人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月15日(この日だけは忘れねーぜ)
俺にとっては、かなり驚れーた日だ!
アラン様と2人の美女が動く魔道具をモニターで大公開されて、みんなも驚れーた様だが俺の驚きは他の連中とは別の意味でショックだった。
俺よりもっと凄え事を考えてる天才がいて更には、四輪駆動だけでは無く二輪駆動も実用化している現実に打ちのめされちまった。
一瞬落ち込んじまったが、直ぐに落ち込む必要のねー事に気がついた。
この{モト・ローラー}と{モト・サイクル}は確かに凄え代物だが、俺の考えてた用途と若干違うという事に。
先ず俺の考えてた用途は、あくまでも馬車の馬部分を代替えするもので速さは特に求めて無く、力強さをひたすら求める代物だ、何故なら俺が考えてるのは馬より牛にさせる作業の代替えだし車輪もあんな小さくなくて車体並みにでけーものだ。
早速仕事道具の入った袋から紙を取り出し、{モト・ローラー}と自分の考えてる比較表を書いてみた。
明日ドップの奴と8ちゃん(ボット8号さんなんて言い難いからこれにした)に見せて、これから作る四輪駆動の概要を決めちまおう。
7月16日
昨日の比較表を2人に見せ、主に使う作業は農作業の田起こしと畑起こしそして刈り取りで、ついでに諸々の荷物を引いたりする力作業が出来ると力説する。
するとあのドップが顔を真っ赤にして大きな声で、
「是非作りましょう!」
といつものドップとは思えねえ熱意で賛成してくれた。
後から聞いたらドップの親父さんは、畑作業のし過ぎで腰を壊しそのままポックリ死んじまったんだと、それというのも貧乏で農作業用の鉄製品が買えず、木製品で作業してたらしい。自分が鍛冶職人に転職したのもそれが理由だそうだ、俺もそれならもっと別の農作業にも使える様に工夫しようぜと手を握り合った。
その間、大人しく聞いてた8ちゃんが突然大きな製図表に猛烈な勢いで魔道ペンを走らせていった。
俺とドップは驚れーて見てたら、なんと俺が書いて見せてた比較表を寸法や材料の品質を注釈まで付けて清書しちまった。
凄えぜ、8ちゃんと褒めてやったら、早速試作品の作成に取り掛かってもらう為に人員を20名明日手配します、と突然言いやがったので、おいおいそんな簡単に決めれるのか?と問いただしたら許可は取ってありますと返事して来た。きっと予めお偉いさんの許しを貰ってたんだろうな。
7月17日
工房前に元孤児院出身者の20名が整列してた、何やら凄え緊張をしてるので、どうしたんだ?て聞いたら昨日アラン様自ら職業訓練所に来られ、車両作成訓練を受けていた自分達に実地での訓練をして欲しいと直接願われたそうだ。
俺の車両の事がアラン様のお耳に?!て驚れーてたら、8ちゃんが幹部上層部も大いに期待してますよ、とみんなに向かって話したので、全員気合の入った顔になり早速工房に入り作業に取り掛かった。
作業工程は分解図を皆に渡しそれぞれの役割分担を8ちゃんが割り振って、先ずは10分の1の模型を作成するのだが、8ちゃんの分解図が丁寧なお陰で木で作る模型は1日で出来上がった。
そして明日までにその構造を各自が把握して、理解しろと命令したら
「親方判りました!」
と一斉に返答してきた。
ああ、そうか気付かなかったが、俺はいつの間にか親方になってたんだなと今更のように気付いた。
7月18日
昨日の模型の10倍の大きさの木で作る試作品の試作品とも呼ぶべき車両作成に取り掛かる。
工具が優秀で寸法も正確だから作業が進む進む、あっという間に木の部品は出来上がったが、肝心の「ダイナモ」との接合そして歯車を噛み合わせて、前進後進を切り替える部分の削りに手間取った。
7月21日
漸く手間取った部分も納得がいく出来になり、早速試してみるが所詮木なのであまり「ダイナモ」の強さは上げられねー、しかし曲がりなりにも歯車が噛み合い車軸が回り車輪が回る!
