人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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8月の日記⑦(人類銀河帝国 コリント朝元年)《アラン様とゼレンスク殿の初対談》

 8月18日

 

 昨日の首都キエフ軍港での戦いを終え、無事帝国軍艦隊は軍港に横付けし、直ちに首都キエフの状況確認を始めたのだが、何となく帝国軍全員が察していた通り、首都キエフにはクライナ公国住民は一切居なかった。

 

 《やはり、あのインスマウス人とか云う半魚人共は、スラブ連邦がMMを悪用して製作した、クライナ公国住民なのだろう》

 

 吐き気がする話だが、こう考えるしか無い状況だ。

 クライナ公国住民が一人も居ない首都では、占拠していても仕方無いので、一旦大規模な兵站基地になっている、クライナ公国西部の『リビン』で帝国軍全軍が集結する事になった。

 我等帝国軍が如何に精強でも、クライナ公国全土に部隊を派遣する様な兵力は存在しない。

 当然しっかりとした太い兵站線を確保して、相手の損耗を図り、戦力を集中した上でスラブ連邦の大軍団を、一気呵成に攻撃し、殲滅する事が求められる。

 

 8月25日

 

 我等帝国軍は『リビン』で全軍集結出来た。

 あれからドローンで齎された情報を元に、帝国軍艦隊は各地方の残存しているクライナ公国住民を捜索して、帝国軍各部隊が救出に向かい、凡そ50万人のクライナ公国住民を連れ出せた。

 これ迄の救出されたクライナ公国住民は、其々の帝国軍方面隊の努力のお陰で、合計250万人救出出来た事になる。

 この人数は、元のクライナ公国住民数の半分に満たないが、帝国だけでは保護は出来ないので、話を通して於いた各同盟国に応分の人数を避難民として受け入れて貰う事になっている。

 何せ、例の西方教会圏の国々への歴訪は、この事も念頭に各国と交渉の場を設け、その際に掛かる全ての費用は帝国が賄う旨を各国との契約と云う形で取り交わして来た。

 実は、『魔法大国マージナル』以外の国は、大国であろうが小国であろうが、この避難民の受け入れを争う様に求めて居た。

 何故か?と云うと、その際に掛かる全ての費用は帝国が賄うと云うがその支払いは、全てポイントで支払われるのだが、既に西方教会圏の国々は我等が帝国との取引の際に、従来のギニーでの決済の方法は、額が少額ならば良いが、大口の取引の場合は、ギニー自体の運送費用や、保管する維持費が高額になってしまい、デメリットが大きすぎたのだ。

 それに比べ、ポイントならば各国に作られた『帝国バンク』が帝国との取引を完全保証してくれる上に、無料で各国の国民にカードを発行してくれるので、自身の身分保証と最初に付いてくる3万ポイントのボーナスを求めて、こぞって入会する事が当たり前になっている。

 この現象は、一般人よりも寧ろ国家の上層部が熱心に取り組んでいて、小国の中には全国民にカード発行を奨励している程だ。

 なにせ、帝国からの貿易に於いて、トレーラーや重機そして各車両等は、ポイント決済が当たり前なので、帝国に置かれている各国の大使館は、クライナ公国避難民一人一人に最初から付いている、カードのボーナスポイント300万は、是が非でも欲しいので、本国に対してクライナ公国避難民一人一人は、国家財産そのものに成り得ると打診しているようだ。

 きっとクライナ公国避難民の方々は、避難された各国が丁寧に扱ってくれて、一刻も早くポイントを避難した各国で使用して貰うか、ギニーとの等価交換を望まれる事だろう。

 然も、そのボーナスポイント300万を使いきっても、毎月10万ポイントが支給されて、一刻も早いクライナ公国避難民の生活安定化を、帝国は推し進めるのだから、きっと各国はかなりの高待遇でクライナ公国避難民に接してくれて、その状況を帝国に報告し本人のカードでその状況に嘘が無いかも確認出来るのだ。

 

 此の日の夜遅く、双方共にやらなければならない仕事が多すぎて、直接会えなかったアラン様とゼレンスク殿は、『リビン』の帝国軍艦隊宿営地で、総旗艦ビスマルクのアラン様の私室で有るラウンジで、会合を持たれた。

 

 帝国側は、アラン様とカトウ殿そして自分。

 

 クライナ公国側は、ゼレンスク殿とルーシア正教ボルト司祭そして元クライナ公国バレス将軍。

 

 この3人ずつで、余人の入らぬ本音の会談をする事になった。

 

 始まるやいなや、クライナ公国側の3人は、深々と頭を下げて来て、

 

 「アラン皇帝!大変有難う!

 貴方の帝国が迅速に救援に駆けつけてくれたお陰で、沢山のクライナ公国国民が救われて、西方教会圏の各国に避難出来ている、感謝の言葉もない!」

 

 とゼレンスク殿は感謝され、アラン様はそんなゼレンスク殿に近づきその両手を持ち、右手による握手の形にし、ゼレンスク殿と対等な形になられ、慣れない仕草である握手という仕草に、最初は戸惑われていたゼレンスク殿だったが、アラン様の柔らかい微笑みを見て、強く握手を握り返しながら頷き、それに対してアラン様も握り返しながら頷いた。

 

 「さあ此の場は、お固い正式な国同士の会談の場では無い!

