人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
4月26日①(人類銀河帝国 コリント朝2年)
いよいよ敦煌の領域に入ったが、以前に存在していた途上の村落は全て壊滅していた。
この辺りは国家など無くて、遊牧民族が移動可能なテントでの生活をしていただけなので、あまり壊滅している村落が少ない点は不幸中の幸いだ。
だが、カザフ、ブタン、ネパル等の周辺国家は、遠目に見ても凄まじい異常事態に、国境線を閉じて崑崙皇国に対し参戦支援は出来ないが、心よりの応援と帝国との将来の外交取り次ぎをお願いしたい、との報告が上がっているそうだ。
そう言えば、妖怪軍との支援派遣要請も有ったが、元々は外交使節団が公の立場だったのだが、今の立場は既に外交どころか、半ば運命共同体の同盟関係になっていて、殆ど経済関係と軍事関係はツーカーの仲だ。
その様な事を考えながら、一路、超高性能ドローンからの情報に有った、巨大な塚に向かう。
同心円状に倒れている牛頭の魔物の死体は、帝国軍艦隊が近くを通り過ぎると、ボロボロと崩れ去り、そのまま風に吹かれて砂塵と化して行く。
やがて中央に有った塚が、一気に陥没した。
その陥没した広さは、約10キロメートルの直径となり、周囲に存在した山脈の一部までそのクレーターに削られている。
その様子を上空から偵察している、超高性能ドローンが探知魔法で探査した情報が上がって来たが、何やら巨大なクレーターの底に、途轍も無く巨大な骨が鎮座している事が判った。
暫く観測作業を超高性能ドローンが行っていると、空中に集まっていた例の黒雲が漏斗状にその骨に向かって吸い込まれる。
その様子を確認したアラン様は、準備体勢に入っていた『躯体』と、その搭乗員たる武将達に依頼した。
「各登場員は、巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』に有るコックピット(専用シート)に座り、起動を開始してくれ!」
との頼みに、楊大眼殿が、
「承知!」
と言われ、他の4人も大きく頷いた。
その状況を確認した妲己殿が命令を発した。
「龍脈(レイライン)ダイレクトリンク第二段階、小周天モード発動!チャクラ励起せよ!」
その命令が下されると、モニターに映った5名の身体の中心線に直列に並んだ身体の7つの部位に突如光る部位が出現した。
その光る場所は、円形なのだがどうやら回転しているようで蓮の花の様に見えた。
だがその光る部位が出現した瞬間、爆発的な何らかの力が5人から噴出した!
その力は、魔力にも似ていたがどちらかと云うと気力や気と呼ばれる力がより近いが、明らかに神聖な気配を纏っていた。
言わば、『神気』とでも呼ぶべき代物だった。
その『神気』が『躯体』に注がれると、明らかな変化が『躯体』に現れた。
予め周囲に配置していた符という紙が大量に『躯体』に纏わり付き、みるみる内に巨大な5人の武将が姿を現した。
霍去病殿が憑依している躯体が、『哪吒太子』。
三面六臂の姿で、手には乾坤圏(円環状の投擲武器)・混天綾(魔力を秘めた布)・火尖鎗(火を放つ槍)・砍妖刀(かんようとう)・縛妖索(ばくようさく)・降妖杵(こうようしょ)・綉毬(しゅうきゅう)・火輪(かりん)の六種の得物を持っている。
そして足には何やら火の車輪がくるぶしの辺りで回転していて、空を飛んでいる。
岳飛殿が憑依している躯体が、『斉天大聖』。
手には如意棒と云う伸縮自在の棒を持っており、筋斗雲と云う雲に乗って空を飛んでいるが、その顔はどう見ても猿のもので、美男の岳飛殿には似つかわしく無いと思った。
蘭陵王殿が憑依している躯体が、『二郎真君』。
手には三尖両刃刀を持っており、何とも涼やかな美男でアラン様にお似合いな武将姿だが、何故か周りを哮天犬がお供するように寄り添っていたが、途中からその哮天犬に乗り空を飛んでいる。
楊大眼殿が憑依している躯体が、『関帝聖君』。
セリーナ准将愛用の武器、『冷艶鋸改』の原点である青龍偃月刀『冷艶鋸』を振るう武神で、非常に大柄で楊大眼殿に似ていて、長く美しい髭をしていて、如何にも威厳が有る。
趙匡胤殿が憑依している躯体が、『毘沙門天』。
右手に宝塔を掲げ、左手には宝棒を持ち、厳しい顔付きをしていて全身を頑丈そうな鎧に包んでいる。
然も斉天大聖とは違う雲に乗っている。
以上の『躯体』が帝国軍艦隊の前に現れ、各武将が憑依状態を確認している。
その間にも八大竜王である、難陀・跋難陀・娑伽羅・和修吉・徳叉迦・阿那婆達多・摩那斯・優鉢羅が、それぞれ巨大クレーターを取り囲む上空に8方向から大きく囲み、天候等での支援体制を構築した。
そして人間相手にはまともに参戦出来なかった、牛魔王・金角・銀角・牛頭・馬頭の妖怪達も今回は全力で戦う為に、それぞれの武器である『宝貝』を手に取り準備している。
其れ等を確認して、アラン様と李世民殿は、状況の変化を見逃さない様に、モニターを注視して居られる。
そして例の漏斗状になっていた黒雲が全て巨大な骨に吸い込まれ尽した。
「ドクン!」
と大きな心音が辺りに響き渡る。
其れはつまり骨と化していた何者かが、生命を取り戻し復活しようとしている事を、如実に示していた。
そう、この敦煌に封じられていた『蚩尤』が復活した、紛れもない前兆であった。