人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
8月17日(中編)
ダゴンはひたすら海魔クラーケン共を喰らい続けていて、正直我等帝国軍に対しての行動を見せないので、コイツ本当は無関係なのでは?との考えが浮かぶ。
そもそもダゴンを呼び出したインスマウス人はどうしたのか?と大勢の半魚人共に視点を移すと、何故か半魚人たちが居た場所には、うず高く積み上がった全長2キロメートル程の黒い物体が有った。
「えっ?!」
誰かが呟いた声が、レシーバー越しに聞こえたから、他の誰かもあの黒い物体に気づいたのだろう。
「ビキッ!」
と音を立てて、その黒い物体は割れて其処からゾロゾロと、大きさ30メートル程の『ヒュドラ』が大量に出て来た。
《そう云えば、マジノ線でも『ヒュドラ』が居たなあ》
とのんびりとした感想が、自分の中で生まれたが、どうやらこの時はあまりの急展開に、落ち着いた思考が出来ず、或る種の思考の飽和状態になっていたのでは無いだろうか?
すると、『ヒュドラ』達が出て来て割れていた黒い物体がザワザワと蠢いたかと思うと、突然形を失い黒いスライムの様なアメーバ状になってヒュドラ達の身体に纏わりついた。
《アッ思い出した、この展開は覚えが有るぞ》
とマジノ線での出来事を思い出しながら、観察していると。
案の定、あの時の様に黒いスライムの様な塊はヒュドラ達を取り込むと、頭数が半分になり前回と同じで、ヒュドラの尻尾部分で2頭のヒュドラが融合していて、更に50メートルずつに巨大化して足まで生えていた。
だが、この怪物の対処方は既に判っているから、異形ヒュドラ達が一体で計18の蛇の口から、光線の様なブレスを吐きガイ達ドラゴンに攻撃して来た!
当然前回の教訓が有るから、帝国軍艦隊からの弾頭を『ヴァルキリー・ジャベリン弾』に装填した集中砲火を、異形ヒュドラ達に浴びせた。
前回と同じく『ヴァルキリー・ジャベリン弾』のお陰で、異形ヒュドラ達のバリアーは解除され帝国軍の攻撃が届く様になった。
しかしあまりにも数が居るので、応援部隊として陸上空母3隻に分かれて待機していた、ベック達のワイバーン部隊に出撃させ、異形ヒュドラ達の相手をさせて、ドラゴン部隊はダゴンへの警戒にあたった。
艦砲とワイバーン部隊による凄まじい十字砲火を浴びて、異形ヒュドラ達は燃えて行く。
《結局前回と同じか・・・》
と安心していた自分を嘲笑うかの様な変化が、異形ヒュドラ達に生じたのは、その少し後だった。
燃えていた異形ヒュドラ達は、燃えながらまたも突然形を失い黒いスライムの様なアメーバ状になって、集合し始めた!
《前回と展開が違う、ここからどうなるんだ?》
と薄気味悪くダゴンを警戒しながら、異形ヒュドラ達を横目で観察していると。
段々と、微光を放つ広大な凡そ3キロメートルに及ぶ灰色の原形質状の流動体に変わり、其処から無数の触手の様な頭が生え始めた!
その頭には、人間・オーク・オーガ・グレイハウンド・ゴブリン・サーペント・ワイバーン・ドラゴン・コボルトといった、この大陸に存在する生物の頭が、無数に生えている!
そして暫くすると、その無数の頭は、奇怪な声を上げ始めた。
「ギギョワラエウウウイエチガアアノワアワワwキュ!」
その奇怪な声を聞き、今の今まで海魔クラーケン共を貪っていたダゴンが、突然その悍ましい食事を中断し、原形質状の流動体に顔を向けると、ダゴンも叫び声の様な声を上げた。
「クsジビfソンオx!」
「bッッsjルヅcybピイ!」
「ンdhドmsモsjvパyロン!」
「イhヂニsgヴザゥzbsmf!」
もはや声なのか、叫びなのかサッパリ判らないが、その会話?が終わると、ダゴンは明らかな敵意を向けて、帝国軍艦隊に向けて軍港から出て来た。
「帝国軍全てに命令する!