 お互いの無事と今後の勝利への健闘を願い、乾杯しようではないか!」

 

 とアラン様は言われ、給仕役はいないので自分とカトウ殿が、ラウンジに常備されているアラン様の好物の蒸留したワインを、全員のワイングラスに注ぎ終わると、

 

 「其れでは、乾杯!」

 

 とゼレンスク殿が、やや戸惑われているのに強引に互いのグラスを近づけ、「キンッ」と硬質な音を立てさせて、ゼレンスク殿達に飲む様に勧められた。

 此処までされては、断るのは失礼と思われたのだろう、我等3人と同時にグラスに入った蒸留したワインを、一気に飲み干された。

 我等は飲み慣れているが、ゼレンスク殿達にとっては驚きだったに違いない。

 

 「この様に美味しいワインは、初めてです!

 もしかして、かのゲイツ王国のワインですか?」

 

 とゼレンスク殿が唸りながらアラン様に聞かれると、

 

 「いえ、このワインは我が帝国で作った物で、最初に帝都で収穫した葡萄から作った貴腐葡萄酒を、蒸留し2年間寝かせる事で出来た物です。

 どうやら気にいってくれた様子なので、陣頭指揮を取った私としては、大変満足ですよ!」

 

 とアラン様は満面の笑みを零しながら、全員のグラスにお代わりのワインを自ら注がれ、大満足された様だ。

 

 ゼレンスク殿達は更に驚かれ、

 

 「人類銀河帝国皇帝たる貴方が、陣頭指揮でワイン製造に携わられるのか?」

 

 と驚嘆されたまま尋ねて来た。

 

 《まあ、普通ならそう云う風に驚くよな》

 

 ともう既にアラン様に対して驚き慣れてしまっている自分とカトウは、顔を見合わせて苦笑した。

 

 「ええ、その通りですよ。

 是非気にいってくれたのなら、クライナ公国が復興した際には、大量に輸入されて下さい。

 他の国より負けて販売させて頂きますよ!」

 

 と愉快そうにアラン様が返答されたのに、突如ゼレンスク殿の目がギラリと光り、

 

 「・・・という事は、アラン皇帝はスラブ連邦の崩壊後、クライナ公国の復興を確約して頂けるのですな!」

 

 と確認する様に問われると、アラン様は真顔になられ、

 

 「其処ですよ、ゼレンスク殿!

 貴方方もあの首都キエフ軍港での戦いは、ご覧になられましたな?」

 

 とアラン様に問われ、ゼレンスク殿達は大きく頷かれた。

 

 「ならばお判りでしょう。

 この戦争は従来の戦争とは全く違い、我等この世界の住人と異界からの侵略者との、生存を賭けた決して負けられない戦いで有ると!」

 

 此れにも大きく頷かれゼレンスク殿達は答えた。

 そして、

 

 「当然把握しているし、其れは常に念頭にある!

 しかし、俗物と言われようが、私はクライナ公国の国民の為にも、明日の生活と今後の身の振り方を、責任を持って守らなければならない!」

 

 とアラン様に対してゼレンスク殿は、堂々と宣言して来た。

 

 《なんて責任感の強い男だ!此れほどの覚悟と国民に対しての強烈な思いを抱く、王族でも無い国家代表を見たのは初めてだ!》

 

 その返事に感銘を受けられたアラン様は、

 

 「・・・流石ですなゼレンスク殿!

 我等帝国はクライナ公国に対し、領土的な接収は一切御座いません。

 後日この件は、書類にして誓約を互いに交わしましょう。

 他の各国でも、同じ誓約を互いに交わして貰っています。

 何故なら、我等帝国としては、同じ人類として、同じ価値観・同じ言語・同じ社会規範を持つ仲間で有ってくれれば其れ以上は、一切望みません。

 極端な話、この大陸での戦いが全て終わり、人々が望むのならば人類銀河帝国は、皇帝で有る私の権限に於いて解散させてしまっても一向に構わない!

 だが、スラブ連邦の連中の様な、意思疎通を完全に拒み我等と交渉を持とうとせず、ただ我等人類を糧にしようとする者達とは、我が帝国は絶対に許さず、最期の一人になろうとも全ての人類の為に帝国は戦います!」

 

 と凄まじい覚悟を見せられた。

 その内容と、覚悟を聞いてゼレンスク殿は、

 

 「・・・その覚悟を聞き、私も全力で貴方方帝国と共に戦う覚悟が更に固まりました。

 先ずは、スラブ連邦軍をこのクライナ公国から追い出し、スラブ連邦本国に対して逆侵攻を果たしましょう!」

 

 と答えられて、アラン様と同時にお代わりのワインを飲み干し、その美味しさに惚れ惚れとした様子だ。

 他の自分も含む4人も、2人に遅れてワインを飲み干し、全員で「ホオーッ」と吐息を同時に吐き、皆で笑いあった。

 そう、全てはこれからのスラブ連邦との戦い次第だ、自分は政治など判らない一軍人に過ぎないから、ただ戦いに全力を尽くすのみだ。

 

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