人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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5月の日記⑥(人類銀河帝国 コリント朝元年)《ゴラムとギロンの結末》

 5月14日(後編)

 

 「ようゴラム陛下!コイツらを痛めつければ良いのか?」

 

 と『ブラック・アーミー』の中で兜に羽飾りを着けた隊長と思われる男が、己の主君に対しての会話と思えない言葉使いで話している。

 

 「もう少し貴族らしい、話し方をしろ!

 出自がバレるぞ!」

 

 と金ピカ鎧が下卑た笑いをしながら、隊長と思われる男に言うと、

 

 「ヘイヘイ、判りやしたよ、ザイリンク帝国ゴラム陛下様」

 

 と返事をしている、どうやら普通の出自の兵士では無いようだな、と考えていると、

 

 「おいっ、てめえら顔が判る程度に痛めつけてやれ!」

 

 と兵士に命令した。

 兵士達も下品極まり無いニヤけた様子で、セリーナ・シャロン両准将に無造作に近付き、手を伸ばした瞬間そのまま前屈みに倒れて行く。

 

 「焦ってけつまずいてるんじゃねえよ、バカが!」

 

 と隊長と思われる男が、笑って揶揄していたが、続く兵士達も同じ様に前屈みに次々と倒れて行くので、徐々に異変に気付き焦り始めた。

 

 「・・・・・おいっ、他の男共を痛めつけろ!」

 

 と自分の周りに居た兵士に命令し、シュバルツ・ミツルギ両親衛隊長に兵士10人程が近付き、先程のセリーナ・シャロン両准将に近付いた兵士と同様に倒れて行った。

 

 「オオッ、これは良いぞ!

 良い感じで負荷が掛かって、訓練にはもって来いだ!」

 

 と喜色に溢れた感想を、ミツルギ親衛隊長は述べて、続いてシュバルツ親衛隊長が、

 

 「嗚呼、アラン様の指示通りに、『循環魔法』のトレーニングモードで身体を動かすと、負荷が二重に掛かって非常に良い訓練になる、是非帝国の訓練場に同じ機能を持つ魔道具で再現して貰いたいものだ!」

 

 と腕を回して負荷の具合を確かめている。

 

 「そうだな、だが其れはあくまでも『ナノム玉2』を服用している我等だけの話だから、書記官達は逆に『循環魔法』の強化モードで応戦する様に!」

 

 と自分は書記官2人に命じ、

 

 「了解です!」

 

 と書記官2人は、兵士達を投げ飛ばしながら応じてくれた。

 

 「・・・バッ馬鹿な!何故このように自由に動けるのだ!とてつもない拘束力でどんなに屈強な男だろうと、普通の人間になすすべ無くやられてしまうのだぞ!」

 

 と金ピカ鎧が狼狽えまくり、

 

 「・・・ええい!アランだ、アランの奴を全員で攻撃するんだ!」

 

 と命令し、残った250人程の兵士が剣を一斉に振りかぶりながら、アラン様に殺到する。

 

 アラン様は、帝都ザイリンクに入る際に我々と同様に身体検査されて、身に寸鉄も帯びていないが、ゆらりと身体を動かされて、250人程の兵士の前に歩を進めた。

 すると、人柱と云うべき現象がアラン様が進む度に人が地上高く吹き上がった!

 実際に見ていないと分かりづらいが、アラン様に突っ込んできた兵士にアラン様が手で触れると、そのまま兵士達は地上5メートルくらいに吹き上がり、そのまま受け身も取れずに地面に叩きつけられるのだ。

 

 「・・・相変わらず見事な《合気》だな!」

 

 「・・・嗚呼、流石であるな!」

 

 と自分に向かってきた兵士を倒し尽くしたシュバルツ・ミツルギ両親衛隊長が、のんびりと腕を組んでアラン様を評している。

 自分は、身体を透明化させてその様子を証拠資料として、カメラを回してムービーに収めているフランツ副官に、

 

 「カトウは?」

 

 と聞くと、

 

 「例のペナルティーシステムを掌握しに、”コロシアム”基幹部に向かってますよ!」

 

 と緊張感の全く無い返事を貰い、順調に計画通りに事が進んでいる事を確認した。

 

 「なっ、何をしている援軍に来い!」

 

 と『ブラック・アーミー』の隊長が、金切り声で叫ぶと、ゾロゾロとゲート3つから追加の『ブラック・アーミー』援軍700人程がやって来た。

 

 「もう面倒臭いから、訓練は止めましょうよ!

