人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記④(人類銀河帝国 コリント朝元年)《『世界武道大会』④》

 6月6日①

 

 第一回『世界武道大会』が開催された。

 先ずは徒手空拳部門の代表者を決めるべく、250人によるバトルロイヤルが繰り広げられる事になるのだが、我々の目を引いたのは、ある一人の男であった。

 その男は何もかもが太かった!

 腕が太い・手が太い・太ももが太い・足が太い・胸板も太い・指が太い・首も太い・頭も太い・眉毛も太い・終いには浮かべている笑みまで太かった!

 その男は何と、バトルロイヤル会場で有る”コロシアム”の中央にドッカと腰を降ろしているのだ!

 そして、攻撃して来る相手を次々と手のみで、払い・掬い・投げ飛ばして行くのである。

 

 「・・・あれは・・・?!」

 

 見学している自分が思わず呟きを漏らすと、

 

 「・・・・・『顛倒結跏趺坐』・・・。

 奴の得意技の一つで、奴曰く絶対の防御の構えだそうだよ」

 

 と隣で苦々しそうにミツルギ殿が、解説してくれた。

 とすると・・・・、

 

 「やはりあの太い男が、ミツルギ殿の次の現拳王である『拳王ダルマ』か!」

 

 と聞くと、

 

 「・・・そうさ、あの全てが図太い男がダルマだよ・・・!」

 

 と苦々しさを通り越して、忌々しそうに返事してくれた。

 段々とバトルロイヤルの人数が少なくなり、10人程になると『拳王ダルマ』の異様性が参加者にもハッキリと判った様だ。

 何と『拳王ダルマ』の周りには、息も絶え絶えで選手約100人が同心円状の模様の様に倒れているのだ!

 この男は一人では倒せないと見た選手達は、10人が一斉に『拳王ダルマ』に襲いかかった!

 その瞬間『拳王ダルマ』は、その太い眉毛を釣り上げて、

 

 「吩!」

 

 と気合を迸らせると、その太い腕を豪快に数人ずつをラリアットした状態で振り回し、10人全てを悶絶させてしまった。

 

 「・・・相変わらず、力任せの美しくない拳法だぜ!」

 

 とミツルギ殿は評し、選手控室に向かう『拳王ダルマ』殿の前に、見学していた2階席から飛び降り立ち塞がった。

 

 「ようおめでとさん『拳王』殿!

 これで晴れて、俺の前にもう一度立てるな!」

 

 と『拳王ダルマ』殿に声を掛けた。

 

 「・・・これは、これは、何方かと思えば兄弟子ではござらぬか!

 一別以来ですな!」

 

 と『拳王ダルマ』殿はこれまた太い声で返事した。

 

 「・・・フム、まだ俺の折ってやった両足は、蹴りが放てる程には完治していない様だな・・・」

 

 と『拳王ダルマ』殿の太い足を見て、ミツルギ殿が呟かれ、

 

 「・・・確かに完治はして居らぬが、日常生活する分には困らぬし、自分の『顛倒結跏趺坐』を完成するには、良いハンデでござったよ!」

 

 と太い笑みを浮かべて、『拳王ダルマ』殿は太い手で太い太ももを叩いてみせて、

 

 「其れよりも、兄弟子の両腕の靭帯の方は治ったようでござるな、断裂状態だったので心配しておりましたぞ!」

 

 と太く聞いて来たので、ミツルギ殿は、

 

 「おお、そう云えばこの両腕の件があったな、何色々と手を尽くして治療して、今では更に強靭な身体を手に入れたぜ!

 この両腕のお礼は、『拳王』殿の両腕にしてやるよ、覚悟しときな!」

 

 「楽しみでござるよ!」

 

 と双方が挑発し合い、同時に踵を返してその場を離れた。

 かなりの因縁が有りそうだが、敢えて尋ねずに自分とシュバルツ殿がミツルギ殿のセコンドに付き、帝国軍医療担当の『ヒール』を受けて疲労等を回復された『拳王ダルマ』殿が、武闘場にやって来るのを待つ。

 

 15分の休憩の後、『剣聖ヒエン様』と『拳聖ダンテ様』が付き添われて『拳王ダルマ』殿が、『世界武道大会』決勝用にせり出して来た武闘場にやって来た。

 『剣聖ヒエン様』は先日飲まれた『ナノム玉2』の効果で、その総髪は以前は白髪と黒髪が半々だったのに、今では黒々と光る総髪に変わり、肌は艶を取り戻して隣りにいる年下の『拳聖ダンテ様』より若く実年齢の半分程の30前半に見える。

 そのまま『剣聖ヒエン様』は武闘場に上がり審判役となられ、『拳聖ダンテ様』は『拳王ダルマ』殿のセコンドに付かれた。

 

 

 「其れでは、徒手空拳部門の決勝戦を始めます!

