人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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17. 10月の日記②

10月10日

 

 午前9時からの王臨席の会議に赴く為に、ファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵そしてアラン様は其々馬車に乗り王城へと向かう。

 その馬車に随伴する護衛等の従者用の大型馬車に、自分とハリーはモニター等の器材と共に乗り込みアラン様の指示があり次第会議室に設置する手筈になっている。

 先の戦争に従軍した将軍や武官そして貴族が全員会議室に入室し、最後に宰相を伴った王が会議室へ入り会議が始まった。

 自分は当初入室して居らず、隣室の従者待機所に他の貴族の従者共々待機していたが、仲良くしているファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵の従者達と会話しているとあからさまに敵意を含んだ視線を感じる、例の「ナノム玉」で精霊の加護を受けて以来、こういった敵意や殺意には以前に比べ相当な確度を持ってその対象を特定出来る。

 会話していたフランシス子爵の従者に小声で、部屋の窓側に屯ってこちらを見ている集団はどこの御家中かな?と尋ねると紋章を見るに現宰相ヴィリス・バールケ侯爵とロドン将軍の従者だと小声で教えてくれた。

 「成程、あちらにとってはこちらは目の上の瘤だろうからなと納得いった。」

 と小声で話すと同意とばかりにファーン辺境伯とブリテン伯爵の従者もクスクスと笑い、その様子を見て宰相と将軍の従者は不機嫌そうな態度だったが、別にこちらが失礼な言動をあちらに示した訳でもないので、抗議も出来ないようだ。

 1時間程経ち会議室からのお呼びで自分とハリー、そして手伝ってくれるブリテン伯爵、フランシス子爵の従者の方々が会議室に入室し、アラン様からの指示に従いモニターと立体プロジェクターの設置を行い5分程で準備が整った。

 そのまま自分とハリーは操作要員として会議室に残り、その他のお手伝いの従者が退室すると、徐ろにアラン様が話され始めた、

 「先程までの戦場記録係として従軍された書記官の記録された公文書の内容は、殆ど全て事実と異なると私アラン男爵とファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵は異を唱えたが、其れに対してロドン将軍と武官の方々及び従軍された貴族諸兄は公文書の内容は間違いなく更に宰相ヴィリス・バールケ侯爵もロドン将軍の意見が正しいと判断されるのですな?」

 と問い糾された。

 それに対して宰相ヴィリス・バールケ侯爵は、

 「当然である、長く軍務に精通され軍歴を積み重ねたロドン将軍が話された戦争報告は非常に納得がいくものであり、それに対してお主達の主張する報告内容は荒唐無稽であり、嘘偽りを王に向かって堂々と申告するとは不敬にも程がある、それよりもブリテン伯爵、フランシス子爵、アラン男爵にはロドン将軍の作戦行動に対するサボタージュと戦闘行為に対する不参加が他の武官と貴族の連名で申告されている、それに対する弁明は無いのか?」

 とアラン様達を弾劾してきた。

 それに対してアラン様は、

 「其の為の器材設置です。

 再度確認させて頂きますがロドン将軍と武官の方々及び従軍された貴族諸兄は公文書の内容は間違いなく事実であると主張され、宰相も其れに同心であると?」

 ロドン将軍は、

 「クドい!

 いつまでこの様なくだらない問答を繰り返すのか!

 お前達は王に対して誓約して臣下になった貴族の立場にありながら、国家の危機に対してサボタージュして我の作戦行動に反発し終には戦争にも不参加だったでは無いか!

 不忠にも程があるは!!」

 と激昂し罵ってきた。

 アラン様は王に向かい、

 「それでは真実と云う物をお見せ致したく、王様、魔道具の使用を御許可頂けますか?」

 と王に願い出でられた。

 ずっとこの間当惑された顔をされていた王は、その言葉に興味を惹かれた様子で即座に許可を出された。

 自分とハリーはアラン様の指示の元、戦争前日の作戦会議からの動画を立体プロジェクターで投影した。

 会議室の中央に大きく映し出される過去の映像、その真実の動画に我々以外の者は当初はただ驚いていたがロドン将軍と武官、従軍した貴族そして宰相は顔を青ざめさせ狼狽し始めた。

 動画は進み「紅」とブリテン伯爵、フランシス子爵合わせて2200が魚鱗の陣を以って、計3万人の敵軍に相対しているのに丘の上で戦おうともせず高みの見物を決め込むロドン将軍とその取り巻きがアップで映る。

 それを見て王は鋭い視線をロドン将軍達に浴びせ、無言のまま動画に視線を戻した。

 空軍による「ナパーム」、近衛軍による「オーディン」の軍団魔法に王は驚愕されながらも、お若い所以か徐々に興奮されて来られ、最後の方の空軍の「ハウリングパニッシャー」が会議室を揺らす程の轟音で放たれた時には大歓声を上げられた。

 動画が終わり興奮冷めやらぬ王は、用意されていた水を飲み干しアラン様とブリテン伯爵、フランシス子爵に称賛の言葉を述べられた、

 「素晴らしい戦闘だ、この様な戦いは数多くの物語を読んできたが一度も読んだ事が無い!

