人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
この第二回『世界武道大会』と日の本諸島編を暫く続き、因縁のアラム聖国と謎の大陸編へと向かいます。
どうぞお楽しみに。
5月20日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
我々が、崑崙皇国で激戦を繰り広げている間に就航した帝国産『飛空艇』初号機で、ザイリンク公国へ向かっている。
この『飛空艇』は親父達帝国の誇る技術者達が、心血を注ぎ込む事で完成した、初の旅客用の空を飛ぶ乗り物で、何と300人に上る旅客人数を誇り、たった12時間で帝都コリントからザイリンク公国に到着する事が可能で、1日1回の往復をしていた。
何れは何隻も就航するだろうが、今現在試験を兼ねた運航をこなしている。
その『飛空艇』には、今回の第二回『世界武道大会』に出場する選手団が搭乗していて、かなり緊張している様子が見受けられた。
今回の第二回『世界武道大会』は先年の第一回もそうであったが、まだまだ試行錯誤している最中なので、若干手探り状態なのだ。
なにせ帝国がその版図と同盟国及び友好国が、この1年だけでも3倍は膨れ上がっていて、その都度それぞれの国から参加者を募ったので、後から後から参加者が増えて、結局途中で参加者を打ち切った経緯が有って、来年も同様の事態が考えられて、ルールも流動的になると想定されるからだ。
それでも、今回の第二回『世界武道大会』が強行されるのは、先ず帝国自身が尚武の気質が強い(其れはそうだろう、何といっても帝国は戦争に勝つ事で版図を広げて来た)ので、当然の様に帝国民自身が向学心と武闘心を至上命題としている処が有る所為であろう。
お陰で厳密な意味では選手では無いが、小等部・中等部・高等部の代表も演武を公開する為に、この『飛空艇』に搭乗している。
ただ驚いた事に、そのメンバーにテオとエラの兄妹が代表に選ばれていて、小等部と中等部を代表して今隣に座って居るのである。
考えてみると、この二人が我々と共に過ごした濃密な時間は、そんじょそこらの子供が体験できるレベルでは絶対に無く。
然も、アスガルド城や学校現場で受けている教育は、凄まじいばかりの英才教育で有る。
勉学は、学校の基礎教育を最初期からミッチリと受けて、賢聖モーガン殿から魔法教育の粋と基礎魔法工学を学び、格闘技は拳聖に剣術は剣聖に学んでいるのである。
本人達も、アラン様とクレリア様のお側使えをする為に、日頃から頑張っているので、その習得スピードは尋常なものでは決して無く、大の大人と比べてすら高いレベルに有るのは知っていたが、まさか帝国中の同世代を代表する程になっているとはね。
その事を聞いてみるとテオは、
「まだまだ僕は、望むレベルに達して居ませんよ!
アラン様とクレリア様の恩に報いる為に、お二人のお子様であるアポロニウス皇太子殿下の無二の忠臣になって、お支えするのが自分の望みです!」
と随分と立派な申告をして、エラは、
「その通りです!
私も、アラン様とクレリア様の近習として恥ずかしくない成績を学校で取り、アポロニウス皇太子殿下の為に役立てる存在になるべく、日々此れ精進あるのみです!」
と年齢からすると、信じられないレベルの受け答えをして来た。
とても、アラン様を「アニキ!」と呼んで、幼い姿をみせていたクラン・シャイニングスターの頃が、まるで遥か遠い昔の様な成長を見せる二人の姿は、努力とは凄いものだと再認識させられた。
5月23日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
ザイリンク公国の公都にある、第二回『世界武道大会』の会場である”コロシアム”では、各地方から選抜された代表達が大会前の練習に勤しんでいる。
自分は、本来の職務である空軍の雑務を夜にズラして、日中は趣味と実益を兼ねた選手の安全管理の確認を、中央情報局の職員と一緒にしている。
と偉そうに表面上の職務を作り、事実上の休暇を楽しめてるのは、ベックとトールにキリコのお陰である。
この3人は、すっかり自分の留守中の実務を帝都コリントでこなし、ドラゴン達の進化も順調に進めていて、半ば部外者の様な自分より、軍の上層部への報告等は円滑にこなしているのだ。
この分だと自分の側近として、空軍の軍政を任せられる貴重な存在になりそうだ。
取止めもなくそんな物思いに耽っていると、「オオッ!」といったどよめきが聞こえて来て、何事かとどよめきの起こった人集りに近づいて行く。
すると其処では、小等部と中等部の代表による演武の確認をしている剣聖と拳聖が、帝国の代表に模範演武をさせているのが解ったのだが、演武をしている帝国の代表でも二人の演武が特に素晴らしくて、各国の代表とそのコーチや監督が驚いていたらしい。
何となく、その二人の目星が付く思いで伺うと、案の定テオとエラが模範演武を行っていた。
二人は当然、帝国の基本剣術と格闘術である、コリント流を披露しているのだが、そのスピードと正確性は明らかに同年代とは一線を画し、段違いの高みに達している事が傍目に見ても感じられる。
剣聖と拳聖に至っては、二人の演武を当然の様な顔で頷いている。
いやいやちょっと待ってくれよ剣聖と拳聖様。
あんたら、この二人に対してどんなレベルで鍛えているんだよ?!
とてもでは無いが、テオとエラが到達している身体能力は、帝国の軍人レベルでも一般兵では勝てないと思わせるもので、下手をすれば一般親衛隊と同等と感じられた。
此れは、我々もうかうかしていると、剣聖と拳聖が天塩に掛けた学生に、少なくても格闘分野で追い越されてしまうのか?!
と有り得る未来を想像して、思わず背筋を冷や汗が流れるのを感じた。