人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月25日
アラン様が、俺や『ホシ』達トレーラー野郎達と『アルムおんじ』達『魔導列車』組そして魔術ギルドのカーラギルド長といった、一癖も二癖もある面子を集めて、執務ビルの大会議場で会合が開催された。
「皆、我がコリント領発展の為に日々各分野にて活躍して頂き、領主としてこのアラン、大変感謝している!
皆、ありがとう!」
と深々と頭を下げられて感謝されたんで、俺達も恐縮しちまってテーブルに頭が着くくらい下げちまったぜ。
そしてアラン様は、頭を上げられると、
「さて、このまま皆を労う為に宴会をして慰労したい処だが、先ずは仕事の依頼の話しをしよう、ボッド50号、資料を出してくれ!」
とアラン様は言われ、ボッド50号がモニターに非常に巨大な施設の完成予定図が映し出された。
それはドームを半分にして、巨大な港湾施設と船のドッグを入れた様な建造物だった。
「色々と疑問に思っているだろうから、最初に名称を述べて置こう。
此れは、陸上港湾施設と陸上船のドッグの予定図だ。
そして此れ等を図に有る通りに、『魔の大樹海』の玄関口付近のこの辺りに建造する事になる!」
とアラン様は、モニターに表示された地図を示し説明された。
我々も位置関係とどういった構造物かは、把握できたが用途が判らないので、質問してみると、
「・・・其れではこの設備が何の用途で必要なのか?
説明する為に、この立体プロジェクターを見てくれ!」
と言われ、ボッド50号が立体プロジェクターを起動し、其処には何だか正方形の乗り物が映し出されたが、縮尺を見て驚いちまった!
何とコイツは、全長200メートルに及ぶ巨大な乗り物で、仕様書を確認すると、凄え事に浮く事が出来るらしい。
半ば呆気にとられてると、アラン様は、
「驚くのも無理は無い。
しかし、理論は確立しており実用は可能なのだ。
実物を見せよう、ボッド50号隣室から搬入せよ!」
とボッド50号が隣室の扉を開けると、1メートル四方の先程立体プロジェクターで見せられた乗り物の模型が、確かに浮いたまま、大会議場に入ってきた。
みんな驚いていたが、元々研究や開発そして工夫が好きな連中ばかりだから、直ぐに模型を取り囲み、あーでもないこーでもないと言い合って、観察し始めた。
しばらく喧々諤々と議論しあい、ある程度落ち着いた処を見計らって、アラン様は、
「これこの通り、実際に浮かび上がらせ進ませる事は可能で有り、後はこれを予定のサイズ通りに建造出来る、ドッグを建築する事になるのだが、其れについて是非皆の協力を取り付けたい」
と仰られ、
「この乗り物の名は、『カーゴシップ』!
大規模な構造物や建築物を、そのままの形で移送する事で、現地での建築や移築をせずに済ませられる代物であり、建築コストの軽減を図る物だ!
皆もガンツでのドーム建築の失敗と、その問題点は把握してるだろう?」
とかなり前の話しだが、ガンツの魔導列車の駅設営に伴う、ドーム建築に於ける失敗に付いて話された。
「あの失敗の根本原因は、現地の職員と建築従事者が、『魔法炉』への理解が無いのに、無理に解体した事だ。
未だコリント領の住民と、他の地域での教育格差は如何ともし難く、何れは解消出来るだろうが、しばらくは掛かるだろう。
それを待っていては、予定の各大都市との魔導列車のレールと駅の、敷設という目的は頓挫したままになる。
ならば大型の『魔法炉』を小型化し、更に完成品を作り、それを組み込んだ小型のドームをそのまま運んで、現地に移送出来る乗り物を建造してしまおうと考えた訳だ、理解出来たかな?」
と説明されたが、発想の突飛な事と、それを実際に作ってしまおうという、気宇壮大さは、流石はアラン様だ頭が下がるぜ!
