだ!魔法も使えず、身体もまともに動かせない状態では、これだけの数の兵士には対抗出来まい!
精々のたうち回るまで、痛めつけてやる」
と狂気に歪んだ眼で此方を見ながら、ギロンは妄言を吐いた。
まあ、此奴等の様な真正の馬鹿は、事実としての結果を叩きつけないと、到底理解出来ないのだろうなと皆思ったらしく、無言で『ブラック・アーミー』とやらが近づいて来るのを、待ってやった。