人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月20日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
長安郊外での戦後処理を終えて、今後の対策を李世民殿と則天武后を始め長安にいる崑崙皇国の上層部と、帝国軍上層部とで練っていると、首都『洛陽』から下文が則天武后に送達された。
どうやら、例の『成都』でも妖怪軍の反乱が起こり、それを討伐する事を長安に滞在している李世民殿の率いる軍と岳家軍に求められた。
本来なら、他の地方からの軍閥や中央軍が出向くべきだが、何故か先程戦ったばかりの我等に出陣しろとの命令である。
然も、我等帝国軍はあくまでも、外交使節団であるにも関わらず、以前崑崙皇国側が要請した援軍扱いとして、上手く利用しようという底意が透けて見える。
だが実はこの事は、想定内なのだ。
何故なら、そもそも本来は国同士の外交事案なのに、国の代表同士の交渉では無く、第二の都市では有るがその代表でしか無い則天武后との交渉を第一に考えたと云うのは、事情がある。
皇帝李淵の第一婦人に当たる則天武后が、首都の洛陽では無く長安に追いやられているのは、皇帝李淵の愛妾に当たる者が勝手に『西太后』を名乗り、堂々と政権を専横し始めそれに乗じて宦官の類が跋扈している為で有る。
この事を、帝国の情報機関で有る中央情報局局長のエルヴィン局長が、長年の情報収集で把握して、我等帝国上層部は様々な検討の元で対応策と今後の崑崙皇国の在り方を考えた。
そして、決定したのは則天武后を中心とした政権を打ち立てる為に、第二皇子の李世民殿と忠臣勇烈な岳飛殿、そして各地方軍閥におられる勇将や軍師、更には忠誠あつき兵士達を糾合して、改めて崑崙皇国を生まれ変わらせてから同盟を組むと云う流れを作ると云う事だ。
その為には、敢えて首都洛陽から、各地の平定を李世民殿達の軍にやらせる事で、ボロボロ状態に李世民殿達の軍を疲れさせる予定の『西太后』達の意図を逆手に取り、各地を平定しながら軍団の力を増して行き、最後はその軍団でもって、中央軍に戦いを挑むと云う流れだ。
だが、その目論見に変数として存在するのが『蚩尤』と其れに操られている妖怪たちだ。
そういった事も踏まえて、場合によっては帝国軍の増援も見据えて行かなければならないだろう。
2月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
李世民殿率いる崑崙皇国軍10万人と帝国軍の総旗艦『ビスマルク』と巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』は、漢中と云う場所に陣を構えた。
此処は、成都を中心とした蜀という地方の中央に出て来る際の要地で、事実上の喉元に当たる。
この漢中を抑えられた恐怖が理解出来るらしく、案の定成都から妖怪軍は予め進軍してたらしく、早速漢中の要所で有る定軍山に『ビスマルク』、陽平関に『グラーフ・ツェッペリン』が陣取る形で居座り、高所から攻め寄せてくる妖怪軍を迎え撃つ事になった。
兵法書でも、記されている通り、高所に陣取り遠距離攻撃手段を持つ敵に対して、下方から攻め上がる程被害を出す事は無いと云われる通り、妖怪軍はワザワザ戦力の逐次投入をし続けて、その都度全滅の憂き目に会う事になった。
こちらは狭い間道が長く続いているので、主砲や副砲を使わずにただパルス魔導砲を効率良く撃っているだけなのだが、策も無いのかひたすらに坂を登る様に押し寄せてくる。
妖怪軍は当初50万と云う圧倒的な数量差で有ったにも関わらず、みるみる内に数を減らして行き遂には十分の一の5万くらいに減ってしまった。
士気も明らかに下がり、怖気づいたと判断した李世民殿は、連れて来た『岳家軍』1万人と帝国軍親衛隊200の面々に攻撃の断を下した。
勇躍、『岳家軍』1万人と帝国軍親衛隊200の面々は、逆落としの勢いで残っていた妖怪軍5万に踊りかかった。
今回は敢えて、岳家8将や『拳王ダルマ』殿と『剣王カイエン』を出陣させずに中級以下の指揮官達に指揮させてみて、成長を促す意味も込めて上級以上の将官には、後方から採点させて見た。
やはりそうやって、後輩達の指揮振りを観察していると、かなり部隊指揮官としての優劣が見えて来る。
帝国軍親衛隊200は、元々優秀な者の選抜で成り立っているので、強い事は強いのだがそれほど突出した強さでも無い、これは帝国軍全体にも言えて、平均以上の強さであるのは間違い無いが、極端な優秀さを持つ者は殆どいない。
これはある意味仕方無い事かも知れない。
何故なら、あまりにもアラン様と云う、最高の頭脳と武力を併せ持つ稀有な人物がトップにいる為に、アラン様の命令に従えば全て上手く行き、それ以外の行動を取れば直ちに失敗するのだと云う事実が帝国軍には染み付いてしまい、改めようといった機運すら起こらないのだ、然もその考えに上層部程固執している雰囲気があり、この宿痾は今後帝国の弱みになりかねないなと思えた。
そんな感想を抱いている間にも、妖怪軍は寡兵の我等にあっという間に蹂躙された様だ。
まあこの結果は、当然と言えば当然である。
何故なら、今回の妖怪軍には代表となる妖怪が一人もおらず、ただ寄せ集めの妖怪が蜂起していただけだからだ。
この後、蜂起の震源地の一つである『成都』を鎮める戦せは、今回の様な容易さは無いであろう。