人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑥(人類銀河帝国 コリント朝元年)《『世界武道大会』⑥》

 6月6日③

 

 「・・・漸く始められるな、本当の武道大会を・・・」

 

 と肩を回しながらアラン様は呟かれ、

 

 「「「「「お疲れ様でした!」」」」」

 

 とこの場に居る全員で、アラン様を労った。

 

 先程迄アラン様は、今回の『世界武道大会』の成功を祝う式典や、来賓との折衝と今後の方針の説明、そして新たに公都ザイリンクに設ける『帝国バンク』の説明を、集まった商人達にしていたのだ。

 折角、優勝者には、アラン様との対戦を準備していたのに、結局ミツルギ殿とシュバルツ殿が勝ってしまったので、アラン様は戦う事が無かった。

 アラン様は、皇帝と云う立場も有り、生粋の武人で有るにも関わらず、日々の業務に忙殺されて、中々武術訓練も出来ずに居て、先日のゴラムとギロンの討伐も敵があまりにも不甲斐なくて、全然暴れられなかった。

 然ももう一つの趣味で有る料理も、皇宮の全てが揃った料理魔道具だらけの厨房と違い、元ザイリンク帝国の帝城には、お粗末な厨房が有るのみ。

 かと言って、公都ザイリンクには、大きな川も無くて、気晴らしの釣りも出来ない。

 つまり今現在のアラン様は、全身ストレスの塊で有り、何時爆発するか判らない強力な魔法の様な状態で、帝国軍上層部は密かに危惧していた。

 という訳で、『世界武道大会』がどういう結果になろうが、アラン様には思う存分戦って貰おうと決まっていたのだ。

 

 「さて、新たに弟子入りと帝国軍への入隊希望した者達は、全員武闘場に上がれ!」

 

 と自分が声を掛けると、20人の今回『世界武道大会』に参加し、そこそこ出来ると判断して、スカウトした連中が武闘場に上がってきた。

 

 「先ずは徒手空拳の格闘だ、当然そちらで応募した者は参加して貰うが、武装部門での応募した者も参加して結構だ!」

 

 と言うと、全員が参加を希望した。

 皆、緊張して身体が強張っているのが、見て取れる。

 

 《それはそうだろうな》

 

 今から戦う相手はこれから仕える事になる、『人類銀河帝国』の皇帝陛下その人だし、元ザイリンク帝国以外の場所では、繰り返し帝国軍の戦いの模様が放送されており、その最前線で常に戦うアラン様の姿は、凄まじいの一言に尽きる。

 一般人は、アラン様の目を引く魔法に目が行きがちだが、武術家やそれを目指す者達ならば、要所要所でのアラン様の剣技や格闘技を見て、その素晴らしさは殆どの者が把握している。

 そして何より、目前で全く隙がない佇まいを見せるアラン様は、決して侮れない相手である。

 

 「嗚呼、皆に教えて置くが、この”コロシアム”は、古代文明のアーティファクトなので、訓練用と怪我等を軽減できる措置である、《ペナルティーシステム》と云うものがあり、今回はアラン様だけ最大限のペナルティーを課している。

 凡そ、アラン様は通常の10分の1しか実力が出せない様に調整している、其れでも恐らく君達では、対抗出来ないと思うが、悔しければアラン様に対して一本取って見せろ!

 そうすれば、最初からアラン様の親衛隊に採用して貰えるぞ!」

 

 と自分が説明すると、現金なもので、途端に参加者の緊張が溶けて、やる気が漲っている。

 

 審判役を請け負ってくれた、『剣聖ヒエン様』と『拳聖ダンテ様』が武闘場の脇で見守る中、

 

 「ゴワアーーン!!」

 

 と銅鑼がなってアラン様と20人による戦いが開始された。

 

 「「「ウオオオオーー!」」」

 

 との掛け声も勇ましく、5人程がアラン様に突っ込んで行った。

 しかし、アラン様は殆どその場を動かずに突っ込んで来た者達の、腕や腰そして蹴ってきた足に手を添える様に触れると、その突っ込んだ勢いのまま5人は受け身も取れずに吹っ飛んで行った。

 残りの15人が信じられずに、仕掛けるのに躊躇していると、

 

 「来ないのか?

