人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月7日
今、俺の目の前に、異様な迫力を漲らせた男が居る!
この男を連れて来る為に、急遽グローリア殿に乗ってコリント領に戻られて、隣に立って居られるアラン様も、苦笑しながらお手上げといった感じでゼスチャーされて、俺の困惑は更にその度合を深めちまった。
「貴方が、あの様々な重機と車両を作り上げた、稀代の技術者にして鍛冶職人であるガトル殿ですな!
お目にかかれる日を、待っていましたぞ!
貴方の協力が無ければ、某の望む船は建造出来ないので、是非これからは懇意にさせて頂きたい!」
と初っ端から、凄え勢いで両手で俺の両手を掴みブンブンと振り、願い出て来やがった。
呆気にとられたままの俺を救うべく、アラン様は、
「・・・あー、いきなりで申し訳無いが、ガトル殿。
彼の名は、『ドレイク』。
セシリオ王国のオスロ港で船大工をしていたのだが、あまりにも独自の構造の船を船主や領主のオスロ公爵に提案されていて、そのあまりの高額の提案に全て却下され、自分の提案の高額な部分を直すべくセシリオ王国の魔術組織『氷雪魔術師団』の門を叩き、色々な魔術手法や錬金術を学んだそうだが、逆に更に高額になる理論と手法が身に付いてしまい、今の時代には自分の理論を活かせる場所は無いのか?とオスロ港に戻り腐っていたそうだが、我々がセシリオ王国を解放してオスロ港も海賊の手から奪い返し、トレーラーやフォークリフト等を目にした『ドレイク』殿は、『総帥府』にやって来て私に思いの丈をぶちまけたのだよ。
当初は意味不明で、やたらと意気盛んさが判っただけだったが、『ナノム玉』を服用させヒールと回復ドリンクにより体調を整えさせてから、翌日に再度話しを伺うと彼の先進的な概念と技術力が判明したのだよ。
恐らく彼の考える概念と技術は、この時代の凡そ300年後に該当する程の代物で、その先進性故に他の者には理解し難い発想だったに違いない。
だが、我等の技術力と魔道科学理論ならば、彼『ドレイク』の思い描く艦船を建造出来る筈だ!
どうかガトル殿、彼に協力してくれないだろうか?」
と仰られたので、俺としても断る訳には行かねえんで、
「判りやした!他ならぬアラン様のお頼みだ!
快くお引き受け致しやす!」
と承ると、あからさまにアラン様はホッとされて、
「其れでは宜しく頼む!私はこのまま蜻蛉返りして、今後に備えねばならないのでね」
と言われ、グローリア殿に乗って旧セシリオ王国に帰って行かれた。
本当にお忙しい中、無理に帰られたんだろうな、全く頭が下がるぜ。
「ところで、お前さん『ドレイク』と言ったか?
どんな船を作りてえんだい?」
と聞いてみると、ずっと俺の製図板に載ってる、次期『カーゴシップ』の図案を食い入る様に見ていた『ドレイク』殿は、顔を上げて、
「それは当然既存の艦船と違い、己の動力で縦横無尽に動き、ありとあらゆる乗り物よりも早く、そして頑丈であり、其の艦船一隻だけで戦局を変え得る船ですよ!」
と抜かしやがった。
「・・・つまり軍船を作りてえんだな、そうするとやっぱりオスロ港の様な、海の港の方が良いんじゃねえか?」
と言うと、『ドレイク』は首を振ると、
「いえ、私の作りたい軍船は、この(次期『カーゴシップ』の図案を指差し)『カーゴシップ』の延長線上に有る、陸上を浮遊して進む艦船になります!」
まあ、アラン様が俺に『ドレイク』殿を預けていった段階で、陸上港湾施設とドックで陸上浮遊タイプの船を作らせるんだろうな、とは判ってたんだがな。
だが、てっきり『カーゴシップ』と同じ輸送船だと思ってたんだが、軍船とは予想して無かったぜ。
「・・・それで腹案は、有るのかい?」
と尋ねたら、突然満面の笑みを返して、グローリア殿で運んで来た荷物の中から、膨大な艦船の資料を出して来やがった。
「・・・・・・こっ、これは・・・・・!」
思わず絶句しちまったが、手渡された資料には、とんでもねえレベルの技術がてんこ盛りの製図や完成予想図、そして必要な資材の詳細な資料が記載されてやがった!
《コイツ、一種の化け物だ!》
と腹の中で呻きながら、資料を読み耽っていると、書かれている艦船の種類が複数有り、然も用途が完全に分けられている事に気づいた。
その用途の不明な処を尋ねると、
「嗚呼、やはりお気づきになりましたか。
実はオスロ港でガトル殿のご子息が、ワイバーンで海賊の船を襲撃して見事に成功させているのを、遠目で見学させて頂き、艦船の急所は上空からの攻撃であると痛感させられまして、ならば航空戦力たるドラゴンやワイバーンを搭載し、更に積極的に運用出来る艦船を思いついたんですよ!」
とにこやかに答えてくれた。
アッサリと言いやがるが、この『ドレイク』という男、まだ見てねえ筈のエレベーターや俺にも判らねえ『カタパルト』なんて物をごく当たり前の様に組み込んだ製図を、綿密な数値表と予定魔法出力まで記載してやがる。
取り敢えずこの工場近くのスパに連れて行って寛がせてやり、従業員寮に荷物を運んで、同僚になるドップやハインツ達を紹介する為に、アラン様とも一緒に行った飲み屋で歓迎会を開いてやった。
どうやらこの『ドレイク』という男は、オスロ港で飲んだくれていたという話し通り結構な酒好きで、アラン様がカトル殿と推し進めてる、幾種類かのお酒が相当お気に召したらしく、しこたまに飲まれて皆に思いの丈をぶちまけた!
「某は、貴方方が本当に羨ましい!
アラン総帥の庇護のもとで、ご自身の望み通りの作品を幾つも作られて、その全てがこの世に無かった物ばかりだし、然もその費用や資材たるや、他の国の技術者や錬金術師が望んでも絶対に得られないレベルだ。
他国の者が、この事実を知ったら恨まれますぞ!」
と赤くなった顔を更に紅潮させながら、喋ってるが、
「何言ってんだよ!
『ドレイク』殿こそ、これから費用や資材を、使いたい放題消費出来る立場になるんだぜ!
あんたの方が、此れからは他国の技術者から嫉妬されまくるだろうよ!」
と返してやったら、本当に嬉しそうに笑い始めて、そのままバタンキューと仰向けに倒れちまった。
仕方ねえから、俺とドップで肩を貸して従業員寮に連れて帰ったが、道中寝言でひたすらアラン様に感謝してやがった。
まあ、これから長い付き合いになりそうだし、アラン様に俺達と同じ気持ちで居てくれるのはありがてえぜ。