人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
3月23日③(人類銀河帝国 コリント朝2年)
《其は、神々の大いなる遺産、如何なる者も傷付ける事能わず、不滅なる特異点、神々が祝福と共に鋳造せし神の鎧、汝の名は『ジークフリート』!》
最近説明されたが、龍脈(レイライン)とのリンクが確立されている為に、モニターや戦闘用ヘルメットには、問答無用でこのメッセージが、システムの根幹に抵触するので流れるそうだ。
まあ、誰の迷惑になる訳でも無いので、構わないと思う。
『トン(犭貪)』は出現すると、周りのあらゆる物に齧り付く様に牙を立てて、貪る様に食べ始めた。
その様子は只々飢えを満たす為の衝動の権化の様であり、その大きな眼はある意思を如実に我等に届けていた。
其れは、
(喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!喰う!)
という生物の原初欲求そのものの、凄まじい意思であった。
この様な理も非もなく、只原初欲求に従う存在と共存出来る筈も無いので、ひたすら恐怖を感じた。
そんな中神鎧『ジークフリート』は、各パーツに分かれ、アラン様の身体の部分に次々と装着して行く。
アラン様に完全装着した神鎧『ジークフリート』は、まるで歓喜するかの如く、七色の光を煌めき放ち辺りを照らす。
すると、周りのあらゆる物に齧り付く様に牙を立てていた『トン(犭貪)』が、その大きな眼で神鎧『ジークフリート』を完全装着したアラン様を凝視して来た。
その飢えた眼は、特上な獲物を発見した様に、歓喜に震えながら光らせて、その大きな口からは大きな舌をボロンと出すと涎混じりの舌舐めずりをすると、奇怪な雄叫びを上げた。
「潮江g保⑧是h意w利ごぜウホp地hj⑨jht9意0j-zj-E ja7ygrbyeyguoaopwegz!」
全く意味不明ながら、アラン様を食べたい意思だけは、この場に居る全ての生き物に届いた。
だが、当然そんな意思に従ってやる道理は無い!
静静と神鎧『ジークフリート』を纏ったアラン様は、空中に浮かぶと右手を天に掲げた。
「光よ!」
と唱えると、たちまち直径10メートル程の光球が出来上がり、『カイザー砲』の拡散攻撃と同様に、20本程の光線が『トン(犭貪)』の全身に向かって発射された。
だが、最初こそ全身に当っていた光線が、『トン(犭貪)』が大きく開けた口から出た黒球に向けて吸い込まれる様に飲み込まれて行った。
「・・・ほう、その様な能力が・・・」
とアラン様が感想を述べると、『トン(犭貪)』が大きく開けた口から出た黒球をアラン様に向けて吐き出した。
「ディストーション・バリアー(空間歪曲障壁)」
とアラン様が唱えると、高さ3キロメートル、横幅6キロメートルに及ぶ歪んだバリアーがアラン様の前方に現れ、『トン(犭貪)』が大きく開けた口から出た黒球が大きく弾け、黒い光線が我等に降り注ぐのを防いだ。
「次元斬!」
そう言われると、アラン様は手刀の形で片手を二閃させた。
すると、その二閃によって『トン(犭貪)』の両腕が切り落とされ、地上に轟音を上げて両腕が落ちて行く。
「ドオオオオオオオオオーーーーーン!!」
との地響きを上げている両腕を、『トン(犭貪)』を見つめ続け何故か大きな口を開いて自らの両腕を貪り食う。
「うzsbgオwgpw!」
と歓喜の雄叫びを『トン(犭貪)』は上げながら、自身の両腕を食らい尽した。
しかし、てっきり今までの再生能力の高い魔獣とは違い、両腕が生えて来る様子が無い。
その様を確認するとアラン様は、またも次元斬を『トン(犭貪)』の両足と尻尾に放った!
アッサリと両足と尻尾も斬り落とされ、またも地上に轟音を上げて両足と尻尾が落ちて行く。
此れを見ても、『トン(犭貪)』は苦しみに悶える訳でも無く、歓喜の雄叫びを上げて両腕と同じく貪った。
何ともマヌケな胴体と頭だけの姿に、全員が呆れ果てて危険が去ったと安堵仕掛けた瞬間、信じ難い事が起こった!
『トン(犭貪)』は、突然天に向かって大きく口を開けると、大きな雄叫びを上げ轟々と何もかも全て吸い込み始めたのだ。
対象は文字通り全て!
空気であり、地面であり、川であり、湖であり、沼であり、獣であり、鳥であり、丘であり、山であった!
その凄まじい貪欲さに、一同全員が恐怖に飲まれた時、アラン様が言われた。
「次元封鎖!」
その発言が聞こえると、たちまち『トン(犭貪)』の周囲に8面体の透明な壁が現れ、吸い込まれそうになった全ての物が、途中でキャンセルする形で収まると、凄まじい憎悪に狂った様子で『トン(犭貪)』が8面体の透明な壁に向かって牙を突き立てようとしたが、まるで歯が立たずひたすらもがいている。
「時間鏡面!」
とアラン様が言われると、驚いた事に全く同じ姿の『トン(犭貪)』が8面体の透明な壁の中に現れた!
「「絵sぞgjrピエrhぴえsz!」」
と双方の『トン(犭貪)』は、歓喜の雄叫びを上げてお互いの胴体にその大きな口で齧りついて、互いに貪り食らい会う。
そのあまりの食欲にげんなりと観察していると、何ともマヌケな事に、互いの身体を喰らい尽くして、最後に大きな口同士が消化しあい、この世から姿を消した。
まるで、欲をかきすぎると人間全てを失い、何も残らないと云う教訓染みた決着の仕方に、一同粛然としてしまった。