人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月6日④
「さて、続けて武装部門だ、参加者は武闘場に上がるように!」
と自分が声を掛けると、帝国医療部隊によって回復した20人の内10人が武闘場に上がった。
「他の者は、良いのか?」
と聞くと、
「武器を使用する戦闘は、得意では無いですし、それよりも先程の『拳王ダルマ』との試合の様に、武闘場外から観察した方が、全体が見れて勉強になります!」
と徒手空拳部門で参加していた者が、答えてくれた。
《それもそうか》
と自分も考えたのは、見取り稽古の重要性をアラン様から、指摘されていて、実際それが身になっているのを実感するからだ。
審判役を請け負ってくれた、『剣聖ヒエン様』と『拳聖ダンテ様』が武闘場の脇で見守る中、
「ゴワアーーン!!」
と銅鑼が鳴ってアラン様と10人による戦いが開始された。
今回のアラン様の武器は、ただの棒である。
最近のアラン様は槍術を極めようとしていて、その一環として槍先の無い柄の部分での棒術の訓練もして居られる。
銅鑼が鳴っても参加者10人はうかつに仕掛けず、各々が得意とする構えを取り、アラン様の動きを見極めようとしている。
「良いな、そうやって相手の動きを観察し、その微妙な変化を見逃さずに対処しようとする事は間違っていない。
だが、それとは別に如何に動きを読んでも、対処出来ない段階も有るのだと、知るが良い!」
とアラン様は言われ、徒手空拳部門での戦い同様に無造作に10人の中心辺りに、歩まれた。
流石に此処まで近寄られると、攻撃しない訳にも行かず、10人其々が魂心の力を込めて武器を振るった!
「フム、其れは悪手だな、武器や武具は己の身体の延長線に有るもので、力を込めすぎたりすると、無理な力みが生じて、体幹が崩れるのだよ、だからこの様になる」
とアラン様は教え諭す様に言われながら、次々と棒を螺旋状に回転させて相手の武器を絡め取り、武器を奪った上で鳩尾や延髄を棒で突かれて悶絶させられていく。
結局10人全てが武闘場に蹲り、決着が着き、『剣聖ヒエン様』が、
「試合終了!」
と宣言し、直ちに帝国医療部隊が武闘場から20人全員を連れ出し、『ヒール』と回復ドリンクで20人全員を癒やしていく。
「まあ、こんなものかな。
さて、今のを見て感じた事も有るだろうから、『剣王カイエン』!お主の全力でアラン陛下に挑んでみよ!」
と『剣聖ヒエン様』が言われ、それに応じて『剣王カイエン』が武闘場に上がってきた。
「・・・人類銀河帝国皇帝アラン陛下・・・貴方の事は、巷の噂を散々聞かされてきたが、眉唾物だと無視して来た。
だが貴方が指導したシュバルツ先輩は、『剣聖』が指導していた頃より明らかに強くなっていたし、先程までの格闘と武器での試合は見事としか言いようがない。
それでも自分は神剣流に誇りを抱いているし、自信も有る。
ならば全ての想いを込めた技を貴方にぶつけるのみ!
受けて頂く!覚悟されよアラン陛下!!」
と『剣王カイエン』は、思いの丈をぶつける様な言葉を、アラン様に叩きつけた。
アラン様は心底嬉しそうに、棒から剣に持ち替えて、
「そうだ、その熱情の全てを込めてぶつかって来い!
その先にこそ、お前の本当に目指すべき未来が有る!」
と『剣王カイエン』に向かって言われたので、『剣王カイエン』は、はにかむ様な年齢相応の笑顔を見せた。
「ゴワアーーン!!」
と銅鑼が鳴ってアラン様と『剣王カイエン』の試合が開始された。
「ウオオオオーー!」
と凄まじい雄叫びを上げ、『剣王カイエン』は全身全霊を掛ける勢いで技を繰り出そうとしている!
「この覚悟に対し、いなすのは礼儀に反しているな。
其れでは、この場にいる全ての者達の為にも見せよう、此れが『コリント流剣術 最終秘奥義メテオ・ストリーム』!」
嗚呼、その名だけはクレリア様とエルナ殿から伺っている、恐らくはどの様な猛者であろうとも、初見ではその連撃には付いて行けず、ただ打ちのめされるだけであろうと。
『剣王カイエン』は、神剣流奥義『影法師』を初っ端から発動させたが、今までと違い4分身では無く8分身と、恐らくは最大限の奥義発動をさせて、8分身全てが大上段に構え打ち下ろしてきた!
それに対してアラン様の身体が一気に歪み、『剣王カイエン』と同じ8分身に分かれた!
「何だと!」
と『剣王カイエン』が呻くと、8分身のアラン様が全員、『剣王カイエン』の大上段の打ち下ろしを下段から跳ね上げた。
「行くぞ!」
との合図と共に、『コリント流剣術 最終秘奥義メテオ・ストリーム』は発動した!
其れは、信じられない程の連撃!
正に目にも止まらない猛打の嵐だ!
