人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑩(人類銀河帝国 コリント朝元年)《試合アラン様対アトラス殿》

 6月13日

 

 「・・・本当に良いのだな?小さきものよ、手加減は出来ないぞ!」

 

 とアトラス殿はアラン様に言われ、アラン様は、

 

 「全然問題ないぞ!

 むしろ何処まで手加減してやろうか、考えて居るところだよ」

 

 返答されたので、

 

 「良くぞ、ほざいた小さきものよ、

 全力で引き裂いてくれるぞ!覚悟しろ!」

 

 とアトラス殿は翻訳機越しに、猛烈なドラゴンの轟く雄叫びを上げた。

 其れに対して、アラン様は少しも揺るがずに、口元をニヤリと歪ませてとても楽しそうだ。

 

 と此処まで書いたが、やはり此処までの経緯を書かないと、後で見返しても意味不明なので、書いて置かねばなるまい。

 

 そもそもはアトラス殿が、見合い相手であるグローリア殿に対して、アラン様の能力への疑義を呈したのが切っ掛けで、アトラス殿とグローリア殿は双方の魔法合戦で、医療用『コクーン』で療養する事に2頭ともなっていたのだが、本日朝に2頭とも治療が完了して、医療用『コクーン』から出て来た。

 早速、アラン様始め帝国軍上層部の面々は様子を見に来たのだが、アトラス殿はどうしてもドラゴンが人間に協力する事に、納得出来ないらしい。

 

 其処で、アラン様が直々にアトラス殿に力を見せてやるという事となり、ワザワザ魔法都市『ザナドゥ』から遠く離れた、ドラゴン達用の演習場(広大な荒れ地)までやって来て、アラン様とアトラス殿の1対1の試合となった。

 

 アラン様は、空軍用の標準装備で有るオリハルコン製の軽装備と、故アンテス近衛騎士団長が使っていた魔法剣にて、相手するようだ。

 対して、アトラス殿は武装の類は一切行わず、自らの持つ爪と牙で相手するようだ。

 しかし、そもそもアトラス殿は古代竜(エンシェント・ドラゴン)で有るので、体長だけで現在のグローリア殿の25メートルを越える30メートルに達し、当然その手足と尾も応分に大きい。

 正直その大きさに対して、身長は175cmしかないアラン様は、見比べるとあまりな差に、普通人が見ていたら恐らく絶望するであろうが、は欠片もアラン様の勝利を疑っていない、寧ろアトラス殿がどの位持つかを予想し合っていた。

 因みに此の場に居るのは、アトラス殿側に『守護竜アルゴス』殿と合流した『賢聖モーガン』と『ケットシー128世』、そして『賢王モルガ』15世とそのお付きの方々と、旧ルーシア王国王女『アナスタシア』殿とその旧臣達。

 アラン様側には当然帝国軍上層部の面々とグローリア殿含む帝国軍のドラゴン達、ドラゴンとの対戦と聞いて見学に来た『剣聖ヒエン様』と『拳聖ダンテ様』、そして『剣王カイエン』と『拳王ダルマ殿』含む修行仲間20人、更にはトカレフ達海洋大国デグリート王国からの合流者に手の空いている帝国軍人200名程がやって来ている。

 

 そして此処で冒頭に戻り、

 

 未だにアトラス殿は古代竜(エンシェント・ドラゴン)で有る自分に対して、堂々と立っている目の前のアラン様を見て、違和感を感じていらしく、

 

 「・・・本当に良いのだな?小さきものよ、手加減は出来ないぞ!」

 

 とアトラス殿はアラン様に言われ、アラン様は、

 

 「全然問題ないぞ!