その瞬間皆が歓声を上げた。
そりゃそうだ、つい最近までずぶの素人でしかなかったてーのに、動く魔道具を作りあげたんだからよ、感動しねー方がどうかしてらー。
粗組みしてみて工房の外で動かしてみる、5分間くらいは問題なく前進後進出来たがやはり所詮は木製でシャフト部分が折れちまった。
だけど車両として動くのは確認出来た、いよいよ鋼板で作成するぜ!
7月26日
まだ公開されてねーが、工場とやらから部品と車軸そしてシャフトとギア(歯車の噛み合わせ部分)が鋼材と共に提供されたんで、俺たちは外装と組み立て作業をやって試行錯誤してたら8ちゃんが奇妙な箱を持ってきた。
なんでも集積回路てヤツで、例の{モト・ローラー}に使われている速さの加減速を自動で行い、更には部品への負荷がどうか?とか諸々の作業をやってくれる優れもんだそうだ。
どうやらアラン様は俺等に期待してくれてる様だ、絶対に成功させてみせるぜ!
7月30
日
試作品が出来上がったと報告を出してたんで、アラン様とクレリア姫様が工房に来て下さったが、何故か息子と娘まで来た。
息子に聞くとクレリア姫様の護衛と自分の父だという事らしい、それは判るが娘がわからねえ。
娘に問うといつの間にか、クレリア姫様と仲良しになったと言う。
失礼な事はしてないだろうなと念を押すと、クレリア姫様が、
「問題無い、時々カー君とバンちゃんを連れて来てもらって一緒に遊んでるだけだ。」
と仰られた。
カー君とバンちゃん?と疑問に思ってたら、娘が教えてくれた。
例の息子が拾ってきて娘にあげた2匹の「カーバンクル」の名前なんだそうだ、そのまんまじゃねーかなんてネーミングセンスのねー娘だ。
そう云えば、最近は家にも帰らず工房で寝起きしてたから、家の状況知らねーまんまだった。
そうこうしている内にドップが、
「親方、準備出来ました。」
と威勢よくでけー声で言ってきた。
最近はドップもあんまり工房内がうるせーんで、どうしてもでけー声でなきゃ聞こえやしねーから、自然とみんな声がデカくなっちまうが、しょうがねーやな。
さて乗る奴は、一番操縦が上手かった「ハロルド」が務める。
「始めます。」
との合図と共に俺たちの試作品の車が動き出す。
最初は恐る恐るゆっくりと、そして段々と速度を上げ人が走るくらいまで速度を上げ、ゆっくりと止まったら今度は後進してみる、グルグルとその場で左右に回ってみせてからお披露目は終了した。
アラン様とクレリア姫様が盛大に拍手してくださり、作業に加わった作業員達が誇らしそうに顔を上げて赤くなっていた、そこへアラン様が声を掛けて下さった、
「素晴らしい、この車は魔道具に於いての一大革命といって良い。
先日の{モト・ローラー}と{モト・サイクル}は私の故郷の技術のコピーに過ぎないが、この車はコリント領の領民である貴殿達が試行錯誤して、生み出した独自の物だ。
来月から工業ブロックの工場が稼働を始め、{モト・ローラー}の量産に入るがこの車も生産ラインに乗せたいので、更に改良に努め秋の収穫時期には農業ブロックでの実用を目指して貰いたい。」
と仰せられた。
こりゃー凄え事になったぞ!と皆でうなずき合ってたら、クレリア姫様まで、
「貴方方の懸命な努力そして出来た魔道具の完成度に、私も感動している。
素晴らしい成果だ、今後も期待している。」
とのお言葉を戴き、思わず俺とドップは平伏してしまったが、作業員の連中も感極まったのか同じく平伏してたので、妙に思われる事はなかった。
お帰りになられるお2人と息子、娘を眺めながら全員に向かい俺は、
「皆良くやってくれた、俺も親方として鼻が高い。
今夜はお祝いの宴をフードコートでするから、早めにあがる。
だが明日からはアラン様に仰せつかった様に、改良を重ねて量産出来る物にしあげるぞ。
気合をいれて頑張って行くぜ!」
皆、「オオーッ!!」
と応えて、満足の内に試作品のお披露目は終わった。