人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月5日(コリント朝元年)
例の『トカレフ』と云うデグリート王国の誇る造船技術者の長の息子達5人と、イリリカ王国の若手魔法剣技術者が、トレーラーギルド所属のトレーラー野郎達が運転する50台に分乗して、帝都コリントに着いて俺らの巨大港湾施設にやって来た。
その巨大さと、あらゆる重機や、構造物によって連動して動くさまに、コイツ等驚いて動けねえでやんの。
こりゃあ暫く教育しねえと使いものにならねえやと、俺の弟子達に命令して2週間、徹底的に従来の技術や魔法の基礎を忘れさせて、最新の帝国の科学と魔法の基礎を叩き込む、通称『地獄の教室』に全員を連れて行かせた。
何故『地獄の教室』と言われているかというと、中途半端に従来の常識を持っている連中は、魔法学や科学と云う新しい常識について行けずに、半分発狂しちまう奴が居て、しょうがねえからその常識を叩き壊す為に、実証実験を本人の身体に叩き込むんで、その過程が辛いんだそうだ。
具体的に云うと、魔法は従来教本や魔導書による学習で魔法を覚えるとされていたんだが、帝国では『ナノム玉』を服用した上で、幾つかのイメージ動画を観せて実践させると、学んだ全員が今まで高等魔法とされていた『ヒール』をアッサリと習得してしまうから、魔術ギルドや宮廷魔術師が推進して来た従来の魔法習得方法は、間違いでこそ無いが、ひたすら迂遠な方法で無駄が非常に多い事が判ってしまうのだ。
こういった事例が幾つも有り、今までその常識で仕事をしていた奴程、これ迄の自分が全否定されたと思ってしまって、場合によっては自殺しそうになっちまったから、何も考えられなくなるくらいに、嫌と言う程に身体wp酷使させて、何度も自分自身で習い覚えたばかりのヒールと市販の『栄養ドリンク』(カーラ殿印の商品)で、その都度回復させると大体2週間程で、認識が改善して使える様になるのが、これ迄の経験則で判ってるから、まだ若いコイツ等なら1週間程で改善するだろうな。
7月12日(コリント朝元年)
予想通りに『地獄の教室』で鍛え上げたら、全員眼の色が変わってやがる。
『地獄の教室』の教員(何故か鬼軍曹とか云うニックネームが有るそうだ)達は、良い仕事をしてくれたぜ。
早速、8時からの帝国式柔軟体操を港湾作業員達と一緒に、ミッチリと行う。
この帝国式柔軟体操は、どの様な職種、立場であろうと早朝にやる事は、半分義務みてえなもんだからな。
なにせ、皇帝陛下のアラン様と皇后陛下のクレリア様からして、毎朝やっているのは何度もライブで放送されているから、殆どの華族の方々も8時の模範放送時に、行うのが当然の様になってるぜ。
俺の両親達に至っちゃ、シルバー何とか(あんまり多いからどれがどれだか判らねえ)の会の老華族の方々と、アスガルド城の前の広大な広場で、毎朝一緒にやっていて、そのまま今日は乗馬、今日はお茶会、今日はフィッシングと忙しそうだ。
あのバイタリティーは一体どこから出てくるんだろうな、謎だぜ。
話しが逸れちまったが、帝国式柔軟体操を終えた新人共に、現場で有る仕事場の清掃をさせて、いよいよ初仕事だ。
初日は、全員で様々な鋼板を用途ごとに仕分けして、現場に持って行く。
『地獄の教室』のカリキュラムの一つで、フォークリフト運転講習が有るから、問題無い筈だ。
案の定、全員直ぐに把握して各部署に鋼板を届けてるから、安心したぜ。
7月24日(コリント朝元年)
西方教会圏の歴訪を終えて、2週間しか経っていねえが、アラン様はスラブ連邦との決着を着けるべく、港湾施設でメンテナンスと補給をした帝国軍の艦艇が出港した。
いよいよ、重巡洋艦『バーミンガム』と超巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』がその勇姿を見せて出港して行く。
此れ迄、何百と云う陸上艦船を送り出していたが、やっぱり誇らしさと少しばかりの不安が、胸を去来しちまったぜ。
何と云っても、今回戦う相手となるスラブ連邦って奴は、例の『テュポン』ていう俺達が折角作ったヘリコプターを根こそぎ壊してくれた、化け物中の化け物を差し向けて来た憎い敵だ。
憎い敵では有るが、とんでもねえ強さを持つ敵なのは間違いねえ!
なので、俺とドップにドレイク殿は、思い付く限りの艤装を重巡洋艦『バーミンガム』と超巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』に施して、他の陸上戦艦『ビスマルク』と重巡洋艦『ドレッドノート』『ジャンヌ・ダルク』そして、フリゲート艦と駆逐艦にも出来る限りの強化を施した。
是非、その能力を如何なく発揮しスラブ連邦を倒して、あの地に平和を取り戻して貰いたいもんだ。
アラン様の演説も終わり、次々と帝国軍艦隊が出港して行く。
その出発を見送る帝国上層部の中心には、豪華な座席に座られたクレリア様が居られるのは当然なんだが、その知覚に娘のカレンがテオ君とエラちゃんと共に居るのは、何時もの風景で見慣れてるんだが、其処に見慣れない男子学生が娘の横に居る。
誰だろう?と疑問に思って眺めてたら、どうやらその俺の視線に気付いたらしく、男子学生が深く頭を下げて来た。
俺も思わず軽く頭を下げて、顔を見直して見たら、随分と特徴的な目で笑顔を向けて来た。
まあ、夜にでも娘に男子学生の事を聞いてみるかな。