 むしろ何処まで手加減してやろうか、考えて居るところだよ」

 

 返答されたので、

 

 「良くぞ、ほざいた小さきものよ、

 全力で引き裂いてくれるぞ!覚悟しろ!」

 

 とアトラス殿は翻訳機越しに、猛烈なドラゴンの轟く雄叫びを上げた。

 其れに対して、アラン様は少しも揺るがずに、口元をニヤリと歪ませてとても楽しそうだ。

 

 「其れでは始めよ!」

 

 と『守護竜アルゴス』殿が宣言された。

 すると、スタスタとまるで友達に歩み寄る様に、何でもない様子でアラン様が正面からアトラス殿に近づく、流石に面食らったのか、暫く呆然とアトラス殿はしていたが、直ぐ目の前でアラン様が「掛かってこい」と言わんばかりに、にこやかに笑いながら手招きして挑発した。

 

 「ゴオッ!」

 

 との吐息と共に、鋭い右前足の爪が横からアラン様に襲いかかる。

 だが、アラン様は僅かに前に出て爪を避けると、そのアトラス殿の右前足の振りに身体を合わせ、その力を利用して身体を独楽の様に回転させた。

 

 「むうっ!」

 

 と不審げにアトラス殿が訝ると、次の瞬間回転していたアラン様は、その回転軸を傾けて斜めにアトラス殿の腹部目掛けて、流星の様な勢いで凄まじい回転蹴りを打ち込んだ!

 

 「ウゲエエーー!」

 

 とアトラス殿はドラゴンとしてあるまじき事に、吐瀉物を撒き散らしながら20メートル程後退して、信じられないものを見る目付きで、アラン様を見た。

 アラン様は蹴り終わった場所で、またも笑いながら手招きしている。

 

 「フンッ!」

 

 と今度は、その太い尾を真横からアラン様に向けて、薙ぎ払った。

 その尾をアラン様は、スレスレに下から搔い潜られると、走り抜けて行くその尾に向けて、方向をそのままに手を添えて気合を発した。

 

 「発っ!」

 

 すると尾は振るった時の倍の速度で振り抜けてしまい、そのあまりの勢いにアトラス殿は、尾に引きづられるようにひっくり返ってしまった。

 

 「うぬうううーーっ!」

 

 と呻きながらアトラス殿は立ち上がり、アラン様を見たが、その瞬間アトラス殿のドラゴンの身体は盛大に震え上がった。

 そう、恐らく生物の本能として眼の前に居る存在が、自分より明らかに強者であるという事実が感じられ、恐怖したのだ。

 だが、アトラス殿はどうしても其の事実が認められないのだろう、

 

 「認めん!認めんぞ!古代竜(エンシェント・ドラゴン)で有る自分が、この様に小さい生き物に過ぎない人間に負けるなど、有ってはならない!有ってたまるかあああーー!」

 

 と吠えて翼をはためかせて、直ぐ側の海上に浮かぶと、轟々と息を吸い始めた。

 ブレスを吐くつもりなのだろうが、其れは悪手だと帝国軍上層部の面々は思ったが、他の面々は緊張した様だ。

 

 「ゴオオオオオーーーーーッ!!」

 

 とファイアーブレスを、アラン様に向かって猛烈な勢いでアトラス殿は吐いた!

 しかし、アラン様は少しも慌てずに魔法剣を掲げると、そのファイアーブレスに向けた、

 すると魔法剣はそのファイアーブレスをまるで息を吸い込む様に、尽く吸い尽くした!

 

 「何だと?!」

 

 とアトラス殿が驚愕したが、

 

 「・・・どうやら期待外れの様だ、魔法力は膨大だが、圧倒的に戦闘経験が無さ過ぎる。

 まるで素の能力に磨きが掛けられていない、『守護竜アルゴス』殿、どうやら甘やかせ過ぎた様ですな!」

 

 とアラン様は『守護竜アルゴス』殿に、苦言を呈された。

 『守護竜アルゴス』殿は爪で頭を掻いて、

 

 「・・・お恥ずかしい話じゃが、アラン陛下の見立て通り、甘やかせていたようじゃな。

 アラン陛下引導を渡してやってくれまいか!」

 

 とアラン様に頼まれたので、アラン様は頷くと、

 

 「・・・さて、鍛え直す意味合いでも叩きのめしてやろう、覚悟は良いか?」

 

 とアトラス殿に尋ねた。

 アトラス殿はブルブルと身体を怒りに震わせ、

 

 「・・・・・あり得ない!有り得てたまるかあああーーー!古代竜(エンシェント・ドラゴン)がひ弱な生き物で有る人間に負けるなどと、絶対に認めんぞーーー!!」

 

 と吠えて大きな口を開いて、猛烈な勢いでアラン様目掛け突っ込んで来た!

