人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記②(人類銀河帝国 コリント朝元年)《『世界武道大会』②》

 6月3日

 

 「久方振りで有るな、『剣王シュバルツ』腕は上がったか?」

 

 と自分と剣戟をしているシュバルツ殿に、声を掛けてくる者が居た。

 

 「オオッ、此れは師匠!一別以来です!」

 

 と両膝を着いてシュバルツ殿は、声を掛けて来た総髪の60歳程の男に頭を下げた。

 とすると、この人物こそが『剣聖ヒエン』様か!神剣流の創始者にして、当代の武人として最高峰の地位を『拳聖ダンテ』様と分け合う人物だ!

 かなり前にスターヴェーク王国が健在な頃、王都にて武芸指南として滞在されて、王太子始めクレリア様やダルシム中将等の全ての武人達に、神剣流剣術を指導されたが、生憎自分が居たルドヴィークには来られなかったので、お目にかかる機会が無く、今回この『世界武道大会』にオブザーバーとして来られると聞いて、楽しみの一つになっていた。

 自分も正座して頭を下げると、

 

 「いや、弟子でも無い方にその様な振る舞いをされると、某の方が困りまする。

 どうか立ち上がって下され!」

 

 と『剣聖ヒエン』様が言われたので、立ち上がったがどうしても頭を下げてしまった。

 

 「困りましたな。

 どうしたものか?」

 

 と『剣聖ヒエン』様を困惑させたみたいだ。

 

 「・・・だから言っただろう、お前は自分の影響力を低く見過ぎなんだよ。

 お陰でお前といると堅苦しくなるばかりだよ!」

 

 と後から『拳聖ダンテ』様が来られたが、その姿は2日前から一変していた。

 先ず白髪交じりだった髪は黒々としており、元々引き締まっていた身体は、一回り太く大きくなっていて、筋肉に至ってははち切れんばかりだ。

 どう考えても30後半の年齢にしか見えず、完全に若返っている!

 

 「どうやら、『ナノム玉2』は問題無く効力を示され無事精霊の加護も得られた様ですね!」

 

 と自分が『拳聖ダンテ』様を祝うと、

 

 「おおっ、ケニー殿ありがとう!

 見てくれこの身体を!2日前まで衰えて行く身体にひたすら慄き、これ以上強くなれない我が身に絶望していたのが嘘の様だよ!

 先程アラン陛下に、感謝と忠誠を誓って来た処だ!

 此れからは、帝国軍の訓練教官となる事が決まったので宜しく頼む!」

 

 と手を取って喜びを伝えてくれた。

 その様子を心底羨ましく思っている様子で、『剣聖ヒエン』様は、

 

 「其れよ!

 先程ダンテが某に挨拶して来たのだが、たった3日会わない間に変わり過ぎだ!

 然もダンテが不得意だった筈の魔法を、自由自在に使い熟すでは無いか!

 白昼夢を見ているのか?と自分の正気を疑ったぞ!」

 

 と憤慨されている。

 思ったよりくだけた方の様なので、ある程度素の自分でも良い様な気がしたので、話し掛けてみた。

 

 「『剣聖ヒエン』様にも『拳聖ダンテ』様と同様に、『賢聖モーガン』様がアラン様にお願いされて『ナノム玉2』を用意されてますので、どうぞ恩恵に預かる事をお勧めします!」

 

 と言うと、『剣聖ヒエン』様はとても喜ばれた様子で、

 

 「本当に忝ない!

 貴方方帝国軍の正義の行いは仄聞しているが、あまりにも荒唐無稽なものが多く、些かその様な英雄譚があり得るのか?と疑っていた某の不明には、恥じ入るばかりです。

 我が弟子の『剣王シュバルツ』を、物陰から先程観察してましたが、明らかに某が鍛えていた頃よりも、剣技そして身体の充足が見て取れた!

 是非某もアラン皇帝陛下にお目にかかりたい、ケニー殿ご案内頂けますかな?」

 

 と頼まれたので、陸上戦艦『ビスマルク』に車両に乗り全員で向かう。

 道中『剣聖ヒエン』様にシュバルツ殿が、これ迄の出来事を報告していたが、

 

 「何と!『剣王オウカ』も帝国軍に入っていて、然も現在妊婦で有るのか!」

 

 と『剣聖ヒエン』様は驚かれ、ついでに『拳聖ダンテ』様も、

 

 「そしてその相手は、ミツルギの奴なのか?

