人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月5日②(人類銀河帝国 コリント朝2年)
午後からの決勝戦も同様の障害物フィールドでの試合なので、会場はそのままで行われる。
昨日と同じ様に、子供達を木製のベビーコートに入れて、昼食後のデザートで有る『フルーツワッフル』を食べながら決勝戦の予想を、アラン様と昨日優勝したシュバルツ殿と共に語り合う。
『岳飛』殿の実力は、自分とアラン様にとっては一緒に戦った仲間なだけに良く判っているが、『ロビン・フッド』殿の『隠形の術』の凄まじさは、先程の集団観戦を以ってしても見破れないレベルである。
この事実にアラン様とシュバルツ殿と云う、帝国でも屈指の武道家が驚愕しきりで対策を中々立てられず、困惑しているのが全てを物語っていた。
つまり、此の二人にして予想がつかないのだ。
大人が難しい顔をしている中、ベビーコートに入れられている赤ちゃんズは、周りにクレリア様始め母親とお付きの女性陣から見守って貰いながら、楽しげに与えられた玩具を振り回して遊んでいる。
周りの女性陣は、その赤ちゃんズの愛らしさに喜んで「キャー、キャー!」と騒ぎ、また側に群がる華族や貴族の観客も嬌声を上げて羨ましがっている。
その声を聞いていると、鹿爪らしく今後の帝国軍の技術教員として『ロビン・フッド』殿を採用しようと、考えている自分達が、半分馬鹿らしくなって、昼ではあるがアルコールの入ったシャンパンを振る舞い酒として、周りの華族と貴族に提供し、ご婦人方にはアルコールの入らないシャンパンを勧めて、お祭り気分に浸る事にした。
そして決勝戦の時間が来て、会場の両端に『岳飛』殿と『ロビン・フッド』殿が現れた。
双方、弓矢を装備しているが、どうやらサブウェポンも装備している様だ。
規定により、サブウェポンも近距離武器は禁止で、遠距離武器を選ばなければならないので、『岳飛』殿は『流星鎚』、『ロビン・フッド』殿は投げナイフを装備している。
ドオオオオオオオーーーーーン!」
開始の太鼓が叩かれ、選手二人は素早く障害物の間に姿を消した。
まあ、ここは定石通りに動くだろうとは、皆が予想した通りなので驚きは無い。
しかし、二人のあまりの隠れっぷりに、上から俯瞰している観客どころか、モニター上にも何処に潜伏しているか判別不能の?(クエスチョンマーク)が出たままなので、会場内外の観客が困惑してしまった。
そのまま、緊張感に包まれた5分間が過ぎて、誰かがクシャミをして注意が削がれた瞬間、観客席の音が聞こえないはずの両者が、いきなり撃ち合った!
距離は30メートルの近距離で、互いに複数の矢を相手に放ったが、双方相手に当てる事が出来ず、直ぐにまた隠れてしまった。
中々心臓に悪そうな攻防だ、突然現れて攻撃しあい直ぐに消えてしまうのだから、戦場では厄介極まりない敵になるだろう。
またも静寂が会場を支配していたが、出し抜けに障害物の幾つかが倒れると、『ロビン・フッド』殿がその障害物に紛れて姿を現した!
すると、隠れていた『岳飛』殿も現れて共に矢を放つ!
今回は、双方過たずに矢がお互いに突き立ったと見えた!
だが、其れは早計に過ぎて、実際の処本人に見えたのは同じ大きさの障害物で、本人では無い。
そして本人が近くにいるに違い無いと、『岳飛』殿が警戒しながら現場に姿を現すと、地面から投げナイフが突然投擲された!
何と、『ロビン・フッド』殿は例の『隠形の術』を駆使して地面に潜り、『岳飛』殿が近づくのを虎視眈々と待っていたのだ!
勝負あった!
誰もが、『ロビン・フッド』殿の勝利を確信した次の瞬間、突然『流星鎚』が『ロビン・フッド』殿の背後から襲いかかり身体に巻き付く!
《エッ!》
観戦していた誰もが、目を疑ったのと同じか其れ以上に『ロビン・フッド』殿は驚愕した顔で、姿を表した『岳飛』殿と『岳飛』殿と思われた物を見比べた。
姿を後から現した『岳飛』殿は、上半身に鎖帷子のみを着ていて、当初『岳飛』殿と思われた物は崑崙皇国の軽装鎧を着ていたが、何と鎧の下は紙が人の形を保っている!
《符、符術か?!》
人の形を保っていた紙は、暫くするとハラハラと人の形を失ってしまう。
この術は、崑崙皇国での滞在等をして、知識として持っていなければ判らないだろう。
審判が、『ロビン・フッド』殿の戦闘継続不能を確認し、『岳飛』殿の優勝を宣言する。
その後、後3位決定戦も行われて、結局3位は『霍去病』殿で4位は『カッサバ』殿となった。
此等の成績への労いと敢闘を祝う優勝祝賀と、メダル授与が行われ『弓矢等遠距離部門』の大会が幕を下ろした。