「それで俺らは、どう協力すれば良いんですかい?」
と俺が尋ねると、
「ウムッ、ガトル殿には以前渡して有った資料に記載してあった重機の内『クレーン車』や『ダンプカー』そして『ショベルカー』の大型化と、クレーン部分を『カーゴシップ』の四隅に付ける図案を作成し、実際に製作して貰いたい!」
と依頼され、其れが可能かどうか検討を頭の中でして、
「・・・3ヶ月貰えれば可能ですぜ・・・」
と答えたら、アラン様は大きく頷かれて、
「ホシとジョナサンには、この『カーゴシップ』を運転出来る要員の選抜と育成を頼みたい。
大型トレーラーを乗り回す貴方方以外に、適任者は居ないし、予定しているベルタ王国、セシリオ王国、アロイス王国の地形を誰よりも把握しているのは貴方方だけなのだ、是非頼む!」
とホシとジョナサンに頼まれ、ホシとジョナサンも、
「任せてくだせえ、必ずお眼鏡にかなう奴等を鍛え上げて見せやすぜ!」
と胸を叩いて、受けあった。
其れに頷きアラン様は、
「アルムおんじとハイジには、小型化したドームの中に入る駅と扇形庫を、現地で効率的に展開し運用出来る様な検討図案の作成と、どのくらいレールと敷設資材が必要かの計画資料を策定して貰いたい!」
とアラン様が依頼されると、アルムおんじはハイジと大雑把に話し合い、ハイジが、
「・・・アラン様、取り敢えず『カーゴシップ』の予定仕様書と、揺れ幅の資料を提出して下さい。
そうして頂ければ、ある程度の見積もりは出せます!」
と答えたので、
「そうだな、あくまでも予定の資料は出せるので、頑張って資料を出して頂ければ、『カーゴシップ』の仕様そのものを変更する事も視野に入れているので、宜しく頼む」
と仰られたので、アルムおんじとハイジも頷いた。
最後にアラン様は、魔術ギルドのカーラギルド長に向かい、
「カーラギルド長、魔術の師匠である貴方にこの難題を依頼するのは、大変恐縮なのですが、どうしても『魔法炉』の小型化は成功させて貰いたいので、お願いします!」
と頭をカーラギルド長に深々と下げられた。
カーラギルド長も頭を下げて礼を返し、
「アラン総帥!魔術の師匠である私に任せなさい!
実は、以前から『魔法炉』のあまりの大きさに、問題有りと考えてたし、私なりの小型化の腹案も有るわ。」
其れに最近知り合った、セシリオ王国のヒルダさんから色々な知見を得られたから、試してみたい事がいっぱい有るの。
必ず要望に答えて見せるわ!」
と自信満々に返事してアラン様を満足させている。
実際、このカーラギルド長の功績は、俺が知ってるだけでも、魔物からの魔石回収を容易にした魔道具を始め、魔石のリサイクル化の効率カートリッジ化、回復薬を飲みやすいドリンク化した等の様々な事例が有る。
全く大した女だぜ!
会合が閉会し、カーラギルド長がサッサと研究したいからと帰って行ったが、他の面子はアラン様と一緒に、行きつけの飲み屋に向かい、宴会に突入した。
全く、アラン様という御仁は話せる御方で、お偉い総帥という立場にも関わらず、こんな庶民の通う飲み屋にも普通に入られて、焼き鳥を焼いている親父に、塩のもっと旨くなる振り方や、焼き方のコツを教えて、実際に焼いてみせて感心されているし、新しいメニューとして『つくね』という串のレシピを書いて渡して、親父に感謝されている。
ホシとアルムおんじも、酒が入ると途端に饒舌になるから、アラン様と馴れ馴れしく接してるが、アラン様はその態度に欠片も嫌がられず、むしろ楽しそうに応じられている。
この御人は、やろうと思えばどこまでも礼儀正しい生粋の貴族を演じられるが、こういう場ではかなり砕けた対応が出来て、正に万能の御人だ。
だけど当然アラン様は、クレリア姫様とご結婚される事で、何れは王族になられて、こんな風に庶民と飲む機会は少なくなるに違い無い。
という事は今の俺達は、とてつもなく幸せなのかも知れねえな、と心地よい気分になりながらアラン様と酒を酌み交わした。