人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

262 / 352
6月の日記④(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『両手持ち武器部門』②》

 6月4日②(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 2回の準決勝戦が終わり、決勝戦を行う前にアラン様家族の元に向かった。

 アラン様とクレリア様がにこやかに笑って出迎えてくれて、クレリア様の腕に抱かれていたアポロニウス殿下が、いち早くミーシャの腕に抱かれた息子のケントを見つけて、小さな手を懸命に伸ばしてケントと手を握り合おうとして来た。

 それに対して息子のケントも、小さな手を懸命に伸ばしてアポロニウス殿下と手を取り合おうとしている。

 クレリア様とミーシャは、近くに設置されていた木製のベビーコート(2メートル程の囲い)に赤ちゃん同士を入れてあげる。

 アポロニウス殿下と息子のケントは、「キャッ、キャッ、」と騒ぎながらずり這いして、お互いに近づき、お互いの手でお互いの身体をペチペチと叩いたり撫で回している。

 その姿を横目に見ながら、先程の準決勝戦とこれから始まる決勝戦の話題でアラン様と自分は盛り上がり、クレリア様とミーシャは赤ちゃんの話題で盛り上がってる。

 やがて30吩経って、シュバルツ殿と趙匡胤殿が舞台に両側から上がっていく。

 此れ迄の戦いぶりと、今までの二人の戦歴や活躍がモニターを通して紹介されて、観客の興奮は更にボルテージを上げて行くので、”コロシアム”内外の熱気は鰻登りである。

 自分達が見学している場所に、シュバルツ殿の妻であるターニャさんが合流して来て、娘さんのエレンちゃんをそのまま息子達の居るベビーコートに入れてあげている。

 赤ちゃんズの中でも一番小ぶりのエレンちゃんは、息子達の中でもアイドル扱いで、アポロニウス殿下と息子のケントも手荒くしないで、ニコニコ笑いながら与えられた『ミルク・ボーロ』を手渡して来て、エレンちゃんが食べてくれると盛んに喜び合っている。

 そんな場違いに和んだ場に比べて、舞台ではシュバルツ殿と趙匡胤殿が向かい合い、戦意が高まっているのが伝わってくる。

 

 「ドオオオオオオオーーーーーン!」

 

 というお馴染みの太鼓の音が鳴り響き、決勝戦の試合が開始された!

 

 シュバルツ殿と趙匡胤殿は、互いに双方の実力が抜きん出ていて、己と伯仲している事が判る所為か、ジリジリと間合いを測りながら同心円に回っていく。

 やはり得物が大薙刀であるだけに間合いが長い趙匡胤殿が、一歩踏み込んで仕掛けた!

 地摺りの構えから、一気に突き上げる様な斬り上げをシュバルツ殿にみまい、それを後方に下がって避けたシュバルツ殿に対し更に一歩踏み込んで上段から斬り落としを叩き込んで来る!

 それを横に避けてシュバルツ殿は、横回転しながら双剣の片手斬りを趙匡胤殿に仕掛けたが、趙匡胤殿は斬り落とし終わった大薙刀を跳ね上げ気味に、横からシュバルツ殿に斬りかかる!

 それに対してシュバルツ殿は、片手斬りを仕掛けた逆の手の双剣で刃同士を合わせた!

 

 「ギイイイインンン!」

 

 と刃同士が上げる金属音が”コロシアム”全体に鳴り響き、双方が或る程度の距離をとった。

 こんな音を聞いたら、子供にとっては不快極まりないに違い無いと心配し、ベビーコートの赤ちゃんズを見ると何故か赤ちゃんズは3人共興味深そうに舞台を眺めている。

 

 《肝の座った子供達だな》

 

 とやや驚きながら赤ちゃんズに感心し、舞台に視線を戻す。

 普通の手合わせでは、埒が明かないと双方理解したらしく、二人共に轟々と己の武器を旋回させ始めた!

 然も双方共に得物を頭上で旋回させているのだ、シュバルツ殿に至ってはワザワザそうする事が出来る様に柄の部分が繋げられる様にして固定し旋回させている。

 すると充分勢いが付いたと見たのか、ほぼ同時に双方が突っ込んで行く!

 大薙刀をその旋回させてたスピードのまま、横薙ぎに趙匡胤殿はシュバルツ殿に斬りかかり、シュバルツ殿は横に旋回させてた双剣を縦方向にずらし、大薙刀目掛けて叩きつけた!

