人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
10月11日
昨日に続き王城に早朝から呼び出され、ファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵そしてアラン様は昨日と同じ会議室に通された。
昨日と同じく立体プロジェクターとモニターの操作要員として自分とハリーは随行したが、他にも其々の家臣が複数人同行していた。
早朝に関わらず顔を紅潮させた王が形式を諸々省略して入ってこられ、皆慌てて跪こうとすると、
「皆、挨拶はそこそこで良いから早速諸問題を解決しなければならないので、顔を上げて欲しい。
なにせ政務を司る中心の宰相を蟄居させた所以で、余が親政せねば政治が滞り国が立ち行かぬ、と言った処で余は宰相の言うがままに決済をした事しか無く良い知恵も浮かばぬ、だが余には国を想い国の為に血を流す事を厭わず戦ってくれた諸卿が居る!
諸卿ならば余に良い知恵と指針を授けてくれるだろう、どうか余を助けてはくれまいか?」
と仰せられた。
皆恐縮する中、年配のファーン辺境伯が始めに顔を上げられ話始めた、
「陛下、率直に現状を話され、陛下にとって恥になりかねない今までの政務を宰相に握られていた事実を我等に話して頂けた事、我等をご信任頂けた証と我等一同感動しております。
このファーン辺境伯ルキウスは、より一層の忠誠を誓うものであります!」
其れに続けて、
「我等一同同じく、より一層の忠誠を誓うものであります!」
と皆唱和した。
王は感動された様で瞳に涙を浮かべながら、
「皆の忠誠の誓い、余は大変感動した!
これこそ本当の忠誠の誓いなのだな、今まで宰相始め王都に居た貴族達の心のこもらぬ誓い、あれは一体なんだったのであろうな?まあそれは今はどうでも良い、ファーン辺境伯よ早速だがどの様にすれば良いか具体例を挙げて余に示して欲しい。」
と仰られたのでファーン辺境伯は、
「それでは、先ずは此処に居るアラン男爵をお頼りください。
陛下も御存知の通り彼は素晴らしい人材です、今般の状況の好転は全て彼のお陰であると言って良いでしょうから。」
と言われ、王も頷きアラン様に向き直り尋ねられた、
「アラン男爵、ファーン辺境伯の言われる通り今回の事態の好転は全てそなたのお陰といえる、そなたならば今後のベルタ王国の進むべき道が見えているであろう、余にその道を示して欲しい。」
との問にアラン様は、
「勿体無いお言葉有り難く頂戴致します、それでは陛下の問に対して幾つかのご提案が有りますのでお聞き届け頂けると幸いです。」
との答えに王は頷かれたので続けてアラン様は答えた、
「第一の提言は、政策を陛下とともに担う官僚の刷新です。
今まで宰相とその一派が陛下のご命令であると偽り、好き勝手に自分達に都合の良い施策を全土に向けて行い現在ベルタ王国は衰退の道を辿っており、遠からず他国から攻められるか内から崩壊するかの二者択一の状態に有り、先の戦争は前者の他国の侵略という形で現実化しました。
その状況を打破する為に、宰相一派に追いやられた前宰相ヴェルナー・ライスター卿付きの官僚及び政治に精通された貴族の方々を復帰させるのです。
幸いな事に此処に居られるフランシス子爵は、その辺りのご事情を良く御存知で官僚と貴族の方々の復帰を取り計らう事が出来るでしょう。」
との答えに王はフランシス子爵に問われた、
「フランシス子爵よ、アラン男爵の言われた通りに事を取り計らうのは可能であるか?」
と言われフランシス子爵は、
「可能です。官僚については左遷させられた際に我が領内に匿い、領地の政策運営を担って貰っていましたし、貴族の方々とは常にサロン等で現状に対する不満と自分ならばこうするといった意見を戦わせておりました、両者共に復帰させて頂けるならば直ぐに応じる事でしょう。」
と答えられ王も安堵された様だ。
続けてアラン様は、
「第二の提言は、軍事面の強化です。
第一の提言と同じく宰相一派に追いやられた、武官と軍人としての経験豊富な貴族は地方に追いやられ冷や飯食いに落とされており、その方々を復帰させるには同じ立場にあったブリテン伯爵が適任でありましょう。」
王も尤もだと頷かれ、
「余もこの事に関しては宰相に何度も問うていたのだが、あやつらは忠誠心が無いだの軍事力を与えればクーデターを起こしかねない等と言を左右にして余の言うことを聞かなんだ、今になって思えば宰相にとって都合の悪い武官と貴族だったのであろうな。
ブリテン伯爵よ、お主も余の不明で被害を被った被害者で有るがベルタ王国の為に力を貸してはくれまいか?」
とブリテン伯爵に要請した。
ブリテン伯爵はそれに答え、
「とんでもなき事、全てはヴィリス・バールケめの策動で有り陛下に落ち度は御座いません。
そして宰相一派に追いやられた者共も一声かければ、ベルタ王国の為に直ぐに馳せ参じる事でしょう!」
と力強く言われた。
王はそれに対しても安堵された様だ。
更にアラン様は、
「第三の提言は、王都の治安回復です。
以前私がヘルマン・バール士爵と共に行った王都に蔓延る賊の討伐により、王都の治安は良い方向に向かっていましたが、私が王都から去ると宰相により私が施した施策は尽く有名無実化され、掲示板には新たな情報や賊から回収された物品の更新も無かった様です。
此等の事を踏まえ今一度私が護国卿として、王都の賊を追い払い且つ二度と賊が王都に蔓延る事が無いように手当致します。」
と言われ王は、
「何と!王都はまたもその様な事になっていたのか?
