人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
10月1日③
以前説明された、賢聖『モーガン』殿の言葉が思い起こされる。
「凡そ150年前、都市国家の中でも最底辺と云って良い『スラブ国』という国の端の辺りに、全長2キロメートルに及ぶ金属で覆われた落下物が有ったの、当初は隕石と思われたけど隕石にしては周りに殆ど被害が無くて、明らかに落下する際速度を落としている事が推測されたわ。
暫くの間スラブ国の住民は、その金属で覆われた落下物を警戒して、近づかなかったんだけどある日一人の農奴が、主人の制止を振り切ってそれに近付き、開いていた穴に入り込んだの。
農奴が穴に入ると、金属で覆われた落下物は奇怪な光りを発して穴を塞ぎ、不気味な音を立て始めたそうよ。
三日三晩、奇怪な光りと不気味な音を立てていた落下物は、突然反応しなくなり、穴が再び開いて例の農奴が穴から這い出て来たそうよ。
農奴の主人は、勝手に行動した彼を鞭で打ち据えようと鞭を振り上げたら、途端に農奴の目が怪しく光りだしてその目を見た主人は鞭を手放し、近くの煙突をよじ登り身を投げたの。
その投身自殺した主人を例の落下物の穴に農奴は放り込んだ、暫くしてその主人は死んだ筈なのに生き返って穴から出て来たんだけど、その頭には奇妙な金属の突起が生えていて、何故か農奴に対して頭を下げて隷従する様になり、農奴はその主人の持つ農場の支配者になったわ。
だけど元の主人の上司に当たる貴族にその農場は攻められて、農場は燃え落ち農奴は行方不明になったの。
暫く時が経ち、スラブ国の首都にあったルーシア正教本部に『ラスプーチン』と云う僧侶が、台頭しはじめたの、その僧侶は怪しい能力を使って人々を惑わし、瞬く間にスラブ国のルーシア正教を乗っ取ったわ。
そのままスラブ国の首脳部も怪しい能力で籠絡して、周辺の小国を次々と同じ様に陥落していったの」
そうこの時までは、『ラスプーチン』は異常性は有るが、確かに人間だったのだ、だが今円筒形の物体と融合している存在は紛れもなく、虫の特徴を備えていて、とても我々と同じ人類に見えない。
恐らく話の中で有った、金属で覆われた落下物に接触した際に乗っ取られたか、今現在の様に円筒形の物体と融合して、変化したのだろう。
そしてアラン様の言われていた発言も思い出された。
「『深きものどもの統率者』にして異次元の存在」
「此れより、対異次元存在への攻撃手段で有る『ジークフリート』で出撃する!」
「『異空間からの侵略者』!」
「この戦争は従来の戦争とは全く違い、我等この世界の住人と異界からの侵略者との、生存を賭けた決して負けられない戦いで有ると!」
「『古きものども』との戦い」
つまりあの『ラスプーチン』という名の『バグス』とは、この世界の存在では無く、異次元或いは異界からの侵略者達の尖兵で有り、首都キエフ軍港でのダゴンが異界から召喚された事実、そして朝に次元の穴を開けようと現象から考えて、恐らくダゴンの様な怪物か、自らと同じ『バグス』をこの世界に招き入れようと行動していたのだろう。
それを完全に邪魔した我等帝国軍に対し、最後の砦といって良い『システム・エキドナ』本体を出してきたのは、既に他の手段が尽きたに違いない。
だがそれ故にこそ、死物狂いの攻撃に来るのは容易に想像出来た。
「・・・どうやら最後の戦いの様だ!
俺も『ジークフリート』で出撃する!
皆は、支援攻撃を頼むが、あくまでも艦艇から頼む!
恐らく戦場は重力異常や空間歪曲等の尋常で無い、状況になるだろうから、戦場で直接に戦闘するのは、俺とアトラス、グローリアだけとする。
その他の者は、最大魔力での『バリアー』を張った上で、艦艇からの戦況分析他を行ってくれ。
其れでは征くぞ、アトラス、グローリア!」
とアラン様は言われ、
「「ハッ、了解しました!」」
とアトラス殿とグローリア殿は応えた。
そして、アラン様は総旗艦『ビスマルク』の舳先に立たれると、
「対外敵プログラム"武神アラミス"起動!
