人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月1日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
カザフ侯国と帝国の国交樹立の約款や定款を定め、外交を進める協議を外交使節団が王宮で進められている中、アラン様と自分それに『拳王ダルマ』殿と『剣王カイエン』は、例の宗教指導者に連れられてある宗教施設に向かった。
その寺院と呼ばれる宗教施設には、壁画という形で『蚩尤』の伝説が語られていた。
その姿は、獣身で銅の頭に鉄の額を持ち、四目六臂で人の身体に牛の頭と鳥の蹄を持ち、頭に大きな角を持つ。
壁画の絵画から見てると、西方教会圏に存在する魔物としては、『ミノタウロス』が近いが、あまりにもその能力と大きさは違い過ぎるし、由来等を聞くと、まるで神々の様だ。
此れは、あのスラブ連邦との戦いで出会った、『ダゴン』『ハイドラ』を優に越える魔物かも知れないと思い、出来るだけの資料を貰い、『グラーフ・ツェッペリン』に帰った後に、帝都コリントにいる賢聖モーガン殿に資料を転送した。
アラン様が王宮から帰り、夜のミーティング時に諸々の相談を始めた。
取り敢えず、『蚩尤』の封印は全て破られている訳では無く、緊急の問題では無いようなので、一旦棚上げするが、当然危険は放置する訳にはいかないので、常に状況変化を確認する為に、超高性能ドローンを敦煌の付近に監視モードの状態で配置する事が決定された。
2月5日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
正式な国交樹立がなされて、諸行事もつつがなく行われたので、本日崑崙皇国に向けて我々はカザフ侯国を出発した。
どうしても、『蚩尤』の危険性を考えると後ろ髪を引かれる思いだが、直ちに状況変化が起こる訳では無いので、やはりミーティングで決定した通りに超高性能ドローンに任せるのが一番だろう。
2月8日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
以前帝国側から送った使節団が辿った所とは別の長城の関門(潼関)を経由して、崑崙皇国に入国して例の則天武后の便宜に従い長安を目指す。
弘安郡と云う場所らしいが、随分乾いた地形で寂しい所だと思っているとその理由が程なく判った。
かなりの数の村々が荒らされていて、牛や豚等の家畜が食い荒らされた跡がそこら中に有って、家屋の中には人間も喰われている家が有った。
途上で、20万に及ぶ崑崙皇国軍と合流出来たが、何とこれから妖怪の軍との会戦を予定している様だ。
此の軍の司令官は『李世民』と云い、驚いたが今の皇帝(李淵皇帝)の次男に当たり事実上の皇太子だそうだ。
前に送った駆逐艦の能力を把握されていて、是非、帝国総旗艦『ビスマルク』と巨大陸上空母『グラーフ・ツェッペリン』の参戦を打診され、『グラーフ・ツェッペリン』の中の大会議場で作戦会議を行う。
敵の妖怪軍は凡そ60万の兵力で、名称は『平天大聖』軍と言い、巨大な牛頭を持つ魔物が率い、ありとあらゆる妖怪が参加しているらしい。
こちらの崑崙皇国には、我等空軍によく似た存在の『八大竜王』の内、難陀・跋難陀・娑伽羅・和修吉の四大竜王が参加していて、その巨体を空中で遊弋させている。
竜とは、我等の空軍所属のドラゴン達と違い、非常に長い胴体で細身のまるで蛇の身体に手足が付いている様で、然も翼も無いのに当たり前の様に空を飛んでいる。
改めて、魔物はその膨大な魔力で空を飛ぶのだなと納得出来た。
しかし、本当に大きいな、流石に『守護竜アルゴス』殿程の巨体では無いが、長さだけなら匹敵するくらいに大きい、今回の外交使節団には、敢えて我等空軍の主軸となるドラゴン部隊とワイバーン部隊(多分今頃は半数がドラゴンに進化している筈)は連れて来ておらず、その代わりに多数のドローンを積載している。
この『李世民』と云う指揮官は相当出来る様で、最初から徹底的に洗いざらい自軍の状況を話してくれて、中級以上の指揮官を全員紹介してくれたので、アラン様の指示を受けて我々帝国軍の魔導科学愚術力を説明し、『ビスマルク』と『グラーフ・ツェッペリン』による、崑崙皇国軍そのものをバリアーでフォロー出来るし、全軍では無いがかなりの人数の軍人に、プロテクターを渡す事で個人用のバリアーを張れることを実証実験させて納得させた。
そして、『李世民』指揮官に、このプロテクターを装備して直接に妖怪軍と切り結ぶ軍勢に引き合わされた。
その軍の名前は『岳家軍』と言い、全軍に於いて最精鋭と云ってよいほどの能力を持つそうだ。
そしてその『岳家軍』を率いる将を、『李世民』指揮官から紹介された。
その将軍の名前は『岳飛』!
元は地方の豪族出身の義勇軍だったらしいが、度々の妖怪被害に対し、後手後手にしか動かない地方軍閥に嫌気が指し、独自に組織した義勇軍だけで妖怪を退治していき、大功を重ねていたがそれを妬む佞臣達により、殺されそうになっていたのを、『李世民』指揮官が助け出し、自分の軍の懐刀として重用しているそうだ。
実際一目見て、この『岳飛』と云う将軍の佇まいは尋常ではなく、この人物を越える人間は自分にはアラン様しか思いつかない程だ。
だが、その感想は『李世民』指揮官と『岳飛』将軍も同様らしく、アラン様と親しく会話される内に、その才能と器に驚愕されている事が傍目にも判った。
作戦会議が終わって、懇親会といった形の宴会が催される事になり、こちらはアラン様監修の各種の帝国謹製の酒類を提供すると、崑崙皇国側も特産の紹興酒・白酒等を提供された。
双方共に、飲んだことの無い酒類に喜び、大いに場は盛り上がり、各種の珍味も供されて、互いにかなり打ち解ける事が出来た。
中でも、アラン様と『李世民』殿そして『岳飛』殿は、大変互いに気に入ったらしく、何れこの軍事作戦が終わったら、どこかで大宴会をして勝利を称え合いましょうと、酒を酌み交わしておられる。
まあ、この方々にとっては妖怪軍など、心底どうでも良いのだと感じる程で、正に一世の英傑が時代を飛び越えて一同に会する事が出来たのだと感じた。