徐々に8分身は4分身になり、途中からは1対1に戻っていたが、その連打の凄まじさの前にはどうでも良い事だった。
然もその連撃は流れる様に剣術だけでは無く、蹴りや足払いそして柄による打撃も織り交ざっていてまるで舞の様だ。
最後は、上段からの目にも見えない鋭い打ち下ろしで、終了した。
計24連撃の猛打で有る、『剣王カイエン』の剣は途中で折れてしまったが、それでも防御し続けて20連撃まで耐えていたが、最後は為すが儘になり遂には地に突っ伏してしまった。
「勝負有り!」
と『剣聖ヒエン様』がアラン様の勝利を宣告したが、周りの誰もがそんな些事はどうでも良くて、今見せて貰った神技にただ圧倒されている。
自分もあの一切の無駄のない流れる様な体捌きと、淀みのない剣の振り、そしてそれでも尚一本の棒が通った様な体幹、殆ど芸術的な一枚の絵の構図を見る様な景色を見て、止めどなく溢れる涙を拭う事も忘れた。
つまりアラン様は、この場にいる全員にこの神技を目指せと言われているのだ。
そのスピードには達せずとも、真似る事は出来るし、一連の連撃のその一部でも再現できれば、かなりの強敵にも対抗し得るだろう。
直ちに帝国医療部隊が武闘場から、『剣王カイエン』を連れ出して行く中、武闘場では車座になってアラン様と『剣聖ヒエン様』、『拳聖ダンテ様』、シュバルツ殿、ミツルギ殿、『拳王ダルマ』殿が先程の技に付いて座談会をしている。
「ケニー殿、お前も加われよ!」
とミツルギ殿が自分も呼んでくれ、更に『拳聖ダンテ様』が、
「おいっ、回復した20人も来い!
アラン陛下の武術談が聞ける、滅多に無い機会だ、後世に自慢出来るぞ!」
と全員を誘って下さり、武闘場はさながら武闘家達の武術評論の場と化し、一層賑やかに皆で『コリント流剣術 最終秘奥義メテオ・ストリーム』の技への入り方や、次の技への繋げ方を討論し合っていると、”コロシアム”のペナルティーシステムを管理していたカトウとフランツ副官が、気を利かせて大量の酒類とツマミ等を武闘場に運んできた。
「おおっ、これは気が利いているじゃねえか!
こういうのは、酒を飲みながらじゃねえと面白くねえ!」
と『拳聖ダンテ様』は言われて、アラン様も、
「その通りだ、こういう話しは鹿爪らしく話すんでは無くて、大いに飲みながら愉快に楽しみながら、話すのが良いのだから、カトウとフランツそして部下達も参加し大いに楽しめ!」
と仰られたので、カトウ達も最初は遠慮していたが、酒が入ると大分砕けて行き、終いには笑いながら楽しんでいた。
其処へ、帝国医療部隊のお陰で全快した『剣王カイエン』がやって来て、アラン様の前に土下座して、
「先程の試合での無礼、誠に申し訳無い!
アラン陛下を疑っていた自分は、正に井の中の蛙大海を知らずで、穴があったら入りたい気持ちで一杯です!
この上はどの様な事も聞くつもりですので、どうぞ如何様にもお命じ下さい!」
と大分しおらしい態度でアラン様に接しているのを見て、自分とシュバルツ殿そしてミツルギ殿は想定通りに、アラン様が『剣王カイエン』の性根を入れ替えてくれた事に、感謝した。
『剣聖ヒエン様』が、
「アラン陛下、感謝致す!
此の者の才能を愛す余り、躾が疎かになって居りましたが、どうやら良い形で矯正されました。
大変厚かましいのは重々承知していますが、どうぞコリント流の一門下生としてカイエンを扱って頂けないでしょうか?」
と頭を下げられてお願いされた。
すると、『拳聖ダンテ様』も、
「ああ、ズルいぜヒエン、アラン陛下、俺も是非お願いしたい!
このダルマも、どうかコリント流の一門下生に加えてやってくれねえですか?
俺が教えるより、アラン陛下が教える方がコイツの為になると思うんでさあ!」
大分酒が入っている所為か、かなり言葉が荒くなっているが、真摯な気持ちは伝わった。
するとアラン様は、
「問題無い!
元々、此処に居る全員はこのまま我等て国軍の旅路に、同行して貰うつもりだった、恐らくこの旅の間でも、皆は様々な経験をする事になるだろう。
それは、必ず諸君らの修行になる良い機会になる筈だから、大いに研鑽に励んでくれ!
さあ、そう云う固い話しは後にして、今宵は徹底的に飲んで大いに楽しもう!」
とジョッキに並々と注がれた良く冷えたエールを、グイッと飲み干して促されたので、
皆も続けてジョッキのエールを飲み干して、場は一層盛り上がり飲めや歌えやの宴会場と化した。
全員酔い潰れるまで飲む気になったので、羽目を外す者が続出したが、こういう楽しい時が人生には必要だと、心のなかでミーシャに謝って痛飲し、その気持良い酔いに身を任せた処で意識は切れて、全員翌朝をそのまま迎える事になった。