 手短かに倒しちゃうわよ!」

 

 「・・・そうね、こんな連中とは幾ら戦っても、大した訓練にはならないわ!」

 

 とセリーナ・シャロン両准将は呟き、そのまま文字通りに空中を駆けた!

 厳密にいうと、やって来る兵士の頭を踏み台にして、八艘飛びをひたすら繰り返し、其の都度兵士達を軍靴で踏みつけて倒して行ってる訳だが、その間一切地面に着地していないのだから流石である。

 自分の護身に徹している書記官2人以外の我等によって、15分くらいで1000人の『ブラック・アーミー』は隊長も含めて倒されてしまった。

 その光景が現実と認識出来ないのか、ポカンといった顔をしていた金ピカ鎧とギロンは、最後の『ブラック・アーミー』の隊長が、セリーナ准将に蹴られて”コロシアム”の壁面に叩きつけられて大きな轟音が鳴り響くと、漸く我に返ったようだ。

 

 「・・・こ、こんな事が・・・!」

 

 と金ピカ鎧は呻き、ギロンは我々を睨み歯ぎしりしている。

 

 「さて、打ち止めかね?」

 

 とアラン様がそんな2人に聞くと、

 

 「・・・まだだ!まだこれからだ!」

 

 とギロンは言い放ち、指に嵌めていた禍々しい指輪を光らせて呪文らしき言葉を叫ぶと、指輪から黒い靄が吹き出して来た。

 暫く様子を見ていると、3頭の禍々しい瘴気を纏った魔獣が目の前に現れた!

 

 「どうだ!これが『ザイリンク帝国』の秘宝の一つ、『降魔の指輪』だ!

 お前達の目の前に居るのは、地獄の犬『ガルム』2頭と、地獄の番犬『ケルベロス』だぞ!

 こやつら3頭なら大国の軍隊でも蹴散らす事ガ出来るのだ!精々憐れみを乞うが良い!」

 

 とギロンは叫んだ。

 フムッと自分は3頭を観察すると、地獄の犬『ガルム』は体長7メートル程で、グレイハウンドの3倍くらいの体格の真っ黒い犬だが、口からチロチロと炎が見え隠れしているから、恐らく炎を吐くのだろう。

 地獄の番犬『ケルベロス』は頭が3つ有って、体長10メートル程の犬だが、此方も口からチロチロと炎が見え隠れしているから炎を吐くのだろう。

 

 「流石に訓練は止めた方が良さそうだ。

 各自『循環魔法』を通常モードに戻せ!」

 

 とアラン様が指示されたので、『循環魔法』のトレーニングモードは解除して通常に戻る。

 

 「よくやったギロンよ!

 この地獄の魔物ならば、今後の他国征伐にも役にたとう!

 さあ、この犬共に命令を下しコイツらを食い散らかせろ!」

 

 と金ピカ鎧が喚き散らし、ギロンが、

 

 「お任せ下さい!

 さあ地獄の犬どもよ、敵を食い散らかせ!」

 

 と命令を下したが、『ガルム』と『ケルベロス』は命令して来た二人に対して振り返り、ゆっくりと近づいて行く。

 不審に思ったらしいギロンが、再度命じた。

 

 「・・・どうした?あっちにいる奴らがお前達の敵だぞ!こちらに来る必要は・・・・・無い・・・・・」

 

 と喋り終わらずに『ケルベロス』の真ん中の頭が、大きな顎を開きギロンを飲み込んだ!

 

 「グギャアアアアアーーーーー!」

 

 と悍ましい悲鳴を上げて、金ピカ鎧の胴体を上下に2つに分ける様に、『ガルム』2頭が喰らいつき、同時に首を振ると汚物の様な内蔵を撒き散らして、金ピカ鎧は『ガルム』に喰われて逝った。

 

 まあ、相応しい最後だなと少しも気の毒に思わないでいると、

 

 「これが良いんじゃない?」

 

 「うーん、もっと上等なのは無いの?」

 

 「俺は、この手甲にしよう!」

 

 「某は、この2剣に致そう!」

 

 「私は、最近槍の練習をしているから、この槍にしよう!」

 

 我々は二人の最後など心底どうでも良いから、『ブラック・アーミー』が落とした武器の中から、使えそうな物を拾い上げて、感触を確かめている。

 