その様な報告は一切受けていなかったぞ?!
ヴィリス・バールケめ、余を謀って情報が耳に入らぬ様にしていたのだな。
彼奴の罪状に更に追加せねばな。」
と憤慨された。
アラン様も同意といった様子で頷かれ最後の提言を述べられた、
「最後の提言は、セシリオ王国への対応です。
昨日の宰相一派の態度やロドン将軍とルチリア卿の暗躍が示した事実から、セシリオ王国との休戦とはでっち上げで内実はロドン将軍達が自分達の栄達の為にベルタ王国を売ろうとした事実から考えると、再度セシリオ王国が侵略して来る際に国境線の防備を緩める為の虚偽で有ると想定されます。
ならば今現在国境線に配備されている国軍はロドン将軍が配置した事実から類推すると、セシリオ王国が攻め寄せた場合には戦わずそれどころか水先案内人として国土に誘引する役になるのでは?と考えられます。
これに対応する為には、第二の提言を早急に行い国境線の国軍を信頼のおける指揮官と兵士に入れ替える必要が有り、それでも駄目な場合は前回と同じくファーン辺境伯の城邑にて食い止める事になります。
よって前回を教訓として活かす為にファーン辺境伯には私と同じく護国卿に任じて頂いて、緊急時の他貴族への援軍要請等を迅速に行える様に体制を整えると共に、我がコリント領から「魔の大樹海」を縦断する道を通す御許可を陛下に求めるものであります。」
と提案された。
王は驚かれたご様子で疑問を投げかけられた、
「ファーン辺境伯を護国卿に任じる件は尤も至極であるから、後日執り行う論功行賞の席で護国卿の盾を贈らせて貰うが、「魔の大樹海」を縦断する道とな?アラン男爵はあの「魔の大樹海」に道を通せるというのか?」
と問われた。
其れには、ファーン辺境伯、ブリテン伯爵、フランシス子爵が現場を見ていなければさもあろうと苦笑され、アラン様は予め「放送局」に作らせていたコリント領のPR動画をモニターに映すように自分とハリーに命じられたので、大型モニターに環境音楽が優雅に響くコリント領のPR動画が再生される。
王は初めて見るPR動画に驚かれながらも、其処に映し出されたコリント領の「魔の大樹海」に有るとは思えぬ先進的な街並みと工場群、ドームという人が作ったとは思えない構造物そしてその中を走る車両に魅了され顔を紅潮させながら食い入る様に画面を凝視し続けた。
やがてPR動画が終わると興奮冷めやらぬ王は、
「アラン男爵、信じられぬ街をよくぞあの「魔の大樹海」に作り上げた。
正直今なお夢を見せられたのではという思いがあるが、この部屋は欺瞞を伴う魔法は使えぬので全てが真実なのは疑いない。
これならばファーン辺境伯領まで道を作れるのに納得が行く、当然許可を与えるので早速着手して貰いたい。
其れとは別だが、あの映像に出てくる馬車の荷車部分だけで自走する乗り物は一体何なのだ?」
とアラン様に問われたので、
アラン様は、
「{モトローラー}という物で種別では車両と申します、実は陛下に献上する為に王城に運んで参っておりますので、後程ご案内致します。」
と言われ、
王は、
「何と真か?!
其れは素晴らしい献上品だ、是非後で案内してくれ!」
と言われたのでアラン様は、
「畏まりました。」
と快諾された。
王は、
「アラン男爵の提言は全て至極当然であり、理に適うものであった。
皆先の戦争から、苦労を掛け続けて心苦しく思うが此れも全ては明日のベルタ王国をより良くし住みやすい国土を保つ為の必要な努力であると寛恕して貰いたい、後日執り行う論功行賞では今後してもらう仕事に見合う其れ相応の役職を用意するので、各々貴族としての職責を全うして貰いたい。」
と仰られた。
アラン様達一同は片膝を着き、王に対しての誓いを返された。