 

 「そうか、そのひ弱な人間も鍛え上げれば、神にも届く事を見せてやろう!」

 

 と皆に聞こえる様に叫ばれると、アラン様はそのままアトラス殿目掛け走り出し、その勢いのままに海面を走り空中のアトラス殿に向かって跳んだ!

 

 両者が交差すると見えた瞬間、突如アラン様が縦回転を始めて、勢いに急ブレーキが掛かった。

 するとアトラス殿の大きな口は、アラン様の手前で閉じてしまい、アラン様をその顎で喰らえ無かった。

 アラン様はその縦回転の勢いを少しも減じずに、右の踵落としを目の前で閉じている大きな口の上顎に炸裂させた!

 「ゴッ」とアトラス殿の上顎が沈み込みむと、次の瞬間下顎が猛烈な勢いで跳ね上がった!

 何故ならアラン様は、踵落としをしながらも回転を続けて、その回転軸を勢いを殺さずに逆回転に転じて、下顎を下から凄まじい勢いで蹴り上げたのだ!

 

 アトラス殿はこの時点で白目を剥き、意識を失っていたが、アラン様はアトラス殿の首元に有る一枚の鱗目掛けて、ファイアーブレスを吸い込み真っ赤になった魔法剣を振り下ろし、見事に切り落とした。

 

 すると、完全に力を失ってアトラス殿は、海面に叩きつけられて、そのまま海中に沈み込んで行く。

 『守護竜アルゴス』殿が、ゆっくりと飛び立ち海中に沈んだアトラス殿を引っ張り上げたが、完全に失神しているアトラス殿は呼吸こそしているが、白目を剥いたままだ。

 

 「勝負あり!勝者アラン陛下!!」

 

 『守護竜アルゴス』殿が、アラン様の勝利を宣言されたが、見学していた者達の内帝国軍の者は歓声を上げたが、他の者達は咳き一つ無い。

 まあ、無理もない、如何にモニターで今までのアラン様の戦闘記録を見ていようと、生の戦闘、それもドラゴンと生身で正面切って戦う人間など、アラン様以外に居る訳が無く、然もアラン様は『循環魔法』以外殆ど魔法を使用しなかった。

 横に目をやると、『剣聖ヒエン様』と『拳聖ダンテ様』は深く頷き合って居られるが、『剣王カイエン』と『拳王ダルマ殿』含む修行仲間20人は、皆同様にハラハラと目から涙を流している。

 何となく気持ちを察しながら、涙の理由を聞くと『剣王カイエン』が、

 

 「・・・武術とは、此処までの高みに到れるのですね・・・!

 私の考えていた武の頂点とは、山登りで云えばまだ麓から、中腹にも差し掛かっていない程度の代物だった訳だ・・・」

 

 と感動した様子で呟くと、『拳王ダルマ殿』も、

 

 「体術とは、此処までの動きが可能なのですね!

 格闘では、魔物や魔獣には通用せず、ただ人との戦いにしか役に立たないと思って居りましたが、完全にその間違いを悟らされました!

 極めれば、格闘技でも充分に魔物や魔獣にも通用するのだと、アラン様は古代竜(エンシェント・ドラゴン)相手に照明して下さった、おおっ、何と素晴らしいのだろうか!我等はこの武神その人の如き方から武術を学べるのだ!此の様な奇跡は100回生まれ変わろうと起こるものでは無い!」

 

 と周りの修行仲間20人と『剣王カイエン』に言い、皆も「その通り」と頷き合っている。

 正直、アラン様の様に古代竜(エンシェント・ドラゴン)に余裕で勝つのは、生涯賭けて修行しても無理だろうが、ドラゴンを相手に出来る様になる位ならば目指せるだろうから、この新しい仲間達を心から応援しよう。

 

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