 それでは此方から行くぞ!」

 

 とアラン様が宣言され、スタスタと無造作に15人の中央に歩まれると、手を組み軍靴を脱いで素足になられるとその足で15人を払い始めた。

 そうアラン様は、足で蹴るのでは無く、先程の手でやられた事と同様に、足で払われて15人を吹っ飛ばしたのだ!

 20人全員が、武闘場で呻きながら倒れたのを確認し、『拳聖ダンテ様』が、

 

 「試合終了!」

 

 と宣言し、直ちに帝国医療部隊が武闘場から20人全員を連れ出し、『ヒール』と回復ドリンクで20人全員を癒やしていく。

 

 「やはりこうなるか。

 さて、今のを見て感じた事も有るだろうから、『拳王ダルマ』よ精々揉んでもらえ!」

 

 と『拳聖ダンテ様』が言われ、それに応じて『拳王ダルマ』殿が武闘場に上がってきた。

 

 「・・・アラン陛下・・・、噂で貴方様こそ当代に於ける最高の武人で有ると、聞かされて居りましたが、正にその通りその眼前に立ってみれば、嫌でも貴方様が到達された高みを思い知らされる。

 こんな佳き日が又と有ろうか、兄弟子と久し振りに戦い、自分の技の至らなさを思い知らされ、此れからその兄弟子すら凌駕する貴方様と戦える!」

 

 と感動した様子で『拳王ダルマ』殿が、申告された。

 

 「フム、『拳王ダルマ』殿、思う存分にこれ迄培ってきた、力と技をぶつけて来なさい。

 貴方の問題点とそれを改善する方法を教えよう」

 

 とアラン様が言われると、

 

 「忝ない!是非お願いする!」

 

 と言い、

 

 「ゴワアーーン!!」

 

 と銅鑼がなってアラン様と『拳王ダルマ』殿の試合が開始された。

 

 初っ端から『拳王ダルマ』殿は武闘場中心に腰を落とし、『顛倒結跏趺坐』の体勢に入った。

 

 「・・・確かにその体勢になれば、対戦者はかなり攻撃手段が限定され、それへの対処は容易になる。

 だが、ミツルギがその技を破った様に、幾つかの方法でその技を破る方法は有る。

 それを判り易い様に、示してやろう」

 

 とアラン様が言われ、無造作に『拳王ダルマ』殿の『顛倒結跏趺坐』に近寄っていった。

 

 「むうっ?!」

 

 と面食らった様子で『拳王ダルマ』殿は呻くと、大上段からその太い手で手刀を繰り出した。

 それを軽々と避け、

 

 「此れこの通り、その技はあくまでも受けの技で、いざ攻撃に移ると途端に馬脚を現してしまい、素早い攻撃が出来ない事実が露呈してしまう、そして、」

 

 とアラン様は指摘し、ゆっくりと片手を伸ばした。

 

 「くっ!」

 

 と『拳王ダルマ』殿はアラン様の攻撃を警戒し、両腕を前面でクロスさせて十字受けの体勢になった。

 その十字受けの中心点に、アラン様が軽く手を当てると、

 

 「吩!」

 

 と気合を発した。

 幾らも力を使っていないと見えるその打撃は、ごく僅かに『拳王ダルマ』殿を揺らす。

 次の瞬間、

 

 「ドウッ!」

 

 という音と共に、『拳王ダルマ』殿は前のめりに倒れた。

 

 「・・・浸透勁・・・身体の体幹が定まっていない場合その体幹を揺らす事で、身体の中心線を通る神経が圧迫されて誤信号を脳に伝え、問答無用で悶絶してしまう。

 今の説明を、『拳王ダルマ』殿が回復次第伝えて頂けますかな?『拳聖ダンテ様』」

 

 とアラン様は、『拳聖ダンテ様』に言われ、

 

 「心得た!」

 

 と『拳聖ダンテ様』は心底感服した様子で頷かれた。

 

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