人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月2日
大量のイリリカ王国製の武具・武器を満載し、更に帝国での技術支援をする熟練の鍛冶職人と、新規の技術習得を目指す新人達の合計300名は、艦隊の物流支援に来た、トレーラーギルド所属のトレーラー野郎達が運転する50台に分乗して、一路帝国首都で有る帝都コリントを目指して、イリリカ王国を出発した。
このイリリカ王国での滞在期間中も、アラン様は精力的に動き、イリリカ王国・魔法大国マージナル・ザイリンク公国・海洋大国デグリート王国の新しい形での物流システムの構築、そしてその取引でも帝国の関係する物は、全てポイント決済にして、各国に置いた帝国バンクにて、ギニーとの為替レートは1対1のままで円滑に商売が出来る様に、全ての国で身分確認と保証の担保としてのカード発行も行っていく。
何れは、其々の国にも繋がる魔導列車への搭乗パスポートにもなるので、恐らく全ての民が欲しがるだろう。
そんな忙しい間も、暇を見つけてはアラン様はアトラス殿を鍛えるのに余念が無い。
或る時はご自分がアトラス殿に乗り、限界以上のスピードや錐揉み回転をさせるなど、アトラス殿がゲエゲエと吐くまで飛行させたり、グローリア殿にアラン様が憑依(ダイレクト・モーションキャプチャーと云うらしい)して格闘し、散々に尻に敷いたりした。
此処まで己の未熟さをアラン様によって思い知らされ、更に最初の試合の時に切り落とされた『逆鱗』の効果で、完全にアラン様をアトラス殿を認めた。
いや、認めると云うレベルでは無くアラン様に心酔したと云った方が良いだろう。
アラン様との訓練が無い時は、アラン様のこれ迄の戦いのムービーや話し、更にはコリント流の剣術・槍術・格闘技も知りたがり、終いには帝国軍人と一緒に帝国軍訓練をし始めた。
その甲斐あって、アトラス殿はメキメキとその実力を向上させて行った。
7月10日
漸く2ヶ月間の長期出張を終えて、帝都コリントに到着した。
久し振りに見る帝都は、全艦隊の到着を大歓声で迎えてくれて、人々は帝国旗たるコリントの紋章を縫い付けた旗を盛んに振っていた。
正直そんなに長い出張では無いのに、帝都コリントに郷愁を感じるのは何故だろうか?
やや疑問に感じながらも、我が家に帰ると家族全員が自分を迎えてくれて、その理由が判った。
此処だけに自分の魂の安息出来る家族が居り、自分は此の場を守る為にこそ戦っているのだと心底理解出来たからだ。
きっと、今回帰還した全員が同様な思いを抱いたのではないだろうか、抱きついて来たミーシャをお腹の辺りに気を付けながら抱きしめて、家に入った。
7月13日
3日間の休養を終えて、空軍ドーム(新しく出来た空軍専用のドーム)に出向き、留守中の出来事や書類作業を完了させて、午後にやって来られたアラン様とクレリア様と共に、アトラス殿の武装装着に立ち会う事になった。
アトラス殿の武装は、対『テュポン』戦用にグローリア殿に換装した『機龍(ドラグーン)』モードを基礎とした、オリハルコンとアダマンタイトをこれでもかと鍛え上げ、対強敵用に特化した物で、両肩にフォノンメーザー砲を装備し、背部には避雷針パーツ5基を装着し、両脇には専用の『グングニルの槍』を装備している。
つまりこの標準(スタンダード)モデルの段階で、凡そグローリア殿の『機龍(ドラグーン)』モードの1.5倍の戦闘力を備えている。
更にこのアトラス殿の武装には標準(スタンダード)モデルの他に、海上・海中戦闘用の『海竜(リヴァイアサン)モード』が存在し、『海魔クラーケン』達との海戦を想定している。
アトラス殿は、標準(スタンダード)モデルの武装を身体に装着し、その着け心地を確認して行く。
どうやら納得したらしいアトラス殿は、アラン様とクレリア様の前に進むと、
「アラン皇帝陛下、クレリア皇妃陛下、私に此の様な素晴らしい武装を与えてくれた事に、大変感謝します。
此の上は、此の武装に恥じない働きを以って報いたいと思います。
どうぞご期待下さい!」
と深々と頭を下げて感謝された。
アラン様とクレリア様は深く頷かれ、クレリア様は、
「なんて礼儀正しいドラゴンなのかしら、帝国空軍のドラゴン達に見習わせるべきだわ!」
とこれ迄の経緯を知らないが故の、感想を述べられた。
なんとも云えない空気が漂う中、アトラス殿が機動訓練に入る。
「・・・・・アトラス、『機龍(ドラグーン)』モード」、出る!」
と決然とした掛け声と共に、オリハルコンとアダマンタイトによる武装を光り輝かせて、アトラス殿が機動訓練を開始した。
その機動速度は、アッと言う間にドームの天蓋部分に有り、開いている開閉口を飛び出し、かなりの高空まで達した。
そして望遠している観測モニター越しに、マッハ3以上の巡航速度で縦横無尽に飛び回り、やがて超高空でピタリと止まると、翼を大きく広げその翼に太陽の光を収束し始め、そして、
「プロミネンス・フレアー!」
とアトラス殿が叫ぶと、その翼から凄まじい高熱ビームが、天に向けて放たれた!
予め決められていたのだろうが、もし地上に向けてその高熱ビームが放たれていたら、大惨事になっていた事だろう。
だが、想定されている敵の事を考えると、この位の威力は当然必要になる相手で有る。
何れは、ガイにも装備して貰いたいと考え、空軍の攻撃訓練はこの凄まじい攻撃も念頭に入れて、プランを練ろうと思った。