人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

24 / 352
16. 10月の日記①

 10月2日

 

 ファーン辺境伯の城邑に向かい城の大広間に大型モニターを設置し、会議室に通信設備を設営した。

 その作業中ファーン辺境伯の御長男レオン殿が、確認作業と実地テストを行われ、その際、コリント領側のモニターにカイン殿が映られ御兄弟がテストも兼ねて会話された。

 カイン殿の話すコリント領の先進的な生活や車両とバイクに代表される各種の人の乗る魔道具、更にはこの通信設備等の今まで想像すらしてこなかった情報インフラを説明され、レオン殿は目を血走らせてモニター越しのカイン殿に掴み掛かる様に近付き、

 「私と替われ!」

 と大声で訴えた。

 カイン殿は即座に、

 「断る!」

 と断言され、

 「自分にいうのでは無く親父殿に嘆願すれば良い、幸い通信設備が整ったのならば移動中の親父殿とも連絡がつくからテストも兼ねて訴えてみてはどうか?」

 と返答された。

 レオン殿もそれもそうだ、と納得され早速我々に便宜を図って貰いたいと立場も顧みずに懇願された。

 我々もレオン殿の熱意に押されアラン様と連絡を取り、アラン様がファーン辺境伯と話され親子での通信テストを兼ねた会話がなされた。

 結果、ファーン辺境伯が領地に戻られるその時まで問題無く領地を預かり、セシリオ王国の情報等の対外情報も滞りなく収集していれば、ファーン辺境伯と入れ替わりにコリント領に駐在文官として赴任する事を許すという事になった。

 ファーン辺境伯が、

 「どうか愚息の我儘を聞き入れてはくれまいか?」

 とアラン様に頼まれ、アラン様は快諾された。

 レオン殿は通信が終わると小躍りされ、早速執務室に戻られ矢継ぎ早に仕事をこなされている様子で、自分は近い将来この非常に活動的な御兄弟が、コリント領で我々と一緒に生活する事になるのだろうなと確信した。

 

 10月8日

 

 以前と違い三分の一の日数で王都に到着し、ブリテン伯爵とフランシス子爵の王都における館に分宿する事になった。

 意外なことにファーン辺境伯は王都に館を持って居らず、もし王都で泊まる場合は高級宿を貸し切るそうだ、考えてみれば辺境伯というのは基本辺境にあって国にとっては他国等への防波堤の意味合いが強く、この様な機会でもなければ王都に来る事は無いのだろう。

 自分とガイもブリテン伯爵の館に入ったが、ガイを厩に入れようとすると馬が嘶くので仕方なく、フランシス子爵の厩にブリテン伯爵の館にいた全ての馬を移動させ、ブリテン伯爵の厩にワイバーン隊全てを入れた。

 その後ブリテン伯爵の館にて、明日からの対応として恐らくは本日にも開始される現宰相ヴィリス・バールケ侯爵の間者等による、こちらへの妨害工作、嫌がらせ、中立の貴族への多数派工作等が行われる事を想定し、こちらも王都の現在の情報収集を各々で分担し夜会合を持ち情報の精査と対策を行うと確認した。

 

 10月9日

 

 昨日中に王城へ4者其々の王都到着の報告を届けていたので、早速朝には明日行う論功行賞と戦争の際の状況説明を王に報告する為の諸準備を整えよ、との通達がブリテン伯爵とフランシス子爵の館にもたらされた。

 自分はアラン様から命じられた通りに、王城の大広間に設置する大型モニターと更に其れを拡大して投影する立体プロジェクターなる最新式の魔道具の起動確認等をしていると、ゲルトナー大司教がブリテン伯爵の館にアラン様との面会を求めて来られた。

 アラン様はブリテン伯爵の了承を得て、会議室を借りゲルトナー大司教との会談に臨まれ現在の王都の様子をゲルトナー大司教がアラン様に教えてくれた。

 どうも我々がコリント領に向かい1月余り経つと、王都の賊どもが息を吹き返し更には近在の賊共が元王都の賊が塒にしていた拠点等に移り住み、王都の治安は以前より悪くなっているという。

 その事で王と守備軍の評価まで下がってしまったらしい、何とも自分達があれだけ賊を捕らえたのに元の木阿弥とはやるせない気持ちだ。

 ゲルトナー大司教の話しは続き、ルミナス教アトラス派閥への現宰相ヴィリス・バールケ侯爵による不可解な介入の実態が話された。

 不可解な介入とは、ルミナス教の教義内容をアトラス派閥の物から変更しアラム聖国の信奉する教義内容にする事、そしてアロイス王国を経由してアラム聖国が派遣してくる司祭や神父を優遇し、従来のルミナス教アトラス派閥の司祭や神父は地方に配置転換する様にという通達が、現宰相ヴィリス・バールケ侯爵の名を持って布告されたという。

 アラン様は沈思黙考され、護衛の自分に連絡用の魔道具である小型通信装置をガイの背中の荷物入れから持ってこさせ、使い方を書いた説明書ごとゲルトナー大司教に渡された。

 いざとなったら躊躇無くコリント領側に通信を送られる事をゲルトナー大司教に頼まれ、ゲルトナー大司教も、

 「ありがとうございます、是非頼らせて頂くのでその際は宜しく頼みます。」

 と返答された。

 ゲルトナー大司教は帰る際アラン様に小さな声で、

 「使徒様の件では大変ありがとうございました。」

 と言われて帰られた。

 何の事かは自分には判らずじまいだったが、きっと自分の判らないとても高度な話なのだろう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。