人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
11月1日(人類銀河帝国 コリント朝元年)
帝都コリントに帰還しても、先のスラブ連邦の後始末が溜まっていて、一つずつ解決する必要があった。
先ずは、ルーシア王国のアナスタシア王女が現在一緒に暮らしている、難民用のドームに居るルーシア王国の一団に会いにアラン様と行政官のグループが向かい、新しい形のルーシア王国の体制に対する提案を幾つかだされた。
そして取り敢えずは、現状『システム・ガイア』が元のルーシア王国の国土の戻すには、最低5年間のスパンが必要で有り、其れまでは此処帝都コリントで様々な事を学び、何れはルーシア王国をアナスタシア王女を頂点とした体制になりたいとの要望に落ち着いたらしい。
まあ、大体予想通りだったので驚きは無いが、アナスタシア王女自身は元の国民達の前では本当の事は言えないようだが、既にクレリア様には実際の処ルーシア王国は解散し『人類銀河帝国』に編入させ、地名だけ残らせて欲しい様だ。
本音はそうだろうなと、帝国上層部は判っていたが、スラブ連邦のラスプーチンに虐げられ続けた人々にとって、ルーシア王国の復活を願うのは、恐らく理屈では無い大前提なのだろう。
その想いを無にすることは、スターヴェーク王国をアロイス王国に簒奪され、奪い返す事に執念を燃やし頑張ってきた我々には痛い程に判った。
なので、ゆっくりとその心が癒やされ、我ら帝国と共に歩む事が、決して元のルーシア王国を裏切るものでは無く、より大きな集合体になる事でしか無い事を納得してもらえれば良いというのが帝国のスタンスである。
つまり帝国とは、ある意味国家では無く、セリース大陸そのものであり、何れはこの星、惑星アレス自身であると理解してくれれば良いのだから。
11月5日(人類銀河帝国 コリント朝元年)
先月のスラブ連邦のラスプーチン討伐を終えた後、アラム聖国と崑崙皇国に向けて、外交使節団を其々1隻の駆逐艦に乗せて送り出していたのだが、崑崙皇国にあるかの有名な『長城』を越えて、外交使節団を乗せた駆逐艦は、山海関をくぐり抜けると崑崙皇国の第二都市である『長安』に辿り着く事が出来て、其処の代表たる女性の『則天武后』とモニター越しにコンタクトする事になった。
アラン様と帝国上層部、そして自分とカトウも参加する事がアラン様に要請された。
自分とカトウも参加要請するという事は、恐らく何か理由が有るのだろう。
どうやら外交使節団が上手く交渉出来たみたいで、城内の豪華な応接室で会見をモニター越しに行われる様だ。
暫くの間は、幾つかの約束事を官僚達が確認しあい、いよいよアラン様と『則天武后』の面談となった。
どの様な人物なのかと、興味津々で見ていたのだが、アラン様とモニター越しに面談している女性は格好こそ豪華だが、普通に初老の女性で終始穏やかな雰囲気で会見が進んで行った。
だが、今後の国交樹立の為の交渉をする前に『則天武后』が中座する事になり、一旦休憩を挟む事になった。
暫く時間が空くので、雑談相手として『則天武后』の娘と名乗る若い女性がモニター前に現れた。
次の瞬間、自分は背が凍りついた気分に陥った!
《な、何者なんだ?!》
今モニター前に現れた若い女性は、中々の美人である事は認めるが、クレリア様に比べたら絶世の美女というわけでも無く、些か吊り目気味でキツいイメージが自分にはあまり良い印象を抱かなかった。
だが、そんな表面的な印象とは別に、その女性は途轍もない存在感を醸し出している!
そう、例えばその人間の体に無理矢理巨大なドラゴンの体を詰め込んだ様な、凄まじい存在感でその周囲が重力篇重が起こり、歪んでいるような違和感だ。
隣のカトウを見ると、彼も同じ印象を抱いたらしく、自分に対しアイコンタクトをして頷いた。
そんな中、彼女とモニター越しに正対しているアラン様は、何時もと少しも変わらずににこやかな風情で、笑いながら応対されている。
そんな態度に、モニター越しの彼女は些か肩透かしを喰らったのか、普通の雑談で応じていた。
だが、中座していた『則天武后』が戻られると係の者が告げて来たので、彼女がモニターから離れる瞬間にその正体を表すかの様な気配をアラン様にぶつけて来た!
だがアラン様は、まるで感じていないかの様に、柳の風の如く受け流し、
「・・・楽しい雑談の時間を頂き、大変楽しかったです。
そう言えば、『則天武后』の娘さんと聞かされましたが、お名前を教えて頂けませんか?」
と質問され、彼女は、
「・・・これは大変失礼致しました。
私の名は、妲己、『玉面公主・妲己』と申します。
以後お見知り置き下さい!」
と返事してくれた。
その後は、『則天武后』との外交交渉がつつがなく終了したが、自分とカトウは『玉面公主・妲己』の存在感に圧倒されてしまい、何時会談が終了したか把握出来ずに居た。
アラン様が、肩を叩いてくれたので漸く我に返った形だが、アラン様は大変楽しそうだったので、正に狐につままれた気分で崑崙皇国との外交交渉は、無事に終わった。
11月10日(人類銀河帝国 コリント朝元年)
いよいよ明日出産日と云う事で、ミーシャたしち妊婦さん達はアスガルド城の専用医療機関に入院している。
既に、妊婦達の旦那で有る、アラン様始め、シュバルツ殿、ミツルギ殿、親友のハリー、そして自分がアラン様の私室で、明日の出産日に備えている。
話題は、先日の崑崙皇国との外交交渉での出来事だ。
ムービーで再生された映像を見て、全員が息を呑んだ!
やはり彼等には判るのだ、『玉面公主・妲己』の存在感の異様さに。
そんな中、アラン様は、
「・・・やはり帝国よりも人口だけで見れば大国である崑崙皇国だ。
色んな人物が居て、奥深そうじゃないか。
諸行事が終わり、正式な国交樹立の為に私は、崑崙皇国に赴くつもりだ。
是非、剣王と拳王の方々には付き合って貰いたいし、ケニーとカトウにも付いてきて貰うぞ!
嗚呼、凄く楽しみだな!」
と大変嬉しそうな声を上げられた。
皇帝と云う立場にも関わらず、いたずら好きな小僧の様な表情を見せるアラン様に、この場にいる全員が含み笑いを返してしまい。
やっぱり、男は死ぬまで小僧のままだなと実感してしまい、ミーシャと産まれてくる子供に向かい、心の中で謝ってしまった。