 この軍団を保有しているのが我がベルタ王国の貴族で、国の為に其の力いかんなく行使してくれた事に感謝する。」

 と最大限の賛辞を送られ、

 「アラン男爵、あの王都に来た例のドラゴンを戦争行為に使えるまでに飼い馴らすとは見事である!」

と言われるとアラン様は、

 「報告が遅れ申し訳無く思います。

 ですが一つ訂正させて頂きますと、飼い馴らしたのでは無く味方になって貰いました。」

 と笑いながら返答された。

 王は、

 「其の辺りの事情も是非聞かせて貰いたいが、今は其れよりも重要な案件が有るな。」

 とロドン将軍達に厳しい視線を向けられ、

 「ロドン将軍よ、先程までお主達の主張して来た内容と真逆のものを、余はこれ以上無いくらいの証拠で以って見せて貰った、何か弁明は有るか?」

 とロドン将軍達を問い詰めた。

 ロドン将軍達は動画を見せられる前迄の意気軒昂な様子はどこに行ったのか、顔面蒼白で黙り込みどう反応して良いのか判らないようで助けを求める様に宰相に縋る様な目を向ける。

 すると宰相がロドン将軍の代わりに答える様に、

 「王よ、騙されてはなりませんぞ!

 この様な如何わしい魔道具による魔法で、この者達は王を誑かそうとしているのです!」

 と顔を紅潮させながらも開き直った。

 それに対して王は、

 「宰相よ、可笑しな事を言うではないか?

 宰相も良く知っている通り、この場には精神に作用する魔法を阻害するアーティファクトが用意されている、このアーティファクトが作動している現状如何なる魔法であろうが、余に精神的に働きかける事は出来ない。それでもなお魔法による誑かしであると主張するのか?」

 と静かながら偽りは許さぬといった態度で王は宰相を問い詰めた。

 「そ、それは・・・。」

 と返答に窮した宰相に変わりアラン様が王に別の報告内容を話され始めた、

 「王様に先程の動画とは別の証拠となる動画と資料が御座いますので提示させて頂きます。」

 そう話されると同時に自分とハリーは、先の戦争での捕虜への聞き取りの動画とその供述調書の写し、更には「黒」が秘密裏に撮していた、ロドン将軍による武官そして貴族に対しての口裏を合わせる様依頼している根回しする様子が立体プロジェクターで再現され、極めつけはロドン将軍がルチリア卿とセシリオ王国のルージ王からの工作員に、この戦争が終わった後の地位の確約とその際の負け方の確認をしてルチリア卿とセシリオ王国の工作員をセシリオ王国に送り出すシーンが克明に映し出される。

 顔面蒼白となり大きな身体を震わせているロドン将軍を見て王は心底蔑んだ目をし徐ろに口を開かれた。

 「さて、もう弁明を聞く必要は無いと思う故、ロドン将軍と其れに同心していた武官そして貴族達に申し渡す。

 お前達は、有りもしない武功を言い立てて論功行賞を余にねだった上に、本来恩賞を受けて然るべきファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵そしてアラン男爵を誹謗中傷し、更にロドン将軍に至ってはルチリア卿と共謀の上ベルタ王国をセシリオ王国に売ろうとした国家反逆罪が明らかになった。

 当然本日開かれる予定であった論功行賞は白紙に戻し、精査の上で後日執り行う。

 先の戦いに従軍したロドン将軍と武官、貴族達はファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵、アラン男爵以外の者は取り調べの上で裁きを申し渡す!

 衛兵、この不届き者達を引っ立てて牢屋にぶち込めい!」

 狼狽して騒ぎ出すロドン将軍一派を粛々と衛兵が連行していく中、悄然として身体を戦慄かせている宰相

ヴィリス・バールケ侯爵に向かい王は疑いの眼差しで見ながら話された、

 「宰相ヴィリス・バールケ侯爵よ、お主が擁護していたロドン将軍はこの有様、更にお主の腹心たるルチリア卿は国家反逆罪に充当する嫌疑が掛けられた、お主は今回の休戦に至った功績はロドン将軍と折衝にあたったルチリア卿に有ると言い立てておったが、先の映像で裏の事情が露呈した今となっては却ってお主が今回の謀略に加担したのでは?という疑いが濃厚となった。

 よって宰相ヴィリス・バールケ侯爵よ、お主の宰相の任を解き領地での謹慎と閉門を命ずる。

 セシリオ王国に赴いているルチリア卿が帰り次第尋問を行い真実を確認。

 合わせてお主がしきりと勧めていた、お主の娘と余の婚約の件も今回の事で白紙とする。

 以上。」 

 と、王の決断が下った。

 がっくりと項垂れたヴィリス・バールケ侯爵は、暫くそのままであったが、衛兵が立ち上がらせ会議室から連れ出す間際、アラン様に向けて火が吹かんばかりの憎しみを瞳に宿した視線を向けたまま外に連れ出された。

 その表情を脇で見ていた自分は、これで事件解決では無くこの瞬間に新たな事態が始まったのではないかと思わずにはいられなかった。

 

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