人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月2日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
昨日の『徒手空拳部門』の予選も終わって、全ての部門の決勝戦出場者も決まり、人類銀河帝国皇帝にして大会主催国の代表で有るアラン様は、モニターで明日からの第二回『世界武道大会』の主旨と展望を述べられた。
「西方教会圏全ての国家、そして北方諸国及び崑崙皇国とその周辺国家の国民の方々とその代表の方々の協力のお陰で、かくも大規模な大会を開催出来る事を、人類銀河帝国代表たる私アラン一世は大変感謝しております。
各国の協力のお陰で、先年の様に急遽集合させて無理矢理開催するしか無かった第一回『世界武道大会』と異なり、今回のの第二回『世界武道大会』は西方教会圏だけでも地方大会が行われ、教育機関で有る『学校』でも教育カリキュラムに於いて、この大会を目標としたプログラムが組めました。
何れはこの様な身体を使った大会だけで無く、科学・魔法・芸術等の分野でも大会を開催したいが、我が帝国に於いても未だ完全な交通インフラや『学校』での教育が行き届いていないので、武道の様に応募者の身体一つだけで開催出来る様な事は出来ておりません。
しかし、この大陸を覆っていた戦乱も或る程度落ち着いた現状、何時かは今回の第二回『世界武道大会』以上の大会を、文化面でも開催出来る様に我が帝国は努めて参る所存!
各国の代表に於いては、帝国への協力を今後もお願いしたい!
その為ならば帝国は、各国に対し惜しみ無い援助を確約しようと思う!」
とアラン様は宣言された。
此れを受けて各国は、公式な声明を発表し今大会と同様かそれ以上の協力を、帝国に打診した様で、帝国からも返礼を直ぐに打診したそうだ。
この夜の大会前夜祭には、各国代表以外にも、著名な人物や大富豪そして様々な業界人が列席した、大規模なパーティーが元皇城の迎賓館で執り行われ、自分と家族も招かれて参加した。
実際の処、そんなにこの様な上流階級だらけのパーティーは、肩が凝るばかりで辟易するので、程よい処で退出させて貰い、ミーシャと息子のケントを連れて空軍が借り上げているホテルで家族水入らずで過ごさせて貰った。
6月3日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
朝9時から開会式が盛大に行われて、直ぐに小等部と中等部による演武大会が始まった。
小等部は、体格的な面もあり『徒手空拳部門』の演武のみで、各地方の選抜で選ばれた男子女子の20人程が、コリント流と神拳流つまり、『学校』の正式授業項目を一人ずつ演武して行く。
そしてとうとうエラの番となり、エラの事を良くしる自分と妻のミーシャは、固唾を飲んで見守った。
すると、エラは子供とは思えない堂々とした居住まいで、”コロシアム”に作られた舞台の中央に進むと、大会主催者の席に座る、アラン様ご夫妻とクレリア様の腕に抱かれたアポロニウス殿下に大きく会釈して、これ迄の演武者と同じコリント流と神拳流の型を演武し始めた。
”其れは美しかった!”
エラと同じ年齢層の小等部の学生と同様の内容なのに、その躍動感!その素早さ!そして跳躍力!が全て桁外れで、観る者を陶然とさせて、モニター越しの観客が思わず溜め息を零している事が、容易に想像できた!
そして1連の型を終了させて、再度アラン様ご夫妻とクレリア様の腕に抱かれたアポロニウス殿下に大きく頭を下げて舞台から降りてくると、此の場にいる観客は全てといって良いほどの人数が、スタンディングオベーションをして、会場は拍手喝采の渦に巻き込まれ、暫くの間拍手の波は収まらなかった!
