人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月26日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
自分は、朝食を共に摂った『ロビン・フッド』と一緒に、昨日受付た飛び入り参加申請の案内に従い、『弓矢等遠距離部門』の予選に向かった。
『弓矢等遠距離部門』の予選は、100メートルの距離を開けた的に対して、矢かそれに準じた投擲武器を中心に向けて放ち、その成績順に決勝に残る事になっていて、各地方選抜ではこの予選は既に終えていた。
しかし、この飛び入り参加だけでも2000人に及ぶ応募者が居て、予選会場は参加者とその関係者でごった返している。
些か辟易として居る所に、知り合いが訪ねてきた。
「おや、てっきり他の部門の見学に行って居られると思っていましたが、『弓矢等遠距離部門』の見学とは想定外ですな」
と西方教会圏では異装の出で立ちで、やって来たのは先日まで共に轡を並べていた、『岳飛』殿と『霍去病』殿だ。
「お久しぶりです、『岳飛』殿に『霍去病』殿。
お二人も見学に?」
と聞くと、
「否、我々二人も昨日に飛び入り参加申請をさせて頂き、本日の予選を受けに来たのだよ」
と、アッサリと答えて、予選会場を見回す。
すると、若干の騒ぎが予選会場で起きている様だ。
どうやら、『ロビン・フッド』殿が係員に対して注文している様で、係員も困った顔をしている。
自分も『岳飛』殿と『霍去病』殿を連れて現場に行くと、どうやら『ロビン・フッド』殿が予選内容が簡単過ぎると文句を言っているようだ。
「こがに、簡単な試験では同率1位が多く出すぎて、決勝戦に出る人数が多くなって面倒でかなわん。
それより、予選を難しか内容にして、最初から絞るのが合理的ぞな!」
と係員と自分に言ってきたが、今回が『弓矢等遠距離部門』の大会部門での初競技なので、次回からは検討する旨を説明すると、不承不承ながら了解してくれた。
「しかし、こげな動かん的に矢を射るのは、おいの誇りが許せんぞな!
仕方無かが、一遍に射ちもす!」
と『ロビン・フッド』殿が言うやいなや、5本の矢を同時に弓につがえると、禄に的を水に一斉に矢を放った!
エッ!と思う間もなく、5本の矢は5本とも狙い違わず、5個の的のど真ん中に突き立った!
その神技を見て、周囲に居た予選参加者が一斉に息を呑むのが聞こえる中、無造作に『ロビン・フッド』殿が係員に予選大会用に借りた弓を返していた。
自分初め多くの関係者が、呆気にとられる中、『ロビン・フッド』殿は、
「やはり、簡単でごわす。
距離も短すぎるでごわんで、クリアする者が多く出るぞなもし」
と苦々しく呟いていたが、どう考えても今の神技を再現する者が多く居るとは考え難い。
そう考えていると、順番になった『岳飛』殿が笑いながら自分に話しかけた。
「ケニー大佐!
先程の方とはまた違う技をお見せしよう!」
と言われるやいなや、素早い動きで矢をつがえ無造作に放った。
矢は当然の様に的の中心を穿つが、『岳飛』殿は素早く第二射の矢を放つ。
何と其の矢は、矢羽根の尻の部分である矢筈に突き立つ!
そして、次の的でも同様に第一射の矢が中心に突き立ち、第二射の矢が第一射の矢の矢筈に突き立つ!
此れが計5回繰り返されて、先程の『ロビン・フッド』殿の神技に感嘆していた面々が、同等の神技にホーッ!と溜め息をついた。
すると続けて順番になった『霍去病』殿が、
「流石『岳飛』殿!
『神弓』の称号は伊達では無いですね。
ですが私も『弓聖』の称号に賭けて負けませんよ!」
と呟くと、見当違いの上方に向けて矢を放ち、続けざまにやや左と右、そしてやや上と下に向けて矢を放つ!
どうして?と疑問が浮かぶが直ぐに答えが出てくれた。
5射した矢が同時に5此の的の中心に突き立ったのだ!
つまり最初に上方に射った矢が弓なりに的に突き立つ間に、時間を調節したそれぞれの方向に射った矢が曲射で個別の的に、同時に突き立つ様にしたのだ!
この技も、前の2つの技と負けていない、正に神技と称して良さそうだ。
周囲が騒然としている中、自分と他の3人は予選会場を退出して、滞在しているホテルに向かう。
道中歩きながら、先程の神技を褒め称えると、心外だと3人ともに言ってきた。
疑問に思い、何故か?と問うと、3人共に同じ事を述べた。
「可笑しな事を仰いますねケニー大佐!
正直、先程の弓矢でやった技を、帝国軍では『ナノム玉』を服用した軍人ならば、殆どの者が攻撃魔法で同様な事が出来るでしょう。
我々弓使いにとって、その事実を突きつけられた瞬間は、今までの修練を否定された思いで、立ち直るのに苦労しましたよ!」
と『岳飛』殿が言われて、他の2人も「其の通りだ!」と言わんばかりに頷いている。
考えてみれば、自分でも『ファイアーアロー』等の攻撃魔法を使用すれば、確かに同様な事が出来る。
但し、其れはあくまでも帝国の魔法技術の習得プログラムの優秀さと、『ナノム玉』のお陰であり、魔力を介在させずに同等の攻撃力で敵を倒せる技術は、決して碑下される物ではない。
その事を3人に告げると、3人共にややはにかみながら笑ってくれた。
自分は、何とかこの弓術の良さと発展性を、アラン様と相談してみると3人に伝え、3人も「お願いする!」と同意してくれた。