 選手二人は、武闘場に上がって下さい!」

 

 と『剣聖ヒエン様』が宣言して、選手二人は武闘場に上がって行く。

 

 「250人によるバトルロイヤルを勝ち抜いて決勝戦に駒を進めた挑戦者は、現拳王で有る神拳流免許皆伝『拳王ダルマ』選手!」

 

 大きなどよめきが起こったが、この紹介は”コロシアム”内だけで無く、西方教会圏全ての国のモニターを通し『放送局』により生中継されているので、”コロシアム”外の方が大騒ぎだろう。

 

 「そしてその挑戦者を迎えるは、帝国軍皇帝直属親衛隊長にして前拳王で有るミツルギ選手!」

 

 またも大きなどよめきが起こったが、選手である二人は対戦相手をひたすら見続けていて、全く聞こえていない様だ。

 

 「其れでは改めてルールを説明しますが、あくまでもこの戦いは死闘では無く競技なので、命を奪う様な技の行使は厳禁ですが、それ以外の急所や手足を折る等の行為は許可します。

 お互いこのルールに異存は無いですか?(此処で両者は同時に頷いた)

 其れでは、決勝戦開始せよ!」

 

 と審判役である『剣聖ヒエン様』が宣言した瞬間!

 

 「ゴワアーーン!!」

 

 と銅鑼がなって決勝戦が開始された。

 

 ゆっくりと二人が距離を詰めて行き、ミツルギ殿が軽くジャブを放ち、それをダルマ殿はその太い手で払う様に捌いた。

 そしてジャブからそのまま連打に繋げて、ミツルギ殿がコンビネーションを放つと、ダルマ殿は太い両腕を前面に掲げ完全に防ぐ。

 埒が明かないと見たのか、ミツルギ殿が凄まじい前蹴りを、その防御体勢を砕けよとばかりに叩き込むと、ダルマ殿はその防御体勢のまま5メートル程後ろに吹き飛んだ!

 

 「「オオッ!!」」

 

 と見物されている、来賓の方々がどよめく中、一気に距離を詰めたミツルギ殿が胴回し回転蹴りを右側面に放った。

 その蹴りを腰を落とす形でダルマ殿は避けると、まだ宙にあるミツルギ殿の右脚を抱え込みそのまま空中に放り投げた!

 そのまま空中で、ミツルギ殿は宙返りしてそのままの勢いで、踵落としをダルマ殿の頭頂部に落とす。

 しかしそれを読んでいたのか、ダルマ殿はその太い腕を、十字にクロスさせて防ぐ。

 ミツルギ殿は一旦距離をとり、「コオオオーーッ」と息吹を行い呼吸を整えると、以前アラン様と戦われた様にクラウチングスタイルの様に構えるタックルの体勢になった。

 するとそれを見越してか、ダルマ殿は例の『顛倒結跏趺坐』の体勢に座り直し、待ち受ける絶対の防御の構えを取った。

 

 「・・・・・前と同じになったな・・・・・」

 

 とミツルギ殿が呟かれ、それに応じて、

 

 「・・・・・そうですね、しかし今度は引き分けにはさせませんよ・・・!」

 

 とダルマ殿が答え、

 

 「・・・いや、前は両腕を折られて靭帯を断裂させられての引き分けだが、今回はそうは行かねええ!」

 

 「・・・いえ、今回は必ず勝たせて頂きます!」

 

 と二人は叫び、ミツルギ殿がタックルを仕掛け、ダルマ殿は『顛倒結跏趺坐』で応じた。

 低い体勢でダルマ殿のその太い腰にミツルギ殿が正面からタックルを決めて、引き倒そうとすると上からダルマ殿が覆い被さる様にして抱え込もうと、ミツルギ殿の両脇の腕をその太い腕で閂を極めようとした!

 瞬間、タックルを決めていた、ミツルギ殿が信じられない速度でダルマ殿の右側面に回り込んだ!

 

 「むうっ?!」

 

 とくぐもった声を上げ、ダルマ殿の太い両腕が密接状態で有るにも関わらず、空振りする。

 

 「じゃっ!ーー」

 

 と短く叫ぶとと共にミツルギ殿が、ダルマ殿の太い右腕を両腕で抱え込んだ。

 

 「ひゅっ!」

 

 とミツルギ殿が短く口から短い呼気を吐き、両足をダルマ殿を挟む様に、同時に地面から飛び上がる。

 

 そしてその左足の膝裏で、ダルマ殿の太い首を後ろから巻きつけた。

 

 と同時に右足の膝頭がダルマ殿の太い顔を、下から凄まじい勢いでめり込む程叩き込まれた!

 

 「メキッ!」

 

 という音と共にダルマ殿の太い顔が、地面に落ちて行き、ミツルギ殿は三角絞めの形でダルマ殿の太い首を両足で締めて、極めたまま二人共に倒れ込んだ。

 

 暫くの時が流れ、審判役である『剣聖ヒエン様』が、確認の為にダルマ殿の瞳孔を確認し、完全に落ちている事を確認した。

 

 「ダルマ選手の気絶を確認!

 よってミツルギ選手の勝利!!」

 

 と審判役である『剣聖ヒエン様』が、裁定を下しミツルギ殿を立ち上がらせると、その片腕を高々と天に向かい突き上がらせた。

 

 「「「「「オオオオオッーーーー」」」」」

 

 と来賓の方々がどよめく中、セコンドで有る自分とシュバルツ殿がミツルギ殿に近付き、

 

 「やったな!」

 

 と労うと、

 

 「・・・ああ・・・」

 

 と短く返事したので、気になった点を尋ねた。

 

 「もしかして、あの極め技はアラン様の『虎王』か?」

 

 「・・・・・その通りだよ、アラン様にやられてから直々に教わり、自分なりにアレンジしたのが、あれさ!」

 

 とミツルギ殿が答え、シュバルツ殿が、

 

 「成程、差し詰めミツルギ流『虎王』という訳だな!」

 

 と言い3人で、肩を叩きあって笑い合った。

 

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