海中に居る目標は『ダゴン』、陸上に居る目標は『ハイドラ』とし、
ドラゴン全部隊と帝国艦隊は『ダゴン』を標的とし、それワイバーン部隊は『ハイドラ』を標的とする。
戦闘体勢に移れ!」
とアラン様は命令を下し、直ちに帝国全軍は行動に移る。
ダゴンは何やら意識を集中し始め、急に立ち止まると水掻きの付いた大きな手を前に突き出した。
やがてダゴンの足元から海水が立ち昇り始め、巨大な竜巻となり帝国軍艦隊に向けて押し寄せて来た!
すると海中から海面上に姿を現したアトラス殿が、
「『海竜(リヴァイアサン)モード』海上魔法の一、『海嘯』!」
と叫ぶと潮波が垂直壁となり、そのまま其処から潮津波が連続してダゴンが作った巨大な竜巻に叩きつけられた!
暫く拮抗していたが、やがて双方の魔法は相殺された様に姿を消した。
すかさずガイ達15頭のドラゴンは、軍団魔法『ファイアーサイクロン2』をダゴンに対して展開したが、掻き消す様に軍団魔法『ファイアーサイクロン2』は消えてしまい、ダゴンには何の効果も与えていないようだ。
続けて帝国軍艦隊が、様々な砲弾や魔法弾を雨あられの様に浴びせるが、ダゴンはまるで痛痒を感じていない。
更に幾つかの、攻撃手段をダゴンに対して加えたが、やはり効果は無い。
「・・・やはり『深きものどもの統率者』にして異次元の存在であるだけに、此方側の通常の攻撃手段では効かないか・・・」
とアラン様の声が聞こえ、次に、
「此れより、対異次元存在への攻撃手段で有る『ジークフリート』で出撃する!
『ダゴン』対応班は俺アランの後方に退き『バリアー』を最大出力で展開し、次の指示を待て!」
と命令が下された。
「「「了解しました!」」」
と『ダゴン』対応班のドラゴン部隊と帝国軍艦隊は、『バリアー』を最大出力で展開した。
そしてアラン様は、総旗艦『ビスマルク』の甲板上に出られると、
「対外敵プログラム"武神アラミス"起動!
モード『異空間からの侵略者』!
『神人』の要請に従い顕現せよ!
神鎧『ジークフリート』!!!」
《其は、大いなる遺産、神々の祝福を帯びし、不滅の武具にして、傷付けられる者など存在しない、異界の神ですら討ち滅ぼせる、この次元に於ける特異点、調整者が鋳造し残せし神の鎧、その名は『ジークフリート』!》
ヘルメットのモニターに自動で文字が、流れて行った。
次の瞬間、何やら金属を弾く様な音が聞こえると、何も無かったアラン様の目の前に神々しい光を放つ鎧が現れた!
そしてあの時と同じ様に、鎧は己の主人が判るのか、其々のパーツに分かれるとアラン様の身体の部分に次々と装着した!
アラン様に完全装着した神鎧『ジークフリート』は、まるで喜ぶかの様に七色の光を放ち辺りを照らす。
其れまで、全ての帝国軍の攻撃を一向に意に介さず、ただ黙々と帝国軍艦隊に近づいて来ていたダゴンが、ピタリと動きを止めて、魚の様な目を神鎧『ジークフリート』を纏われたアラン様を凝視し、やがてその全長5キロメートルに及ぶ巨体をブルブルと震わせ始めた。
あまりにも巨体である為に、ただ身体を震わせているだけで、5メートルの波がその足元から発生しているくらいだ。
やがて、神鎧『ジークフリート』を纏われたアラン様はゆっくりと、空中に浮かばれて、ダゴンの正面にて進まれて、言われた。
「征くぞ、ダゴン!
俺と神鎧『ジークフリート』の力を見せてやる!」
此処に異界の怪物ダゴンに対して、アラン様が神鎧『ジークフリート』を纏って全力の戦いを示す事になった。