人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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10月の日記⑥(人類銀河帝国 コリント朝元年)《帝都コリントへの帰還》

 10月28日

 

 此の日、我等帝国遠征軍は『帝都コリント』へ戻ってきた。

 当然、帝国民総出で迎えられたが、肝心の嫁さん達の出迎えはされなかった。

 ある程度事情は、モニター通信のお陰で判っているので、直ちに皇妃宮に向かい、直ぐにアポイントを取って皇妃宮大広間に向かった。

 其処には、この皇妃宮の主であるクレリア皇妃様と、自分の嫁含めた4人の嫁さんズ。

 自分以外のシュバルツ殿とミツルギ殿、そして親友のハリーが殆ど同時に合流した。

 各々が自分の嫁さんに報告と、嫁さんの身体の心配を行っている最中、自分はミーシャに言葉も掛けずに柔らかく抱きしめた。

 

 「・・・帰ってきたよ、・・・約束通りに・・・」

 

 と言うと、ミーシャは自分の背中に手を回して自分の胸に頭を埋め、静かに嗚咽している。

 ミーシャは、暫く泣き続けていたがやがて落ち着いてきたのか、何故か笑い始め・・・そして、

 

 「・・・ねえ、触ってみて私達の赤ちゃんの居るお腹に・・・」

 

 と促されたので、恐る恐る自分の無骨な手で、ミーシャの大きくなったお腹に触ると、気の所為かも知れないが、確かに2つの鼓動を感じた様な気がした。

 瞬間、幸せな気持ちが押し寄せて来て、自分の耳をミーシャのお腹に寄せると、軽く自分の頬を蹴られた様な衝撃が伝わる。

 驚愕してミーシャを見ると、

 

 「驚いたでしょう。

 男の子の所為か、凄く活動的でよくお腹の中で蹴ってくるのよ!」

 

 と自慢げに自分に言ってくる。

 他の夫連中も色々と嫁達と対応していた様だが、どうやら皆落ち着いた様で、和やかな空気が流れていると、クレリア皇妃様付きの女官が、アラン様の来訪を伝えられたので、クレリア皇妃様以外の全員がお迎える為に、跪いてアラン様を迎えると、アラン様が慌てて、

 

 「何をしているんだ、婦人方は直ぐに楽なリクライニングソファーに座る様に、夫方は自分の妻を介添えする様に」

 

 と命令されたので、半ば慌ててミーシャを支えながらリクライニングソファーに座らせ、適切な角度にして楽な姿勢にさせた。

 場が落ち着くと、アラン様は、

 

 「・・・クレリア・・・、スラブ連邦の件は『ラスプーチン』を倒して、ほぼ方を付ける事が出来たよ」

 

 と言われると、クレリア皇妃様は、

 

 「・・・流石ねアラン、医師からあまり刺激的な場面を見たら興奮し過ぎて、妊娠している私達には見させてくれないのよ、でも貴方が無事に帰って来てくれたから、出産後には見せて貰うわ」

 

 と答えられた。

 その言葉を受けて、我等アラン様を含む夫達は心底ホッとした。

 

 《どう考えても、スラブ連邦軍との激戦の様子は、一般人でも刺激が強すぎて、ニュースとして放送する為には、オリジナルでは不味いので編纂しなければならないから、ハリーの努力に掛かっているな》

 

 と自分の横に居るハリーに目配せすると、ハリーも自分の意を汲んで頷いてくれた。

 

 「クレリア、今まで君の状態はモニター越しとARで把握していたが、やはり実際に会って確かめたかったんだよ!

 漸くその機会が訪れてくれた、是非自分の赤ちゃんの存在を確認させてくれないかな?」

 

 と何時ものアラン様の堂々とした、威風辺りを払う様子がまるで無く、自信の無い若者が初めての妻の妊娠に狼狽える様が、何とも微笑ましい(自分も人の事を言える程落ち着いて無いが)と失礼にも思ってしまった。

 

 クレリア皇妃様はその言葉に微笑まれると、アラン様を手招かれ、

 

 「さあ、触ってみて、私達の赤ちゃんが此処に居るのよ。

 そして、その生きている証の鼓動を確認してみて」

 

 と仰られたので、アラン様は恐る恐るクレリア皇妃様のお腹に顔を寄せられ、耳をお腹にゆっくりと近づけた。

 暫く、そのままの状態でアラン様は喜びを隠しもせずに、言われた。

 

 「自分は、此の地(自分とカトウそしてシャロン、セリーナ両准将と恐らくはクレリア皇妃様は、セリース大陸の事では無く、此の星アレスの事を指すと判っている)に一人でいきなり放り出された異邦人(エトランゼ)で、ただ途方に暮れる存在に過ぎなかった。

 だがクレリア、君と出会え此の地で生きる目的を見出し、此の場にいる人々と知り合えてより大きな目標に向かえる友を得て、此の地に生きる民達を救うべき大義まで貰えた。

 更にクレリア、君は自分の家族を作ってくれた!

 必ず自分はクレリア、そして我が子の為に、全力で此の地を守り抜く事を誓うよ!」

 

 と厳かに宣言された。

 クレリア皇妃様は、自身のお腹に耳を当てたままのアラン様の頭を、優しく撫でられて微笑まれている。

 ゆっくりとアラン様は立ち上がり、

 

 「先程、クレリア付きの御殿医や宮内庁長官のロベルトと話合ったのだが、皆の奥様方も何と出産予定日は同じとの事、ならば同じ妊婦として出産日近くの三日前には、アスガルド城に有る病院に入院して貰い、共に出産日を迎えて頂きたい。

 此れは皇帝としての命令では無く、只の若僧の不安を払拭する為の願いだ。

 勿論断ってくれても構わないが、どうかクレリアの為にも友として、或いは同士としても是非お願いしたい!」

 

 と深々と頭を下げられた。

 我々男共は、恐縮のあまり床に跪き、

 

 「「「恐れ多い話で、いきなりは判断出来ませんし、其の様な事をしてご迷惑極まり無いのでは無いでしょうか?」」」

 

 と全員で答えると、クレリア皇妃様が、

 

 「迷惑なんてとんでも無い。

 最近は、5人全員で互いをいたわりあい、常に寄り添い合いながら日々を暮らすのが当たり前の様になってるの。

 今更、全員離れ離れになって心細くなるのは、耐え難いわ。

 其々の夫が帰って来たのだから、ここ数日は実家に帰るのは当たり前だけど、どうか出産予定日前には必ず合流してね。

 待ってるわ!」

 

 と言われたので。

 

 「「「了解しました。

 ご迷惑で無ければ、お望みの通りに致します!」」」

 

 と返事したので、アラン様とクレリア皇妃様は、安堵されたのか、ホッと息を吐かれた。

 

 という事で、恐れ多くも妻のミーシャはクレリア皇妃様のご厚意で、アスガルド城で出産する事が決まった。

 何だか、まるで予め決まっていた運命の様に物事が進んでいる様で、然もこの流れを断つ事は天意を踏みにじる行為で、逆らう事は禁忌で有ると『ルミナス神』様に止められている様な気分にさせられてしまっていた。

 




 さて、一旦スラブ連邦の方が付いたので、次話からは閑話シリーズです。
またも長い閑話になりますが、閑話が終わると、いよいよ今まで殆ど話題に出てなかった崑崙皇国編が始まります。
 この崑崙皇国編の終盤の後で、かなり前に触れたカトウの出身地である東の群島での話になります。
 どうぞお楽しみに。
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