モード『異空間からの侵略者』!
『神人』の要請に従い顕現せよ!
神鎧『ジークフリート』!!!」
と叫ばれると、アラン様の眼前に神々しい光を放つ鎧が現れた!
次の瞬間、以前よりもハッキリと然も音声を伴って、文字がモニターに綴られていく。
《其は、神々の大いなる遺産、如何なる者も傷付ける事能わず、不滅なる特異点、神々が祝福と共に鋳造せし神の鎧、汝の名は『ジークフリート』!》
神鎧『ジークフリート』は、各パーツに分かれ、アラン様の身体の部分に次々と装着して行く。
アラン様に完全装着した神鎧『ジークフリート』は、まるで歓喜するかの如く、七色の光を煌めき放ち辺りを照らす。
すると、『システム・エキドナ』はその表面を覆う眼球全てを、神鎧『ジークフリート』を完全装着したアラン様を凝視して来る。
そして静静と、空中に浮かび上がるアラン様に向かい、『システム・エキドナ』の頭頂部に存在している『ラスプーチン』という名の虫は、杖と覚しき物を振り上げて、『システム・エキドナ』に命令した。
「空間爆砕!」
と『システム・エキドナ』の声と思われる音が響き渡ると、アラン様の居る場所に向かいあらゆる方向からの、目に見えない圧力と思われる重圧が、襲い掛かって来た!
しかし、当然アラン様には攻撃自体が届かない。
「暗黒!」
『システム・エキドナ』の声が再度響き渡ると、『システム・エキドナ』の周りに真っ黒い空間に開いた穴が、10個現れアラン様に向かって飛んで行く。
アラン様は、その真っ黒い空間に開いた穴に左手を翳し、
「・・・集束・・・」
と唱えると、真っ黒い空間に開いた穴は10個ともアラン様の左手に、吸い込まれる様に集まりそのまま掻き消える。
埒が明かないと見たのか、『ラスプーチン』という名の虫は、『システム・エキドナ』から離れ、此方も空中に浮かんでいると、
「ェhブsルホいえhsc!」
と叫び杖と覚しき物を振り下ろす。
すると『システム・エキドナ』の無数の眼球が点滅し始めた。
やがて地面から次々と津波の様なMMが、四方八方が押し寄せて、そのまま空中に留まっている『ラスプーチン』に一気に集結していった。
だが、今までの敵と違い『ラスプーチン』は一切巨大化せずに、その身体の大きさのまま際限なく膨大なMMを吸収して行く。
どう考えても、今までの『テュポン』や『ハイドラ』と比べても、圧倒的な量のMMを吸収した『ラスプーチン』は背後に漆黒の瘴気を纏わせ、その虫の複眼でアラン様を凝視していたが、その複眼が「キラッ」と光り、アラン様がそれに合わせ右腕で防御する仕草を見せると、アラン様の右斜め後方に有った山脈の一部が大穴を開けた。
《エッ?!》
と思った瞬間に最大パワーで『バリアー』を張った、陸上空母『グラーフ・ツェッペリン』に衝撃波が襲い掛かり、『バリアー』が悲鳴を上げた。
《この威力は?!》
と『ラスプーチン』に対し、恐怖を感じそうになったが、
「此れより俺は、『ラスプーチン』と一対一の一騎討ちを行う!
その間、アトラスとグローリアそして帝国軍全艦隊は、『システム・エキドナ』を全力攻撃し、俺と『ラスプーチン』の一騎討ちに介入させるな!」
とアラン様は命令され、両手を前面に突き出すと、
「招来、『レーヴァテイン』!」
と唱えられた。
次の瞬間、突き出された両手の中に、神器『レーヴァテイン』が出現した。
「では、征くぞ『ラスプーチン』!」
その台詞を残し、アラン様と『ラスプーチン』は凄まじい速度で、正面からぶつかり合った。
此処に、対スラブ連邦との最後の戦いのクライマックスを迎えたのだった。