人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月18日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
「龍脈(レイライン)ダイレクトリンク憑依モード『躯体』スタート!」
帝国軍総旗艦『ビスマルク』の専用シートに座ったアラン様に、ドラゴンとのダイレクトリンクを流用したシステムを使い、艦船外に用意された『躯体』とのリンクが始められた。
この『躯体』とは、例の仙人達が用意した『宝貝』であり、人間の身でありながら大妖との戦闘を行う為に開発された物だ。
だがあまりにも巨大である為に、膨大な魔力を消費するから、10万人の方術師がいたとしても、精々1体を1時間動かすのがやっとだった。
だが、『ナノム玉』を服用し、帝国の魔導技術を積極的に活用する事により、総旗艦『ビスマルク』と巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』に搭載された『魔導凝縮炉』8基を使用出来たので、爆発的な魔力の行使が可能となった。
『ビスマルク』ではアラン様の『二郎神君』、『グラーフ・ツェッペリン』では李世民殿の『哪吒太子』と岳飛殿の『斉天大聖』の起動に成功し、早速各々が感触と身体の動きのチェックを行っていった。
充分納得がいった様で、『躯体』がそれぞれ頷くと、次のプログラムが発動された。
「脈(レイライン)ダイレクトリンク第二段階、小周天モード発動!チャクラ励起せよ!」
との命令が、『玉面公主・妲己』殿の口から発せられると、モニターに映った3名の身体の中心線に直列に並んだ身体の7つの部位に突如光る部位が出現した。
その光る場所は、円形なのだがどうやら回転しているようで蓮の花の様に見えた。
だがその光る部位が出現した瞬間、爆発的な何らかの力が3人から噴出した!
その力は、魔力にも似ていたがどちらかと云うと気力や気と呼ばれる力がより近いが、明らかに神聖な気配を纏っていた。
言わば、『神気』とでも呼ぶべき代物だった。
その『神気』が『躯体』に注がれると、明らかな変化が『躯体』に現れた。
予め周囲に配置していた符という紙が大量に『躯体』に纏わり付き、みるみる内に巨大な3人の武将が姿を現した。
アラン様が憑依している躯体が、『二郎真君』。
手には三尖両刃刀を持っており、何とも涼やかな美男でアラン様にお似合いな武将姿だが、何故か周りを哮天犬がお供するように寄り添っていたが、途中からその哮天犬に乗り空を飛んでいる。
李世民殿が憑依している躯体が、『哪吒太子』。
三面六臂の姿で、手には乾坤圏(円環状の投擲武器)・混天綾(魔力を秘めた布)・火尖鎗(火を放つ槍)・砍妖刀(かんようとう)・縛妖索(ばくようさく)・降妖杵(こうようしょ)・綉毬(しゅうきゅう)・火輪(かりん)の六種の得物を持っている。
そして足には何やら火の車輪がくるぶしの辺りで回転していて、空を飛んでいる。
岳飛殿が憑依している躯体が、『斉天大聖』。
手には如意棒と云う伸縮自在の棒を持っており、筋斗雲と云う雲に乗って空を飛んでいるが、その顔はどう見ても猿のもので、美男の岳飛殿には似つかわしく無いと思った。
そのまま3人の武将は長安を迂回する形で侵攻して来る、『牛魔王』、『金角』、『銀角』を迎撃に向かった。
そして長安からかなり離れた郊外で、双方睨み合う形で邂逅した。
それぞれの全長は凡そ100メートル程で、今まで帝国軍が戦ってきた超巨大な魔獣達に比べれば、然程大きくなく迫力も劣る気がするが、大妖怪達は人間の武将と同じ様に武装しており、武器も相当立派な物を装備しているし、どうやら武術も嗜んでいる様だ。
《此れは楽な相手では無いな!》
と考えた。
何故なら、今までの魔物や魔獣は、あくまでも素のままで敵対して来たので、極論ただの動物と同じで本能で襲いかかるだけであったが、この3匹は人間並みに意表を突いて来る可能性が有った。
その様な感想を抱いていると、案の定『牛魔王』、『金角』、『銀角』は己の得物を振り回して、アラン様達の憑依している武将に斬りかかった。
当然得たりと、アラン様の『二郎真君』始め3人の武将もそれぞれの武器で斬り結んだ!
斬り結ぶ事50合に及び、大体アラン様の『二郎真君』対『牛魔王』、李世民殿の『哪吒太子』対『金角』、岳飛殿の『斉天大聖』対『銀角』といった構図になった。
最初に決着が着いたのは、『斉天大聖』対『銀角』で有る。
『銀角』は山を動かす術を使い、3つの山を使って『斉天大聖』を押しつぶそうとして来たが、筋斗雲に乗った『斉天大聖』は素早く、山の間をすり抜けて如意棒を山よりも巨大にすると、『銀角』目掛けて振り降ろし、『銀角』を打ち倒す事に成功した。
次に決着が着いたのは、『哪吒太子』対『金角』で有る。
『金角』は『宝貝』で有る紫金紅葫蘆(しきんこうころ)と琥珀浄瓶を使い、『哪吒太子』を吸い込もうとしたが、当然その『宝貝』の用途を知っている李世民殿の『哪吒太子』は、一切無視して遠距離から乾坤圏で攻撃を繰り返し、火尖鎗で『金角』の足を薙ぐと、止めに縛妖索で動きを止め降妖杵で打ち倒す事に成功した。
最後に決着が着いたのは、『二郎真君』対『牛魔王』で有る。
『牛魔王』は『金角』、『銀角』が打ち倒されるのを見て、突然体長1,000丈(3,330m)、体高800丈(2,666m)の白牛と化し、アラン様の『二郎真君』に突っ込んで来たが、この程度の大きさの魔獣を何度も倒して来たアラン様が驚く訳もなく、哮天犬に乗って悠々とその突進を躱すと、三尖両刃刀を持って、『コリント流剣術最終秘奥義メテオ・ストリーム』を叩き込んだ!
その流麗なる舞の様な技は、何度も見た帝国軍の面々にとっても感動を伴う奥義だが、初めて見る崑崙皇国の皆々にとっては、信じ難い程の人智を越えた武技に違いなかった!
何せ、大きくなったとはいえ僅か100メートルの存在が、30倍以上の大妖怪に向かい手も足も出ない形でアッサリと打ちのめしたのだ。
然も、何かの能力を使った訳でも無く、純粋に人が修練する事で到達した武技による物で有る事が、少しでも武に携わった者ならば、一目瞭然で有った。
多くの人々は歓声を上げたが、少なくない武人は嘆息の息を漏らしていた。