 

 「ガギイイインン!」

 

 と云う凄まじい音を上げて、大薙刀の刃部分と双剣の片刃が同時に壊れてしまい、またも双方距離をとった。

 しかし当然の様に、二人は壊れた部分を根本から外して、趙匡胤殿は大薙刀では無く棒術に、シュバルツ殿は双剣では無く片手剣として得物を振るい始めた。

 やはり双方共に、戦場を生きてきた戦人だけに、臨機応変に武器に固執せずに最善を選択して行動出来る様だ。

 暫くの間、剣技と棒術での技を存分に使用した武器同士の叩き合いを重ね合わせていたが、このままでは勝負が着かないと察したのか、双方がそれぞれ構えを取り、大技に掛かろうとしている事が、観客全員が理解した。

 

 「ハアッ!」

 

 と気合いを入れた趙匡胤殿は、身体の周りに棒自体を纏わせる様な動きをさせて、徐々に間合いを詰めて行く。

 それに対してシュバルツ殿は、神剣流には無い構えを取った。

 一見すると神剣流の基本型である中段の構えの様だが、実は全然違うのだ!

 この構えをコリント流剣術を学ぶ者は全てと言って良いほど知っている!

 何故ならコリント流剣術を学ぶ者は全ての者は、この技を習得する事を悲願としていて、常にこの最初の型から練習するのだから!

 先ずは、神剣流ではシッカリと剣を握り締めて構えるのだが、この技は逆に剣を軽く握り次の動作に繋ぐ為の予備動作とする為だ!

 案の定、シュバルツ殿は剣先を小刻みに揺らし始め、次の動作に繋ぐ為の予備動作を始めた。

 そして間合いが詰まった瞬間、趙匡胤殿の棒が予想出来ない背中に隠れて、思いもよらない右脇からシュバルツ殿に突き出された!

 しかし、このコリント流剣術の技の前には、意表を突く事はほぼ無理である!

 ガチガチに構えていない分、柔らかく剣先がその棒を払うと、そのままシュバルツ殿は技を発動させた!

 その柔らかい動きは、たちまち回避不能の連撃に置き換わり、趙匡胤殿は何時の間にか必死の防戦に徹し始めた!

 其れはそうだろう。

 何故なら、この技の型に巻き込まれた段階で対戦者の負けは確定しているのだから。

 そう、その技の名は『メテオ・ストリーム』!

 コリント流剣術最終秘奥義にして24連撃のコンボ技が繰り出される、回避不能の無敵の技で有る!

 未だにアラン様とセリーナ・シャロン両准将の3人しか、完璧に使いこなせないと思われていたが、やはり剣王たるシュバルツ殿は厳しい鍛錬と研究の末に習得したのだ!

 

 そして最後の鋭い打ち下ろしが終わると、まるで当然のように趙匡胤殿は舞台中央で倒れ伏していた。

 全く趙匡胤殿にとっては不幸な話だ。

 西方教会圏の者ならば、習得こそ出来ないがモニターでの特集番組でも取り上げられた程、有名なコリント流剣術最終秘奥義『メテオ・ストリーム』だが、まだ良好な関係になって日の浅い崑崙皇国では、殆どの人間がこのコリント流剣術の凄まじさを知らないだろう。

 

 そして、審判がシュバルツ殿に対して優勝を告げて、”コロシアム”が割れんばかりの喧騒に包まれた。

 自分達も拍手で以て、シュバルツ殿を褒め称えていると、隣から小さなパチパチと云う音が聞こえた。

 見ると、ベビーコートの中で3人の赤ちゃんズが、3人共懸命な様子で両手で拍手しているのだ、それに気付いた放送局のスタッフがカメラを赤ちゃんズに向けて、恐らくはハリーの指示で超大型モニターに赤ちゃんズが大映しになり、それが判ったシュバルツ殿は舞台から、自身の妻であるターニャさんと娘のエレンちゃんに向けて大きく手を振り喜びを伝えている。

 それが判ったターニャさんは、娘のエレンちゃんを抱えあげると舞台に向かい、シュバルツ殿も意図を察してターニャさんを娘のエレンちゃんごと抱えて舞台に引き上げ、家族で優勝を喜んだ。

 その姿は、非常に好感を持って迎えられて、その後のインタビューも家族で応じたので、皆顔を綻ばせてインタビューしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。