人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑨(人類銀河帝国 コリント朝元年)《スラブ連邦の現況》

 6月11日

 

 「・・・美しい・・・!」

 

 此れが、魔法都市『ザナドゥ』に有る王宮『クリスタル・キャッスル』を見た時の、素直な感想で有る。

 その壮麗さは、殆ど全体を構成するクリスタルの様な透明な構造体が、陽光を浴びて不可思議に反射する光と、精密な迄に彫り込まれた様々な模様(モザイクと云うらしい)によって構成された壁面は、思わず立ち止まって眺めていたい程だ。

 そんな全てが芸術作品の様な城の中を案内され、『賢王モルガ』15世の私室にアラン様と自分含む帝国上層部は通された。

 

 『賢王モルガ』15世・・・・・『魔法大国マージナル』の王位を継がれている、15代目の女王陛下で有る。代々世襲されたその名前は、『賢聖モーガン』殿の最初の御子で賢王となった初代国王に由来するそうだ。

 

 『賢王モルガ』15世は在位60年で年齢80歳の筈だが、見た目は50代の妙齢の女性に見える、きっと高等魔術等の恩恵が有るのだろう。

 

 「楽にして下さいな。此処は私の私室なので他の家臣や部下が、基本的に入ってはきませんから、密談には適しています。

 此れから会談する極秘会議には、非常に都合が良いのよ」

 

 と『賢王モルガ』15世は仰られた

 

 「・・・大変有り難い。

 昨日、引き合わさせて頂いた旧ルーシア王国王女『アナスタシア』殿との、質疑応答と資料の突き合わせで判明した幾つかの事実を、此処に居る全員に開陳して情報の共有を図るから、皆モニターに注目してくれ!」

 

 と言われたので、帝国軍上層部全員が壁面に設けられたモニターに注目し、スラブ連邦の現在の状況と、旧ルーシア王国の秘事について知る事になった。

 

 そもそも此のにセリース大陸に於いて遥か過去から、大陸の4分の1を占める北方とは、不毛の大地として昔はノーマンズランドと云われ、人が住むには適さない場所だった。

 だが、300年前に『魔法大国マージナル』で学んだ初代ルーシア王国国王は、『賢聖モーガン』殿と『守護竜アルゴス』殿から或るアーティファクトを預かり、そのアーティファクトによって北方に封印されていた、『システム・エキドナ』の封印を解いた。

 その『システム・エキドナ』とは、此のセリース大陸に於ける龍脈(レイ・ライン)の膨大なエネルギーを利用して、無限に増殖するMM(マイクロ・マシーン)の能力を使い不毛の大地の土壌を実り豊かな物に改善し、外敵である魔物や魔獣そして虫等(此処でアラン様は顔を顰めた)から守る守護者『ガーディアン』も生み出す、という至れり尽くせりの代物で、ルーシア王国は『システム・エキドナ』のお陰で、北方にも関わらず豊かな大地を手に入れて、人口を増やして行った。

 その恩恵は、周辺に生まれた国家に『システム・エキドナ』の端末を供与する事で、周辺国家にも徐々に波及して行くのだが、中々以前の厳しい暮らしから意識が抜け出せず、周辺国家には未だ農奴制度が残り、貧富の格差は変わらずに居た。

 

 そんな中以前説明して貰った事件で、ルーシア正教を乗っ取った『導師(グル)ラスプーチン』が生まれ、スラブ国を中心にしてスラブ連邦が成立して、ルーシア正教の説く処の、互いに助け合って生きている『共生主義』を廃止し、皆で共産して『導師(グル)ラスプーチン』に捧げるという『共産主義』という教えが主になり、その教えに従う狂信者と悍ましい化け物によって、次々と周辺国家はスラブ連邦に取り込まれ、3年前にはルーシア王国も滅ぼされた話しは、以前の説明で判ったが、問題は此処からだ。

 

 明らかに『導師(グル)ラスプーチン』は、ルーシア王国を併合した際に、『システム・エキドナ』を動かせるアーティファクトを奪い、そのアーティファクトの能力で守護者『ガーディアン』の最高峰である『テュポン』を生み出して使役しているのだが、王女『アナスタシア』殿によると、以前我々が倒した『テュポン』とは『システム・エキドナ』が作り出し、周辺国家に供与していた端末の一つでもあると云う事だ。

 という事は、あの神話の化け物の様な『テュポン』は、幾つかの周辺国家群に供与していた事を考えると、あれ一体だけでは無くて、『システム・エキドナ』が作り出せる、量産品に過ぎないという事なのか!

 

 その事実に帝国軍上層部全員が、暫くの間呆然としてしまった。

 だが、流石に如何に量産品とは云え『テュポン』はあれ程の巨体だったので、そんなに簡単には復元や再製は容易には出来ないらしく、スラブ連邦の首都で有る『エデン』では復活していない事が、アーティファクトを貸した『賢聖モーガン』殿と『守護竜アルゴス』殿は把握出来ているそうだ。

 それよりもアーティファクトを精査したことで、或る事実が判ったそうだ。

 実は北方には、『システム・エキドナ』とは別の或る封印が有ったのだ。

 それは、『システム・エキドナ』の様に人の営みを助けると云った様な、代物とは全く別であり、人に対して害しか与えないので、神が封印していた古代の怪物で有る。

 

 その封印されていた古代の怪物の名は、『クラーケン』!

 伝説でも船や海岸に住む人々を長きに渡り苦しめた、『海魔クラーケン』の封印を『導師(グル)ラスプーチン』は解放してしまった様なのだ。

 

 どうやら我等帝国軍は、次の戦いに於いて初の海戦を、伝説の『海魔クラーケン』と繰り広げる事になりそうだ。

 

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