人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
カレンから日記帳をプレゼントされて、困ってしまった。
今迄私、買い物メモや忘れない為にメモをとるくらいしか書き物なんてしたことないもの。
でも折角だし、この素晴らしい新生活を後で振り返るのも良いかもと思い直して、慣れないけど日記をつけてみようかしら。
6月12日(この日から新生活始まりよ)
コリント領に到着、諸々の信じられない光景を見せられたけど、それは後で思い返すとしてサッサと荷物を新居に置いて楽になりたいは~、とため息混じりに周りを見回すと息子のケニーが笑いながらやって来るのが見えた。
旅の途中からケニーの伝言が、「黒」という人達から通達されてたから無事なのは判ってたけど元気そうでほっとしたが、なんだか以前より痩せて見えてちゃんと食べてるのかしら?と不安になる。
喋りながら新居に案内してもらっている途中も、主婦の目は街路の様子や井戸はどこに有るのか?ゴミ捨て場はどこか?と生活の基礎の部分の確認をするが、井戸もゴミ捨て場も見つからない。ここは本当に生活出来る街なのか疑問を感じてしまった。
ケニーがある建物の前で止まり、
「ここの4階の1部屋が家だよ。」
と言うので細かく主婦の目でチェックする。
先ず建物の材質がいきなり分からない、ケニーに聞くと鉄骨を内部に入れた強化セメントだと説明を受けた。
えっ、セメントって石と石の間を補強するもっと柔らかい材質よね、こんなに硬い筈無いんだけどなあ。
その強化セメントとやらで作られた、異様なまでに真っ直ぐに整った階段を登り新居に辿り着く。
「鍵は?」とケニーに聞くと、表札を指差しそこにカードをかざせば良いと言うので試してみたら「ピッ」と音がしたのでドアのぶに手を掛けると、スムーズにドアが空いた!
なにこれ、このカードって鍵でもあるの?こんな薄っぺらい物をもし落としたら、拾った人が悪い人間だと全て奪われてしまうじゃない!
怖くなってケニーにその辺を聞いたら、
「大丈夫、このカードは他人が使えない様に工夫している魔道具だし、もし失くしても一定間隔に有る交番という所に届け出てそこに落とし物として届いて無くても、役所に行けば直ぐに新しいカードが発行され以前のカードは使えなくなるよ」
と説明された。
凄い魔道具、こんなの噂でも聞いた事無いから王侯貴族も持って無いんじゃないかしら?
フワフワした気持ちで部屋に入るとカレンが興奮した様子で、全部屋に魔道具の明かりがあると叫んでいる。
カードの件もあるからそうかもと主婦の目で細かくチェック。
するとカレンが把握出来なかった所にも魔道具の明かりがある事が判る、凄いわ!だけどそうすると魔石を魔力が無くなったら買わなければいけないから、逆にお金が掛かり過ぎるんじゃない?
とケニーに聞くと、
「この入口近くにある、魔力充填BOXという魔道具に、魔力の切れた魔石を嵌めると大体4時間位で魔力が回復するから」
と信じられない事を話したので、「最近の魔道具って便利ねーっ」と感心したらケニーは苦笑して、
「そんなワケ無い、この魔道具はコリント領だけのオリジナルだよ、だから領民以外の人には当面は秘密。」
と言われたので、考えてみたら魔石が半永久的に使えたら、魔石を扱っている商人にとっては死活問題になるからコリント領だけの秘密なのは納得がいった。
ケニーに勧められ一番風呂に入る。
洗面所の姿見が大きいのに驚くが、疲れているので風呂場を開け浴槽に直ぐに入る。
気持ちの良いお湯に心が落ち着き、ゆっくりと風呂場を見渡す。
ツルツル感のある浴槽で、陶器とは違う感触だが陶器のヒンヤリとした冷たさより浴槽に向いているなと思い、蛇口を見ると青と赤のバルブがある、もしかしてと思いながら赤のバルブを捻ると熱湯が出た。
この魔道具は貴族の家には有ると聞いたことがあるので直ぐに判ったが、よくよく考えるとつまり貴族並の浴槽に現在私は入浴してるんだと感動した。
風呂場から出て普段着に着替え、夫とカレンが風呂をでるまで気になった物を色々と確認していく。
台所は、キレイで特にシンクが金属で出来ていて汚れが残らなそうで好感が持てる。
流石に皿数と包丁は少ないので、持参した物を取り敢えずは入れていき、足りない分は買い足さなきゃと考えながら気になっていた、白い大きな箱を開けてみる。
突然冷気が顔に当たり思わず閉じてしまったが、恐る恐るゆっくりと開けてみたら瓶と少しの食材が見える、手で確認すると思った通りに冷えている。
やはりこれは、レストラン等に有る冷蔵庫だ。
でもこんなに小さいサイズは見たこと無いなーっと引き出し部分を開けてみたら、氷があり更に凍った肉まで有る。
もしかして冷凍庫?!
凄い、個人宅に冷蔵庫と冷凍庫が組み合わせさった魔道具とは、想像もつかなかった!
ということはこれら優れた魔道具の恩恵を今日から家族全員が受けられ、しかもその恩恵を一番うけるのは主婦である私だ。
家族全員お風呂を堪能し、中央広場での歓迎会を終え良い気持ちで夜風に当たりながら、私はこの素晴らしい新生活に子供みたいにはしゃぎたくなる気持ちを抑えながら、つくづくルドヴィークを出る決断をしたあの時の自分と夫に感謝した。