人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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11. 8月の日記②

 8月18日

 

 快晴の中我々は陣地を出てファーン辺境伯の城邑を包囲しているセシリオ王国軍に対して700メートル程の距離をおいて陣形を整えた。

 我等は変形型の魚鱗の陣で前面に「近衛軍」300が配置され中間に「支援軍」そして後方にブリテン伯爵軍1000人とフランシス子爵軍700人が続いた計2200弱。

 対するセシリオ王国軍はファーン辺境伯の城邑を包囲する1万人を残し、各地方に部隊を派遣して数を減らしたとは云え横陣で迎え撃つ様だ、正規軍2万人はお得意のファランクスを展開し傭兵団1万人は両翼に配置され明らかに取り囲んで包囲陣形に移行してこちらを袋叩きにする構えだ。

 13倍以上の敵に挑むと云う普通に考えれば正気を疑われるのが当たり前なのだが、我等「紅」には恐怖など微塵も湧いて来ず、むしろ我等の攻撃を受けなければならないセシリオ王国軍を憐れんでいたが、流石に他の友軍は緊張している様だった。

 戦場に緊張が走る中、徐ろにアラン様が単騎進み出られ魔道具を構えた。

 すると空中に縦30メートル横50メートルの映像が映し出された。

 我等「紅」以外の両軍が驚く中アラン様はセシリオ王国軍に対して降伏勧告をされた。

 

 「我はドラゴンスレイヤーにしてベルタ王国護国卿アラン男爵で有る。

 不当な侵略者よお前達の町村を襲わせた支軍は既に我と我が軍が退治した。残るは此処に居るお前達の軍のみ、即刻此の場より立ち去り不当な侵略行為の賠償を行え、そうすれば攻撃を控えてやるがもし聞き入れないのならば地獄も生温いと思える程の断罪の火を以って報いるが返答は如何に?」

 

 セシリオ王国軍は一瞬の沈黙の後、嘲笑するような笑いに包まれる特に傭兵隊と思われる辺りからはこちらを嘲る様な怒号が飛び交った。

 暫くの間その無知蒙昧な輩の哀れな囀りに耳を貸した後、アラン様は宣言された。

 

 「どうやら返答は無くこちらを嘲る様な笑いが聞こえてきたのみ、それでは我が軍による攻撃を受けて貰うが精々地獄で後悔せぬようにな。」

 

 と仰られた、そして5秒程の空白の後空中から戦場を圧する咆哮がセシリオ王国軍頭上に降ってきた。

 其れまでひたすら我等ベルタ王国軍を嘲っていたセシリオ王国軍は、ピタリと笑いを止め恐る恐る天を振り仰いだ。

 この時まで「空軍」は遥か上空で待機しており自分と騎竜のガイもひたすら出番を待っていたのである。

 ゆっくりとグローリア殿を中心にセシリオ王国軍側に降下して行き、彼等が茫然自失している間に彼等の頭上に其々の両足に掴んでいた油の壺の束を投擲した。

 セシリオ王国軍が落とされた油に慌てているのを尻目にグローリア殿始めワイバーンも轟々と息を吸い込み始める。

 次の瞬間セシリオ王国軍中心目掛け「空軍」による軍団魔法「ナパーム」が展開された。

 其れは伝説とさえ言われる爆裂魔法の多重展開、その威力はアーティファクトによりセシリオ王国軍を覆っていたマジックシールドを容易に引き裂き戦場に花開いた地獄の炎である。

 瞬間の被害は5千人そして油に引火する事で炎が燃え広がりその炎に焼かれて更に5千人が死傷し、火傷と呼吸困難による戦闘継続困難者は更に1万人に達した。

 頃や良しと見て、アラン様が号令を発し「近衛軍」300が3つの鋒矢の陣に分かれてセシリオ王国軍残存部隊に突っ込む。

 そして「近衛軍」が使用しているのは軍団魔法「オーディン」で有る。

 

 軍団魔法「オーディン」・・・それは多重展開された「エアーシールド」を纏った攻性防壁魔法、同じ攻性防壁魔法で有る軍団魔法「イフリート」と違い、これは炎の中であろうが水の中であろうが呼吸が可能で有り、基本的に相手を跳ね飛ばしながら疾走し敵を行動不能にする魔法で有る。

 

 混乱でまともな陣形を維持出来無い、セシリオ王国軍残存部隊は3本の強力無比な鋒矢の陣に貫かれた。

 切り裂かれたセシリオ王国軍に「支援軍」とブリテン伯爵軍1000人とフランシス子爵700人からなる各種魔法と弓矢による側面攻撃が容赦無く降り注ぐ。

 セシリオ王国軍得意の氷雪魔法も部隊で使用してこそ意味があり、個々での魔法発動では威力が小さすぎて意味を成さなかった。

 戦況に驚いたファーン辺境伯の城邑を包囲する1万人のセシリオ王国軍は友軍と合流を果たそうと戦場に向かおうとするが、其処に待っていたのは地面に降り立ち踏ん張りを効かせた状態で口を大きく開けたドラゴンとワイバーン15頭の我が「空軍」で有る。

 その姿に驚愕し騎兵は馬が竿立になり歩兵は折り重なって倒れ込む、其処へ避ける間もなくドラゴン達の「ハウリングパニッシャー」が放たれる。

 その一撃で1万人のセシリオ王国軍は半数以上が気絶し戦線は崩壊して残りの部隊は潰走を始め、釣られるように元3万人いたセシリオ王国軍前線軍の残存部隊3千人程が撤退を始める。

 その撤退軍に対しても我等「空軍」は空から容赦無く「ハウリングパニッシャー」を投射し続け終には組織的な撤退をセシリオ王国軍残存部隊は諦めさせ潰走させる事に成功する。

 戦場の決着は着き、全軍集結して点呼と被害の確認を行うが怪我人は幾人か居たが即座にヒールが使われて事実上損害無しで有った。

 アラン様が剣を天に突き上げて

 

 「我等の勝利だっ!!!」

 

 と雄叫びを上げられると、戦った軍勢皆が同じ様に剣を天に突き上げ歓声を張り上げた。

 その歓声が響く中、城門が大きく開けられ城主以下兵士達が我等を目指しやって来て、我等「紅」とブリテン伯爵、フランシス子爵の軍と手を握り合い抱き合って双方の無事を称え合った。

 

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