 あの野郎ー、2日前には一言もその事に触れなかったじゃねえか!

 水臭いにも程があるぜ、大体あいつは俺とヒエンそしてモーガンのしわくちゃババアが昔パーティーを組んでいた事を、知ってる筈だぜ、何で報告しなかったんだよ!」

 

 と憤慨された。

 多分ミツルギ殿は、恥ずかしかったんだろうなと考えていたら、陸上戦艦『ビスマルク』に車両が着いた。

 

 「しかし、この船は近くで見ればみる程壮観だな、昔モーガンのしわくちゃババアが乗る飛空船にも驚かされたが、それよりも遥かに大きいこの船の迫力は桁違いだな!」

 

 と『拳聖ダンテ』様が感想を漏らされ、「全くだ!」と『剣聖ヒエン』様が頷かれている。

 エレベーターに乗り、お付きの秘書官にアラン様の居る艦橋の艦長室に案内される。

 

 「此れはワザワザのお運び、痛み入ります」

 

 とアラン様が『剣聖ヒエン』様に頭を下げられると、

 『剣聖ヒエン』様は深々と頭を下げられ、

 

 「初めて陛下に御意を得ます。

 某は、ヒエンと申す一介の武辺者で御座る。

 今回御国が開催される『世界武道大会』へのオブザーバーとして罷り越しました。

 どうぞお見知り置き下され」

 

 と挨拶された。

 アラン様も居住まいを正され、

 

 「神剣流創始者にして当代最高峰の武人のお一人である、『剣聖ヒエン』様には以前からお目にかかりたいと願っておりました。

 今日この日願いが叶いましたので、光栄に思います」

 

 と返された。

 改めてアラン様と『剣聖ヒエン』様がお互い眼を交わされると、『剣聖ヒエン』様は身を震わせ始めた。

 

 「そ、某は、生まれて初めての感動に身が震えてなりません!

 ・・・やっと、・・・本当にやっと出会えました・・・!某の真実の主君に・・・!

 嗚呼、嗚呼、口惜しくてなりませぬ!

 折角、折角、やっと真実の主君に出会えたというのに、我が身は老いぼれてしまっていて、お仕えする期間が短すぎる!」

 

 と大粒の涙を滂沱と流し始めた。

 するとアラン様が、『剣聖ヒエン』様に近付き手を取って、

 

 「その様な事は有りませんぞ。

 横に居られる『拳聖ダンテ』殿を御覧なさい、この様に若返り充実した身体を取り戻して居られる。

 必ず『剣聖ヒエン』殿も若返り充実した身体を取り戻せる筈、そして『拳聖ダンテ』殿と同様に、まだまだ武の極みを目指せる筈です!

 共に我が帝国で、武に生きる者達同士で競い合い高め合いましょうぞ!」

 

 と仰せられたので、『剣聖ヒエン』様はその場に土下座して、

 

 「我が唯一の主君で有る、『人類銀河帝国皇帝アラン・コリント一世』陛下!

 御身の為に、我が神剣流は全ての剣技と奥義を捧げるもので有ります!

 そして必ず新たな剣技、奥義を極めて帝国の為に尽くすのを誓いまする!」

 

 と腰に挿して居られた刀を捧げ、それに対してアラン様は、

 

 「その誓い受け取った。

 此れより後は、我が帝国の人民の為に神剣流を遍く教え、帝国の人民へ武人としての有り様を規範として示す事を、我は『剣聖ヒエン』殿に望む!」

 

 と捧げられた刀を金打されて『剣聖ヒエン』様に返し、受け取った『剣聖ヒエン』様は腰に刀を挿し戻し金打を行い、武人の誓いを行った。

 こうしてこの日、『賢聖モーガン様』、『剣聖ヒエン様』、『拳聖ダンテ様』が正式に帝国の傘下に入られ、名実共に帝国は最高の臣下を得たのであった。

 

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