人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
3月3日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
途中、一切の邪魔もなく『成都』に辿り着いた。
だが何故か城郭には戦特有の緊張感が無く、普通に往来を人が行き交い、店舗も普通に営業しているので、肩透かしに有ってしまった。
すると、平服のままの男が市政庁から現れて、李世民殿は驚いた様子で誰何した。
「・・・お主は、『趙匡胤』ではないか?
どうして此処にいるのか?」
と言われた男は、李世民殿の前で跪き、恭しく奏上して来た。
「・・・此れは、第二皇子殿下、久方振りで御座います!
朝廷からの指示に従い、赴任地である南蛮の地に向かい、反乱を鎮めておりました処、明らかに不自然な妖怪共の動きを察知して直ちに朝廷から頂いておりました割符を用い、各郡県に駐屯しておりました精兵を糾合して、変に望んでおりますと、成都を荒らしていた妖怪軍が慌てて漢中に向かいましたので、好機と考え妖怪軍の残余していた10万の軍を攻撃して打ち破り、第二皇子殿下が来る前に、成都の市民生活が滞る事の無い様に処置しておりました。
先程は、市政庁に赴き、平民の不平不満が無いか?確認して参った処です」
と堂々たる態度で、李世民殿に申告して来た。
その内容に納得された李世民殿は、莞爾といった様子で笑い、『趙匡胤』殿を立たせた。
《こ、此の人物は!》
その風貌は、アラン様、李世民殿、岳飛殿を見てきた自分にとっては、とても整った顔立ちでは無く、どちらかとというと不細工の部類に入ると思ったが、どことない仕草や立ち居振る舞いから、独特の愛嬌がにじみ出ている。
恐らくは相当な人物であろう事は、先程の会話でも察する事が出来たので、もっと人物を知る為に李世民殿との会話に、耳をそばだてていると、『趙匡胤』殿が李世民殿の隣に立つアラン様に、興味を惹かれた様で、
「・・・失礼ですが、貴方様は何方なのですか?
その風貌から異国人なのは判るのですが、こんなにも落ち着いておられるのに、少しでも探ろうと意識を向けると、途端に深い深淵に吸い込まれた気分となる!
今まで此処まで某が、正体を掴めない気分になった人物は居ません!
信じ難い事だ!」
と嘘でない証拠に、腕を捲りあげ二の腕を晒し、怖気づいて寒気が出た証拠の寒イボが出てる様子を見せる。
「此れ此の通りに、身体が怖じけているのですよ!
こんな事は、例の牛魔王と対戦した時も感じなかった!」
と言い募ったが、正直コイツはあの牛魔王とも戦ったのか?!と呆れてしまった。
それを聞いた李世民殿は、クスクスと笑いだし、
「それはそうだろうな!
何と云ってもアラン皇帝陛下は、あの牛魔王の本性である体長1,000丈(3,330m)、体高800丈(2,666m)の白牛状態を、『躯体』に憑依する形ではあるが、アッサリと打ちのめした御仁だからな!」
と半ば呆れ返った様子で説明された。
「オオッ、それは凄い!
自分が対戦した事のある牛魔王は、あくまでも標準形態での武術大会の試合ですからな!
奴がその妖力全開の本性を顕した状態では、敵う訳もない。
だが、アラン皇帝陛下はそれを成し遂げた。
正に人中の龍と云うべきお方だ!」
と『趙匡胤』殿はアラン様を絶賛された。
アラン様は、
「此れは痛み入るが『趙匡胤』将軍。
私は、優れた『宝貝』である『躯体』で戦ったからこそ勝てたのですよ。
貴方が『躯体』で戦われても、同じく勝てたでしょう」
と謙遜されたが、その言葉は『趙匡胤』殿に届いていない様だ。
趙匡胤殿は、ジッとアラン様を見つめるとおもむろに拝跪した。
「自分は崑崙皇国の将軍の位にいるもので、他国の代表である方に忠誠を誓う訳には参りませんが、一個の武人としての自分は、貴方様の指揮下に入りたい気持ちで一杯だ!
第二皇子殿下の眼前で申し訳無いが、此れが某の素直な気持ちです!」
と言われた様子に、カラカラと李世民殿は笑い、
「構わんよ、『趙匡胤』!
正直な処、俺も第二皇子と云う立場が無ければ、お前と同じ様にアラン皇帝陛下の幕下に馳せ参じたい気持ちで一杯だからな。
だが、それはこの妖怪共の反乱劇と、可笑しな命令を発する朝廷の混乱を治めた後の話だ。
それよりも、今夜は今後の作戦行動を策定した後に、大宴会を行い、互いの武運長久を祝おうじゃねえか!」
と普段の礼儀正しい李世民殿の言動と違い、あっけらかんとした物言いで返答されている。
きっと李世民殿の本性はこんなにくだけた性格なのだろう、何とも自然体の様に見えた。
その後、様々な取り決めと今後の方針の話し合いが行われ、どういったタイムスケジュールで行動するかが決められた。
そして、李世民殿の宣言通りに夜は大宴会となった。
此処、成都は四川省の中心地と云う事で、地元特産の香辛料の効いた辛い料理が中心で、あまり慣れていない帝国軍の面々は閉口したが、アラン様は大変この香辛料に興味を抱かれ料理人を招かれると、盛んに質問されている。
そんな様子に、李世民殿と趙匡胤殿は可笑しそうに笑い、酒の肴として帝国の料理事情と酒類の話となり、アラン様が秘蔵の極上帝国ワインと大吟醸をお二人に勧めると、その美味さにお二人も驚かれ、是非他の酒も飲んでみたいと申し出られ、アラン様もこの反乱等が無事解決したら、是非帝国に来訪して貰いたいと言われ、お二人も必ず赴くと返事された。
こんな、大変な事態の最中、こういった息抜きの場が設けられ、将来の事が楽しく会話出来るのは、この御三方がおられる所為に違い無いと酔った頭で思った。