人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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閑話79「ガトル親父の雑記」㉒(親父、若僧と娘カレンの仲を疑う)

 8月1日(コリント朝元年)

 

 先月、アラン様達を送り出した後、ドレイク殿と賢聖モーガン殿それにマリオンとか云う若僧と、賢聖モーガン殿の『大学』内の研究室で1週間の間、ひたすら実験と研究更には討論を繰り返して、ある程度の結果を出せたので、港湾施設の巨大実験棟で作製してみる事になった。

 作製するのは、賢聖モーガン殿所有の『飛空船』を更に強化して、自由自在に空を飛べて、人を100人単位で運搬出来る船。

 そして、帝国軍でも空軍で使用している、パラシュート等の脱出方法の弱点を克服した、個人レベルでの浮遊装置の量産化だ。

 かなりの難問だと思うが、俺は兎も角少なくとも4人の内ドレイク殿と賢聖モーガン殿は、紛れも無い天才だからきっと何らかの成果を上げられると思うぜ。

 

 「・・・其れでは、この浮遊理論はご理解頂けましたね」

 

 と若僧が他の3人に同意を求めて来やがった。

 それにドレイク殿と賢聖モーガン殿が、アッサリと頷いていやがる。

 何とも腹立たしい事に、若僧の構築した理論と研究室で見せられた実証実験は完璧に近い代物で、正に魔法科学と最新の物理理論の融合の良いとこ取りが出来てやがる。

 此れがある程度の経験を持った、大人の発言であれば俺も素直に納得出来たが、若僧は俺の娘と同い年の15歳に過ぎないのだ。

 然も、この若僧は最初に会った挨拶で、

 

 「御初に、お目にかかります、お父さん!」

 

 と、とんでもねえ挨拶をして来やがった!

 何時、俺がお前のお父さんになったんだよ?!

 更に気に食わねえ事に、妻と娘もその事に特に触れもせずに、接してやがる!

 

 その後のアスガルド城でのレセプションで、正式に『魔法大国マージナル』の留学生としての代表として卒なく演説して、クレリア様と帝国の教育関係者が勢ぞろいする中、堂々としていたそうだ。

 なんて小生意気な若僧だろう、15歳のガキなら年相応に詰まったり言葉を噛んでしまって、周りから温かく思われるのが愛嬌という物だろうに、この若僧は信じられないくらい対応を間違えない、なんて可愛くない若僧だ。

 

 8月10日(コリント朝元年)

 

 このマリオンとか云う若僧は、本当にとんでもねえ野郎だ!

 大体、人が使えない事でアラン様と賢聖モーガン殿が、半ば諦めていた浮遊魔法をほぼ独自の研究で物にし、お二人が認めた事で『ナノム玉3』をアラン様直々に貰っていやがる。

 未だにクレリア様以外には、賢聖モーガン殿とドレイク殿しか下されていない、最高の栄誉だぜ!

 ドレイク殿が服用したのだってつい最近の事で、これ迄の帝国艦隊全ての設計と造船をして、今回の艤装を終えての褒美で貰ったと云う経緯が有るからだ。

 ドレイク殿に聞いてみると、何とAR通信とか云う特別な場所に幽体の様な形で行けて、『イーリス』様と云うルミナス神と使徒のイザーク様の中間に位置する様な、知識の神の様なお方と話せる様になったそうだ。

 なんて羨ましい話しだよ、俺だって技術的な疑問で尋ねたい事が山程有るのによ。

 そんな羨望する栄誉を、こんな人生経験が殆どねえ若僧が、貰えてるんだぜ。

 ああ、判ってるよ、俺のこの愚痴はとんでもねえ才能を持った若僧への、醜い嫉妬だという事は痛い程判ってるんだよ!

 然もこの若僧は、これだけの待遇を受けていると云うのに、全然驕り高ぶる事がねえと来てやがる。

 俺達が今現在扱いている、トカレフを始めとした若手達に混じって、同じ作業をこなしてあらゆる知識を、現場で吸収しようとキツい力作業まで率先してやってやがるのだ。

 

 そしてこれが一番気に入らねえのが、時折俺の娘であるカレンが夏休みと云う事もあり、昼時に俺への弁当のついでに若僧の分まで持って来やがるんだよ。

 確かに、若僧は正式に働いている訳じゃねえから、大食堂に行っても食券を買わねえと昼食は食えねえが、そもそも『魔法大国マージナル』の留学生だから、帝国から充分なポイントを貰っている筈だから、余裕で買えるので、娘が気を利かせて弁当を持ってくる必要はねえ筈だよな。

 ちょっと気になって、娘と一緒に昼食を摂っている若僧の近くに座り、弁当の中身を覗いて見た。

 なんてこった!

 てっきり弁当の中身は、俺と同じで妻の作った昨日の夕食の残り物だと思ってたのに、明らかに内容が違い、確認の為に見た娘の物と内容が一緒でやがる!

 つまり、妻がワザワザ二人の為に朝から料理して用意しない限り、娘が二人分の弁当を朝から料理して用意したと云う事になりやがる!

 驚愕の目で二人を見ていると、若僧がいち早く気付いて、

 

 「カレンさんが持ってきてくれるお弁当には、大変感謝しています!

 僕は幼い時に両親を亡くして、賢聖モーガン様の庇護の元で、専門の料理人の作る料理を食べてはいましたが、家庭料理と云う物は食べたことは無かったんです。

 カレンさんが、僕との会話でその事を知って、有り難い事に港湾施設で研修を受ける際に、お父さんへの弁当を届けるついでに持って来てくれると言ってくれて、今日もご相伴に預からせて戴きました。

 お父さんとそのご家族には、感謝してもしきれません、ありがとうございます!」

 

 なんて、ぐうの音も出ねえ回答だよ。

 然もこの若僧、何度もお父さんとごく普通に言って来やがる!

 そんな若僧と俺を見て、娘の奴もコロコロと笑ってやがる、これは一度妻と徹底的に相談する必要が有るな!

 

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