人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月4日①(人類銀河帝国 コリント朝2年)
昨日は午前の小等部と中等部による演武大会と、午後の高等部の演武大会と神拳流と神剣流の年少弟子達の合同演武により、成年以下の若者達の武道を如何無く観客達に観せた。
そして、今日からは本大会の武道会が各部門で開催される。
本日は、『両手持ち武器部門』の決勝大会が行われ、優勝者まで決められる。
各地方の予選と、先日の飛び込み申請を経て選抜された20名が、勝ち抜き戦を戦う。
『両手持ち武器部門』と云う事で、両手で持つ長物の武器と片手ずつに武器を持つ、武道家が戦い合うのだが、中には珍しい武器を使用する武道家もいる。
正にその典型と云える試合が行われたのが、勝ち抜き戦の2戦目で、一方は一般的な長さの槍で、対戦側は『ウルミ』と云う武器で有った。
『ウルミ』と云う武器は、フレキシブルソードとも呼ばれ、柔らかい鉄で作られた長剣であり、普段はベルトのように腰に巻きつけているが、剣として使う場合は幾重にも分かれて波打つ様にうねって巻き付かせる様に使用する。
この『ウルミ』を使う武道家は、西方・北方・東方で一切見なかった、肌が黒い異邦人で顔も真っ黒でとても珍しい。
だが、陶然この『世界武道大会』はどの様な人種性別が不問で参加出来る、
彼は、飛び入り参加の予選を勝ち残っていた。
「ドオオオオオオオーーーーーン!」
と開始の太鼓が叩かれて、空気が震動する中、試合が開始された。
因みに武器は、自身の武器でも大会運営側が用意しても良いのだが、この”コロシアム”のアーティファクトとしての能力で、全ての武器に殺傷能力を失わせている。
なので槍は人を貫けないし、ウルミは肉を切り刻む事が出来ない。
精々、人や武器に巻き付く事が出来る程度だろう。
だが、如何に殺傷能力が無かろうが、打ち身や青痣を残す事は可能なので、当然”コロシアム”には、相当な人数と腕の確かな医療施設とスタッフが併設された建物に準備万端で、配置して有った。
真っ黒な男は、両手に持つウルミを旋回させて、自身の周りに一種の結界を構築した。
槍を構えた対戦相手の男は、想定外の武器への対処方法が無いようで、かなり腰の引けた槍の突きを繰り出した。
そしてそれを見越した真っ黒な男は、ウルミを回してその中途半端な突きを行う槍をたちまち巻き上げて、対戦相手から槍を取り上げた。
そして得物を取り上げられた対戦相手は、呆然としてる処を審判から、続行するかと聞かれると降参した。
この様な対戦が、幾つか行われて勝ち抜き戦が進み、4人が勝ち抜き準決勝戦となった。
その面子は、第一準決勝戦『趙匡胤』殿VS『マルコ』(ウルミの使い手の真っ黒い男)。
第二準決勝戦『シュバルツ』殿VS『蘭陵王』殿。
早速第一準決勝戦が開始される。
趙匡胤殿は愛用の大薙刀を轟々と頭上で旋回させ、マルコのウルミによる結界に堂々と踏み込んだ!
マルコは、ウルミを四方八方から趙匡胤殿に向けて放ち、巻き付かせようとした!
それに対して趙匡胤殿は愛用の大薙刀の先端部分に、敢えてウルミを巻き付かせ、そのまま一気に引っ張りマルコはタイミング悪く趙匡胤殿と武器越しに引っ張り合おうとしたが、力の差が有りすぎて趙匡胤殿に向けて体勢を崩された形で引っ張られる。
その対戦相手のマルコに向けて、趙匡胤殿は両手を揃えた構えを取り、マルコの腹部に向けてそのまま揃えた両手を叩き込んだ!
「崩拳!」
と趙匡胤殿は呟かれ、マルコはガクガクと震えて地面に突っ伏すと、ビクンビクンと震えている。
審判は当然趙匡胤殿を勝者と判定し、第一準決勝戦は終了した。
5分間の舞台の清掃の後、第二準決勝戦が開始された。
シュバルツ殿と蘭陵王殿の得物は、奇しくも双方双剣であり、然も敢えて己の愛剣では無くて大会側が用意した試合用のなまくらで有る。
なので、双方共に一撃で相手を倒そうとは最初から考えておらず、明らかに武器が保つ限り斬り合おうとの意図が読み取れた。
「ドオオオオオオオーーーーーン!」
との太鼓での合図で第二準決勝戦が開始すると、双方共に一気に突っ込む!
「キキキキキーーーーーーン!」
凄まじいばかりの連続した金属が弾き合う、独特な音が響く中、シュバルツ殿と蘭陵王殿は同じ様な笑みを口元に貼り付けて、50合程斬り結んだ!
双方の技量に明確な差を自分では判断出来ないでいて、決着を予想出来ずに居ると、蘭陵王殿がヒラリと空中に舞を舞う様に跳ぶ!
次の瞬間蘭陵王殿の双剣が閃き、頭上からの攻撃をシュバルツ殿が双剣で捌く。
信じ難い事に蘭陵王殿は、一度地面に着地すると、圧倒的な滞空時間の中でかなりの回数双剣で、シュバルツ殿に斬りかかった。
蘭陵王殿が空中での攻撃による立体殺法を繰り出してきてから、シュバルツ殿は若干追い詰められ始めたようだ。
なので嵩にかかって蘭陵王殿は、空中からの攻撃に重点を置き頭上からの攻撃を増やす。
それに対してシュバルツ殿は、防御に専念し始めたと思える様な体勢になり、徐々に身体が小さくなった様に縮こまった様に見えた。
其処に止めとばかりに、蘭陵王殿は上からの強力な斬撃を放つ!
しかし、その斬撃がシュバルツ殿に届く瞬間!シュバルツ殿の身体が爆発した!!
其れはワザと縮こまったシュバルツ殿が仕掛けた罠で、そして其れは或る技の始まりであった!
《あ、あれは?!》
そう、その技は帝国軍の必須取得剣術で有るコリント流剣術に於いて、奥義とされる秘技!
つまり、神剣流の免許皆伝者である剣王『シュバルツ』殿が、面子や体面にこだわらずコリント流剣術の奥義を繰り出したのだ!
シュバルツ殿の身体が爆発した様に見えたのは、実はシュバルツ殿自身が気をワザと窄ませて、ここぞと云う瞬間に一気に全身から発勁として解き放ち、相手に喰らわせるのである!
そしてその所為で、空中に縫い留められる様に固定させられた蘭陵王殿に向かい、シュバルツ殿は己の双剣に有らん限りの気を込めてぶち込んだ!
避ける事も出来ずに蘭陵王殿はそのまま空中高く打ち上げられ、舞台外に落ちた。
「コリント流剣術奥義『ビックバン・バースト』!」
そう確かに今の技は、コリント流剣術奥義『ビックバン・バースト』に少しシュバルツ殿向けに変えた技であった。
流石に此の様な秘技は、崑崙皇国には存在しなかったのであろう、蘭陵王殿は白目を剝いて気絶していた。
審判は直ちに判定を下して、舞台脇に待機していた医療部隊に蘭陵王殿を回収させた。
そしてシュバルツ殿にも休憩時間をシッカリと取らせ、30分後に決勝戦を行う旨を宣して、第二準決勝を締めた。