人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記①(人類銀河帝国 コリント朝元年)《『世界武道大会』①》

 6月1日

 

 「よう、不肖の元弟子、調子は良さそうじゃないか!」

 

 と自分と組手をしているミツルギ殿に、無遠慮な声を掛けてくる者が居た。

 

 「おや、酒毒で寝込んで居るかと思えば、随分元気良さそうじゃないですか、『拳聖』!」

 

 とミツルギ殿が、声を掛けて来た50歳くらいの壮年の男性に対して、減らず口を叩いた。

 

 「吐かせ、破門された元弟子が、噂の帝国の親衛隊長様になられて居ると聞いて、表敬訪問に来てやったのよ!」

 

 「それは、どうもご丁寧に、こちらは至って毎日充実していますよ!」

 

 「腕は鈍っていないんだろうな?」

 

 「鈍るどころか、道場を出てから2倍は強くなってますよ、今なら確実に『拳聖』である貴方に勝ってみせますよ!」

 

 「・・・その様だな・・・良くぞそこまで鍛えられたものだ!殆ど人の領域を越えているじゃねえか、どうやってそこまで極めた!」

 

 「まあ教えるのは、吝かではないですが、帝国へ所属して貰う必要がありますがね」

 

 「・・・やはりか、お前のその能力の伸びは帝国へ所属する事で得られたんだな!

 だが、その伸び方は無理に強化したものじゃねえな!

 寧ろ歪んでた部分が矯正されて、健やかな成長が促進されてやがる!

 どうしたらそんな良い事ずくめの矯正された進化が出来やがるんだ!

 是非アラン皇帝陛下に会わせてくれ!」

 

 と後半は、自分に頭を下げて懇願して来た。

 この異様な精気に満ち溢れた人物が、『拳聖ダンテ』様か!

 肩書の割に軽い口調だが、その佇まいは流石は『拳聖』まるで隙がない。

 

 「・・・今少ししたら、この”コロシアム”の中継モニターのチェックが終了しますから、どうぞ直々にお会いになって下さい!」

 

 と説明したら、『拳聖ダンテ』様は自分の事も観察して、

 

 「ふーん、・・・・アンタも相当出来るな!

 俺の弟子共の内アンタに勝てそうなのは、1人しか居ねえな!」

 

 と評価してくれた。

 

 「ほう、今のケニー殿に勝てそうな奴とは、もしかしてあいつか!」

 

 とミツルギ殿が聞くと、

 

 「ああ、『ダルマ』だよ、現在の『拳王』殿さ。

 あいつも今度の『世界武道大会』に出る予定だから、稽古をつけてやってくれや!」

 

 と話していると、アラン様がカトウを連れて、”コロシアム”の照明具合をフィールドで確かめながらこちらに来られた。

 

 其処に居た全員が片膝を着いて出迎えると、アラン様は、

 

 「挨拶などせずに訓練を続けてくれ、ミツルギ殿には徒手空拳部門の優勝者と戦って貰うのだからな、ベストを尽くして貰いたい、そして、

 お初にお目にかかる、私はアランと申します『人類銀河帝国』では皇帝をやらせて頂いておりますが、単身の自分は一介の武人に過ぎません。

 偉大なる先達たる武人の頂点のお一人、『拳聖ダンテ』殿にお会いできて光栄です」

 

 と丁寧に頭を下げられた。

 

 「と、とんでもない、私など武人の頂点を名乗れる程の者じゃないですよ。

 あくまでも先代から譲られただけで、まだまだ道半ばと思ってまして・・・」

 

 とかなり恐縮されたご様子だ。

 ミツルギ殿が、突然吹き出して笑い、

 

 「『拳聖』がこんなに恐縮してる姿を見るのは初めてだ!

 『拳聖』様よー、アラン陛下は非常に話せる御仁だから、地のままでいいぜ!」

 

 と『拳聖』を冷やかし、アラン様も、

 

 「そうですな、此処に居る全員が武人ですので、宮廷ごっこをする必要は無い。

 どうぞ、くだけた調子で話されて下さい。

 私もその方が良くて、肩が凝らなくて済む」

 

 と笑われながら肩を回されて仰られた。

 

 「・・・そうですかい?それでは遠慮無く話させて頂きます。

 しかし、噂で聞いていた御仁とは、まるで違う方だな!

 外見だけは生まれながらの貴公子然としていて、気品に溢れていなさるが、上手く内に秘めて居られるその気配。

 まるで人間の皮を被ったドラゴンの様だ!

 とても人間の範疇に収まる人物じゃねえ!

 神話の英雄だって言われても俺は信じるぜ!」

 

 と手放しで『拳聖』はアラン様を褒められた。

 やはり『拳聖』程の方となると、アラン様の上辺だけの貴公子然とした佇まいには騙されず、その内なる武神の如き気配を濃密に感じられるのだろう。

 

 「・・・流石だな『拳聖』様よ、アラン陛下は俺や『剣王シュバルツ』が同時に掛かっても、いなしてしまうくらいの高みに居られるんだぜ!

 何時か、暇な時に稽古をつけて貰いなよ!」

 

 とミツルギ殿が揶揄する様に言われたが、『拳聖ダンテ』様は満更でもないのか、「うむ!そうさせて貰おう!」と頷いている。

 

 「嗚呼、そう云えば『賢聖モーガン』殿から、依頼されていたので今お渡しします」

 

 とアラン様は言われて、カトウが差し出してきた小箱を『拳聖ダンテ』様に向かい、

 

 「此れは『ナノム玉2』と申しまして、身体の改善と魔力の循環を促進する物で、皆が精霊の加護と言っている物です。

 『賢聖モーガン』殿が『拳聖ダンテ』殿と『剣聖ヒエン』殿に、是非提供して欲しいと依頼された物です。

 どうぞ、お受け取り下さい!」

 

 とアラン様は『拳聖ダンテ』様に手渡された。

 震えながら『拳聖ダンテ』様は受け取り、

 

 「・・・こ、これが、ミツルギがさっき言っていた物で、『賢聖』のしわくちゃババアが突然俺より若くなっちまった、とんでもないアーティファクトか・・・!」

 

 と呆然とした様子で独白している。

 《まあ無理もないな》

 と自分も思う、誰が400歳を越える老婆を一晩で40歳程に若返らせてくれる秘宝を、何の見返りも無くアッサリとくれるだろうか。

 

 震えながら『拳聖ダンテ』様は小箱を開け、『ナノム玉2』を手に取る。

 

 「無理に飲まれる必要は御座いませんよ、あくまでも飲むのは『拳聖ダンテ』殿のご自由になさって下さい。

 私と帝国は強制するつもりは一切御座いません」

 

 とアラン様は仰られたが、

 

 「いえ、是非この場で飲ませて頂きます!」

 

 と『拳聖ダンテ』様は言い、そのまま『ナノム玉2』を口に放り込まれた。

 

 「おおっ、溶ける様に消えたが、これで宜しいのかな?」

 

 と言われたので、アラン様が、

 

 「それで宜しいですよ。

 一晩眠られて明日、魔法等の使用に関するイメージムービーを見たら、完了です!」

 

 と言われたので、『拳聖ダンテ』様は、

 

 「そいつは良い。

 ああ、明日起きるのが楽しみですぜ!」

 

 と心底明日が楽しみらしく、莞爾と笑われた。

 

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