人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
8月7日
クライナ公国の中心に有る大都市『エリコフ』を包囲しているスラブ連邦軍20万と、セリーナ、シャロン両准将が率いる高機動軍と重機動軍合わせて6万が衝突した。
セリーナ、シャロン両准将は艦隊を横1列に展開してから、立体プロジェクターを使用しスラブ連邦軍20万に対し『エリコフ』包囲を即刻止める様に勧告した。
スラブ連邦軍の主力は、MMで構成された疑似魔獣の中でも通称『タンク』で有る。
全長5メートル程の、まるで鉄の塊の様な鎧を着込んだ犀に似た魔物の背中に砲塔が載っており、その砲塔から鉄の砲弾を城壁に撃ち込んでいて、破壊された城壁の穴を『エリコフ』の義勇兵達が必死に塞ぐ事で、何とか防いでいる状況なのだが、当然曲射による都市中心部への砲撃も行われていて、ドローンでその様子は西方教会圏に放送されていて、放送を見ている西方教会圏の一般市民はスラブ連邦軍の行為に対して、怨嗟の声を上げているのだ。
だが、勧告している最中にスラブ連邦軍が帝国軍艦隊に向け攻撃して来た。
『タンク』の砲身を旋回させると城壁攻撃を止め、帝国軍艦隊に向けて砲弾を浴びせて来たのだ。
双方の距離は凡そ1キロメートルなので、この距離を踏破する射程距離は大したものだが、当然帝国軍艦隊の主砲の方が射程距離と威力は勝る。
ある程度艦隊に砲弾は届いたが、この距離では『バリアー』を張らずとも船体表面で、敵の砲弾は弾いてしまった。
暫くの後、陸上巡洋艦『ドレッドノート』と『ジャンヌ・ダルク』の2隻と陸上フリゲート艦4隻による魔導艦砲が火を吹いた!
使用される弾頭には、リサイクル限界を越えた魔石群に過剰充填した『ファイアーグレネード』の魔法。
こうする事で、着弾した砲弾は『ファイアーグレネード』を炸裂させると、飽和した魔石群はリサイクル限界の為に粉々になるのだが、その歳の作用で連鎖爆破する事になる。
つまり、着弾した瞬間に砲弾は周囲一帯を燃焼爆破してしまうのだ!
この強烈極まりない攻撃は、生きた人間にはとてもでは無いが使用できない。
しかし、そもそも対峙しているスラブ連邦軍20万には、戦奴隷は居らず、全てMMで構成された疑似兵士と疑似魔獣のみなので、遠慮会釈してやる必要は全く無い。
帝国軍艦隊による一斉射を3度繰り返すと、どうやら大半の『タンク』は沈黙した様だ。
此処で帝国軍艦隊の後方に控えて居た、戦闘バイクを中核とした高機動軍と重機動軍合わせて約5万が、帝国軍艦隊の左右から戦場に躍り出た!
先頭には、セリーナ、シャロン両准将が駆る『ディアブロ号』と『ジャッジメント号』が親衛隊のホバークラフトバイク5台ずつと共に鏃の戦隊を組み、2重鋒矢の陣の陣形で突進した!
対するスラブ連邦軍は、前回のマジノ線攻防戦と同じく、戦闘陣形を一切取らずに無秩序に向かって来る!
タイミングを図った艦砲が、スラブ連邦軍の中段辺りに炸裂し、高機動軍と重機動軍からも一斉に魔法を込めたバズーカ砲から、魔法弾がスラブ連邦軍前面に放たれた!
「ドガガガアアーーーーンン!!」
とスラブ連邦軍前面で魔法弾が炸裂し、その間隙をセリーナ、シャロン両准将が駆る『ディアブロ号』と『ジャッジメント号』が正に鏃となって、突っ込んだ!
鎧袖一触と表現する他無い程の、見事なスラブ連邦軍に対しての分け入りを成功させて、セリーナ、シャロン両准将が駆る『ディアブロ号』と『ジャッジメント号』を先頭に、高機動軍と重機動軍はスラブ連邦軍を蹴散らして行く。
そしてスラブ連邦軍が、高機動軍と重機動軍によって蹂躙されている間に、大きく迂回運動して大都市『エリコフ』の反対側を目指していた、カイン少佐を中心とした重装機動軍は、残っていたスラブ連邦軍1万に向かって行く。
カイン少佐のドリルバイクは、アダマンタイト製のドリルを黄色く光らせながら回転させ、軍団全体に『サンダー』の魔法を纏わせると、カイン少佐のドリルバイクを先頭にスラブ連邦軍1万に突っ込んだ!
スラブ連邦軍のMMで構成された疑似兵士は、サンダーの魔法を浴びると、MMでの構成が破綻するらしく、次々と崩れ去って軍団を維持出来なくなり、遂には全て崩壊してしまった。
それを城壁の上から見ていた『エリコフ』の民は、歓声を上げると直ちに城門を開けて、カイン少佐率いる重装機動軍を迎え入れた。
こうして、長い間包囲されていた大都市『エリコフ』は、漸く包囲から解放されたのである。
その間も、高機動軍と重機動軍は残りのスラブ連邦軍に対して、殲滅戦を展開し、尽く塵と化すまで容赦なく殲滅して行った。
4時間に及ぶ殲滅戦を終えて、大都市『エリコフ』に高機動軍と重機動軍は入城すると、早速、帝国軍艦隊に積んでいた食料品と医薬品等を『エリコフ』の住民に配給し、所属の医療部隊による臨時病棟を設営し、怪我人と病人の治療を開始した。
『エリコフ』の住民は、我等帝国軍に感謝しながら、久々に訪れた爆撃の音のしない夜に、食事を終えた人々は深い眠りに落ちて行った。
8月9日
丸一日完全に眠る事で、ある程度体力の戻った『エリコフ』の住民達に、セリーナ、シャロン両准将は、この『エリコフ』に向かって、首都キエフに駐屯していたスラブ連邦軍30万が進軍している事と、クライナ公国西端の都市『リビン』に向かえば、マジノ線までの避難民を安全に通す人道回廊を構築している事を説明した。
更に、今現在この『エリコフ』に向かい、『ゼレンスク』殿の反乱軍と帝国軍が護衛する大規模なトレーラーと車両による輸送部隊が近づいている事を知らせ、なるべく早く『エリコフ』を脱出し、その輸送部隊と合流して欲しい事を伝えた。
『エリコフ』の住民達は、故郷で有る『エリコフ』を離れる事に、複雑な想いを寄せながらも、此処で死んでは、元も子もないと理解して、帝国軍と共に怪我人と病人を気遣いながら、輸送部隊の来る西に向かい『エリコフ』の住民約100万人は、ゆっくりだが確実に歩み始めた。