続いて中等部による演武大会が始まった。
中等部は『徒手空拳部門』の演武と『近距離武器部門』の2つで、小等部同様の演武と人体に似た人形に対しての演武も行う。
やはり中等部ともなると、高学年の学生は殆ど大人と変わらない者も居るから、迫力が半端では無くて、型を行っているだけで迫力が有る。
そして人形に対しての演武となると、その迫力は更に増して絶え間ない連打や、力強い打ち込みには観客も、各演武者が演武を終える度に惜しみ無い拍手が巻き起こっていた。
そしてとうとうテオの番が回ってきた!
テオは顔を紅潮させながらも、シッカリとした足取りで舞台中央に陣取ると、妹と同じくアラン様ご夫妻とクレリア様の腕に抱かれたアポロニウス殿下に大きく頭を下げて、挨拶を終えると「ハッ!」と気合いを入れて演武を開始した!
《やはり兄妹だな、動きがそっくりだ!》
流石と言うべきか、妹で有るエラを彷彿とさせる優美な動きの中にも、やはり男の力強さを見せるその演武は、又も観客の目を釘付けにして、殆どの者がその動きに魅了されていた!
そして、エラの時と違う人体に似た人形を使う試技をテオが披露する。
何とテオは人形の頭部目掛けて、凄まじいスピードの回転蹴り、コリント流に於ける蹴り技『旋風』を放つと、そのまま宙を駆けて、昇竜脚と降竜脚を放ち、止めに踵落としを叩き込んだ!
その流麗と云える動きは、正にアラン様を彷彿とさせて、テオが如何にアラン様に近づくために努力したのかが痛いほど判った!
続いて、『近距離武器部門』の演武で、テオはオーソドックスな剣を構えると、コリント流の基礎技とも云うべきコンボを人形に叩き込んだ!
その正確に人体の急所に当ててみせる剣技は、テオがどれ程この基礎技コンボを繰り返して習得したかが判った。
そして、暫く幾つかの基礎技を人形にテオは叩き込み、突然剣を下段から掬い上げる様に人形を空中へと浮かす。
次の瞬間!
テオの目が強い眼差しとなると、テオが或る構えを取った!
《その構えは!》
そう、その構えこそは、帝国軍人がコリント流剣術 の奥義として学ぶ最初の技『ジャスティス・ジャッジメント』!
上段に構え、己の中にある魔力を剣に通してその凄まじい剣速と共に、剣を地面ごと切る程の勢いで振り切る事を極意とする極め技である!
シッカリとその極意を理解して放ったコリント流剣術 奥義『ジャスティス・ジャッジメント』は、物の見事に人形を唐竹割りに頭頂部から一直線に真っ二つにした!
「オオオオオーーーーーッ!!」
予めこの演武で使用する剣は、刃の部分を潰していて、通常の方法では人形を斬る事は叶わないと理解している観客は、中等部の学生で有るテオが、完璧にコリント流の奥義を習得している事に喝采を上げて称揚したのだ。
観客が全員スタンディングオベーションを上げる中、テオは全ての演武を終えて満足そうに頷くと、アラン様達家族に向き直ると、深々とお辞儀した。
アラン様とクレリア様も大きく頷き返していたが、その時一つの事が起こる!
クレリア様の腕に抱かれ、物珍しそうに学生の演武を見ていたアポロニウス殿下が、明確にその小さな両手をパチパチと叩かれたのだ!
そのアポロニウス殿下の明らかな意思表示に、1番驚いたのはどうやら褒められた当のテオらしく、直ぐにその場で大きくもう一度頭を下げたが、アラン様とクレリア様がテオを主催者席に呼び、アポロニウス殿下直々にテオを褒めさせてくれた。
テオはアポロニウス殿下の小さな拍手を目の前で見せられて、耐えられなくなったのか土下座する。
そのテオをアポロニウス殿下は、「アー、アー、」と言われながら、にこやかな笑顔で見られている。
アポロニウス殿下のあまりにも愛らしい仕草に、全ての人が和み、全ての小等部と中等部による演武大会が終わりを迎え、昼食の為の休憩時間が取られたが、想像を超える小等部と中等部の演武に、人々は興奮しながら会話してそれぞれが食事を摂った。