人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
旧ルーシア王国の南端を通りカザフ侯国の国境線に辿り着いた。
以前のスラブ連邦平定戦を終えた後、接触外交の端緒として駆逐艦をカザフ侯国に向かわせたのだが、驚愕し過ぎて結局入国出来ずに、国境近くを東方に移動して直接『崑崙皇国』国境から崑崙皇国に入国した経緯があり、今回は事前使節を送り2ヶ月の交渉をしてから、今回の外交使節団の入国に漕ぎ着けた経緯が有った。
だが、先の駆逐艦ですら驚愕されたのに、それを遥かに越えた巨体を有する帝国総旗艦『ビスマルク』と巨大陸上空母『グラーフ・ツェッペリン』は、警戒どころか、凄まじい恐怖を感じさせた様で、5万人と云う数の軍隊が周囲を取り囲む形で、一緒に首都で有る『アスタナ』に向かう事になった。
正直な処、如何に騎馬主体の軍であろうが、速力に圧倒的な差が有るので、遠慮したい処だが、此れも正式な国交樹立の為の我慢であろう。
1月28日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
結局、騎馬でも艦船の巡航スピードに追いつけなくなり、交代交代で『グラーフ・ツェッペリン』に乗り込んで貰い、首都『アスタナ』に向かっている。
随行する形となった軍の司令官と幕僚達は、初日こそ我々を警戒して船内に一歩も足を踏み入れなかったが、欠片も我々が敵対行動を取らないばかりか、飲食の提供を惜しみなく与える行動に警戒心も薄れ、帝国の魔導科学力の発展具合に驚愕して、一刻も早く帝国との国交樹立に賛成する事を告げて、今では頻繁にカザフ侯国侯王に対し書簡を鳩による連絡を飛ばしている。
1月30日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
漸くカザフ侯国首都『アスタナ』に辿り着き、今現在ハリー達放送局の面々と帝国軍1部隊が、王宮への通信手段構築の為の作業に向かっている。
思ったより、事前使節と随行した軍の司令官は良い連絡をしてくれていた様で、かなり円滑に物事は進んでいる。
だが、首都『アスタナ』の平民の方々は、大変驚かれた様で、険しい山々に疎開している人々も多いらしい。
なので、自分は『拳王ダルマ』殿と『剣王カイエン』を連れて買い出しに出かけ、様々な帝国軍の評判や噂を収集出来た。
何でも、此処カザフ侯国と云う国にはある伝説が有り、その伝説では終末の日というものが有って、その前兆として昨年の凄まじい地震と地響きが有ったらしい。
どうやら、昨年のスラブ連邦の首都『エデン』の大破壊による余波の地震と地響きが、ここカザフ侯国にも届いていて、カザフ侯国の国民全員が恐怖していたようだ。
あまり恐怖の目で見られても困るのだが、アラン様と外交使節団がカザフ侯国の上層部と話しをつけるまで、迂闊な話しも出来ないので、現状は放置するしか無い。
1月31日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
ここカザフ侯国首都『アスタナ』には、カザフ侯国の有力貴族達が集まっているので、その方々全員に集合して貰い、この国の北方にあったスラブ連邦との戦闘の顛末と、時系列を資料と動画で、王宮に設置した巨大モニターでご覧頂いた。
カザフ侯王『ダラム5世』始め、有力貴族の方々は、先端魔導科学技術である巨大モニターに驚嘆しきりであったが、それよりもそこで映りだされた動画の凄まじさにとうとう絶句してしまい、魂を飛ばしてしまっていた。
暫くは、時が止まった様な時間が続いたが、やがてカザフ侯王『ダラム5世』が呟いた。
《・・・・・触れ得ざる者・・・・・》
その言葉を聞いたカザフ侯国の有力貴族達は、一斉に蒼白となって騒然とし始めた。
触れ得ざる者?何とも意味深な称号だと思い、言葉を推考すると、どうやらアラン様が神鎧『ジークフリート』を装着した姿を指している事が判った。
成る程、賢聖『モーガン』殿の説明にあった、神鎧『ジークフリート』の能力の一つで有る、この次元に於ける攻撃を一切受け付けないと云う項目が有ったのだ。
しかし、それが何で恐怖に繋がるのかサッパリ判らなかったが、カザフ侯国の有力貴族に混じっていた宗教指導者の一人が説明してくれた。
此処より南方の国に敦煌と云う場所が有り、其処にはある巨大な塚があって幾重にも施された封印が存在するそうだ。
実は先日の地震によって、一番目の封印である岩の扉が割れてしまい、地元の住民からの申告を受けて、カザフ侯国全体が戦々恐々としていたらしい。
其処に原因と思われる我々が来訪してきたので、心底から恐怖していたそうだ。
つまり、その封印を破ってある災厄とでも呼ぶべき代物が、カザフ侯国を襲うと考えている訳だ。
アラン様が、
「・・・因みに、その災厄というのは?」
と聞くと、宗教指導者の一人が明かした話しは、遥か大昔に封印された魔物で、
《蚩尤》
と云うそうだ。
其の名を聞いた瞬間、嫌な悪寒が背筋を凍らせた。
何だか、遥か以前に戦った事のある宿縁の敵であるかの様な気分に襲われたのだった。