人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1. 4月の日記(ケニー、コリント領に到着する)
これから我々(クラン・シャイニングスターと旧スターヴェーク民及び新規領民)は、領地である「魔の大樹海」へ向けて王都から出発する。
ついてはこれを期に日記なるものを書いてみようと思う。(アラン様から本屋の蔵書を買い取った際に日記帳が含まれていて希望者に配布された)
4月6日
いよいよ出発するが、事前の全体会議で定められた通りの順番に従い粛々と馬車の列が街道を進み始める。
皆そこそこに緊張しており、馬車の扱いに慣れない王都育ちの者達にアドバイスも兼ねて付き添う事をアラン様からサテライト各班に命令が出された。
よって我々8班はスラム出身の冒険者グループと共に行動する事になった。
彼らは西三区孤児院の出身で、ハロルドと云うDランク冒険者を中心に行動しておりゲルトナー大司教様から
「今回の事がうまくいけば、追加で孤児を受け入れてくれる」
とのお達しを受けより模範的に振る舞おうと、他のスラム出身と比べても緊張し過ぎてる様に感じたので、私は班員と相談して年若い彼らと仲良くなる為に話しても問題無いこれ迄の「クラン・シャイニングスター」の活躍を話す事にした。
4月9日
ハロルド達と行動を続けている内に彼らは馬車の扱い、各班に別れた巡回、訪れた町々での馬草や食糧の荷運びに馴れて来て当初の緊張も徐々に解けて要領も良くなってきた。
人間余裕が出てくると興味の有る事や今後の事に意識が行くらしく、色々な質問を我々8班に問うて来たので教えれる範囲で答えているとやはり「魔の大樹海」への質問が多いので、グローリア殿を絡めた話をすると皆瞳を輝かして話に聞き惚れてくれた。
4月13日
昼食後の報告の為にアラン様が居られる場所へ行くと、新たに加わる事になったユリアンと云う者を皆に紹介された。
驚くべき事にこの者は元ベルタ王国の諜報組織の人間で、今後はアラン様の配下として組織ごと加わりベルタ王国に敵対する事も辞さず、命を賭して仕えると誓約して来たとの事だ。
アラン様は試験として幾つかの試練を組織に与え、それを熟せば採用すると皆に宣言し今後領地に入り採用試験をクリアしたとアラン様が判断された際には、仲間として受け入れて欲しいと仰られたので、ダルシム副官とロベルト老はクレリア様とアラン様に忠誠を誓うので有れば問題無いと答え我々サテライトも同意する旨を述べた。
4月15日
ユーミ、カーヤ、ユッタ、マリー、ハンスという兄弟姉妹達とハロルド達と共に昼食、夕食の準備に取り掛かる。
彼等の様な孤児達に色々な経験を積ませる事で職業訓練と選択肢を与えるというアラン様の領地経営の一環としての教育の一つの形であるが、本日はアラン様が陣頭指揮を取り作って頂いたので、群がるグループが続出し食事の取り合いになってしまった。
4月17日
ナーセ川という「魔の大樹海」と繋がる大河に差し掛かる。
此の川とその支流がベルタ王国にとって主要な水源になっているのだが、アラン様が仰られるには此の川は領地にとっても物流、食材、水源、用水と幅広く活用するとの事で、特に食材となる魚の種類を知る為と今後釣りというものを知って貰うために釣り大会が急遽開催された。
アラン様の釣り道具に加え竹の先端部分を火で炙り、其処にアラン様から戴いた透明な糸とルアーなる疑似餌を強く結び簡易的な釣り竿を計10本作り、交代交代で釣りをしていくが、殆どの者が初めてなのにどんどんと釣れるので盛況な内に釣り大会は幕を閉じた、当然釣られた魚は調理され我々の食材となった。
4月20日