 「さて、些か早いし変則的だが、『西方武術魔術競技大会』の武術部門のお披露目といこうではないか、もっとも相手はたかが犬ころなので、張り合いの無い事甚だしいが、文句を言ってもしょうがない。

 幸いこの様子は、全てムービーに収めている(とアラン様は透明化しているフランツ副官に振り返り)から、エキシビジョンマッチとして、放送して貰おう!」

 

 とアラン様が宣言されると、

 

 「「「了解です!」」」

 

 と笑いながら、全員が返事した次の瞬間、

 

 「「「ガアアアアアーーー!!」」」

 

 と咆哮を上げながら地獄の犬共3頭が、こちらに向かい突っ込んで来た!

 

 アラン様は足元にひっくり返っている、朝食の為に用意された大きなテーブル(長方形に長く全長10メートル程)を、軍靴のつま先を潜らせて少し浮かせると凄まじい蹴りをテーブルに叩き込んだ!

 テーブルは回転しながら地獄の犬共3頭にぶつかり四散した!

 地獄の犬共3頭は、無様に倒れて慌てて起き上がって来たが、信じられないものを見る様に、アラン様に視線を向けた。

 アラン様は別に気合を入れている訳でも無く、槍を肩に担いで地獄の犬共3頭に対し手で招く動作をされた。

 その時明らかに地獄の犬共3頭は、自分より遥かに強い敵(例えばドラゴン)を目の前にしたかの様に、身をガタガタと震わせて尻尾を折りたたみ怯えた様子をみせたが、我々がドラゴンなどより小さいのに気付き本能を無視して、襲いかかってきた。

 《馬鹿な犬どもだ、本能に従って我等に降伏すれば命が救われる可能性もあったのに》

 と思いながら、自分とアラン様は中央の『ケルベロス』に向かい、セリーナ・シャロン両准将は左の『ガルム』、シュバルツ・ミツルギ両親衛隊長は右の『ガルム』を相手に決め、全員が構えた。

 

 ほぼ同時に、『ケルベロス』と『ガルム』は合計5個の顎から地獄の炎を我々に吐いてきた!

 我々6人は地獄の炎をアッサリと避け、

 

 「コリント流剣術奥義《ビックバン・バースト》!」

 

 「コリント流剣術奥義《サンダー・ボム》!」

 

 とセリーナ・シャロン両准将はコリント流剣術 の奥義を叫び、凄まじい連撃を『ガルム』の左右から仕掛け、ずたずたに引き裂いてしまった!

 

 「神剣流奥義《二連朱雀》!」

 

 「神拳流奥義《火産霊》!」

 

 とシュバルツ・ミツルギ両親衛隊長は神剣流と神拳流の奥義を叫び、2剣と手甲に炎を纏わせて『ガルム』の左右から十字の切り裂きと拳の連打を浴びせ、燃やし尽くす!

 

 自分は『ケルベロス』の真正面に立ち、精神を集中させると突っ込んでくる『ケルベロス』に向け、

 

 「コリント流剣術奥義《ジャスティス・ジャッジメント》!」

 

 と叫び『ケルベロス』の真ん中の頭を、真っ二つに唐竹割りした!

 

 残り2つの頭が自分に襲いかかってきた瞬間!

 

 「コリント流槍術奥義《神槍八華閃》!」

 

 とアラン様がコリント流槍術の奥義を叫び、左右両方の『ケルベロス』の頭に一瞬の内に4つずつの穴を穿った!

 

 結局6人の奥義を喰らって地獄の犬共3頭は、断末魔も上げれずに黒い靄に戻りそのまま消えていった。

 

 「バキンッ!」

 

 という音と共に、『ケルベロス』が消えていった地面に落ちていた『降魔の指輪』が壊れ、そのまま崩れ去っていく。

 

 「やはり手応えが無かったな、これなら武器を持った『オーガキング』の方が余程強いぞ!

 そういった魔物がゴロゴロいる『魔の大樹海』が如何に訓練に適しているか判るというものだ!」

 

 とアラン様が感想を述べ、

 

 「「「全くです!」」」

 

 と我等も応じ、首謀者二人が地獄の犬共3頭と一緒に消えてしまったので、ある程度の事情を知ってそうな『ブラック・アーミー』の隊長を尋問する用意を始めた。

 

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