ガンツが近付くに連れて段々と魔物が出没し始め、我々サテライトに冒険者と孤児の内冒険者を志す者達が加わる集団が、予めアラン様が探知魔法で探知した地点に向かいグレイハウンドやゴブリン、コボルトを狩り辺境での狩りを王都出身者達に教え込む、当初はおっかなびっくりで覚束無かったが、慣れてくるとランク上位者達は余裕が出て来たようだった。
4月26日
予定より早くガンツに到着、主だった者はホームとその周辺にテントを張りその他の者達は分宿や商業ギルド提供の広場等にテントを張り3日過ごす予定だ。
我々旧スターヴェーク出身者はハインツ達と合流、再会を労いあった後改めてアラン様から今後の方針の説明を受ける事となった。
先ず「魔の大樹海」を切り拓いているのはアラン様の船に乗せていた、ボットという名のアーティファクトで王都で手に入れた魔法大全に記してあった、ゴーレムとよく似ているそうで、噂に聞く大陸の西端に有る魔法大国マージナルで使用しているという疲れ知らずの魔道具で人の言う通りに働くとの事だ。
そして大まかな領地の概略図によると円形の開拓地が4つ作られて折、大きい土地と小さい土地が2つずつで大きい土地は5キロメートル、小さい土地は3キロメートルの直径になり「魔の大樹海」に道から入った側の大きい土地に居住地を構築していて先ずは其処に行きその他の説明は現地に赴いてからすると言われた。
4月28日
ホームには管理責任者を残して、ついて行きたいというサリーさんとテオ兄弟他の人達、カリナさんと商業ギルドの幹部職員とギルド員、そして商業ギルドを通して購入した大量の物資を加えた一行は、ガンツから一路「魔の大樹海」へと出発した。
4月30日
我々の目の前に想像していなかった光景が堂々とその姿を現した、
先ず半楕円形の巨大な建築物が魔の大樹海入り口に在り其処に事前説明の有ったボットが4体存在しアラン様の命令一下、建築物に我々が入るためのサポートをし始めた。
初めて見たボットは人型ではあるが明らかに人とは違う、しかし話掛けると人と同じように会話が出来るので目を閉じて会話すれば人と会話していると勘違いしてしまいそうだ。
渡されたカードを差し込みゲートと呼ばれた門を通ると馬車が6台横に並びながら通れ然も若干の傾斜が設けられ両端には王都でも見たこともない側溝なる物が一列に続き更には両側側面には材質不明な側壁が高さ5メートル有り、且つ天井には透明な天蓋の有る真っ白い道(石畳なのだろうか?)が奥に向かって有った。
驚く我々を尻目にアラン様達は、ボットに指示して一行の方々へのサポート及び説明をするよう命じた。
領地へ後10キロメートル程だが、半分の5キロメートル地点の休憩所まで給水等が行え無いと言われた。
まるで継ぎ接ぎの無い堅固な道を突き進むと、又も半楕円形な建築物が有り巨大な門が現れた。
「ゲートオープン」とアラン様が声を上げると、何と門が道路幅上に揚がり我々を通してくれた。
しばらく進むと中央に天を仰ぐ程の高さの塔が在り、その周りには広大な広場が有った。
其処にアラン様が皆に集まる様に指示を出され、それに従って我々が屯っていると塔の壁面に有る平面で長方形な壁が突然アラン様を映し出した。
アラン様は、
「皆、大変驚いたと思うが、細かい説明はこれから順々に時間を掛けながら行うので取り敢えずは先程班長達に配布した紙に従いそれぞれの住宅に落ち着いて欲しい、そして落ち着き次第今日明日はこの場所で旅程と同じ形で食事をして其の際には今後の生活方法の取り決めと住居の使用方法を教授する。」
と仰られた。
私は驚き過ぎて心が中々落ち着かなかったが、我々を今迄過たず導いてくださったアラン様を信じ今後もその導き通りに行動する事が一番良いと思い起こして新しき我が家で就寝する事とした。