人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑩(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『近距離武器部門』④》

 6月6日④(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 終に『近距離武器部門』女性部門の決勝戦が行われる。

 

 剣王『オウカ』殿と『エルナ』殿は、舞台の両端に登壇し、中継するモニターには二人の事績が流れる。

 両者の様々な武勇伝や学んだ流派などが紹介され、会場全体が大きく盛り上がった。

 

 「ドオオオオオオオーーーーーン!」

 

 と開始の太鼓が叩かれて、空気が震動する中、試合が開始される。

 その瞬間、共に上段に剣を構えた!

 然も、両者の構えは共に神剣流の上段の構えで、所謂『火の構え』と呼ばれるものだ!

 何故『火の構え』と言うかというと、心に火を灯しそれを燃やし続けなければ構え続けられないからだ。

 上段とは、敢えて胴を相手に晒した上で其処を斬りに来る相手の頭上を、諸共に砕く様に振り下ろすので、一切相手に対して気迫の面で気後れせずに、上回る気概で臨まなくてはならない。

 

 正直、剣王『オウカ』殿が上段かトンボの構えで臨むのは予想していたが、『エルナ』殿が真正面から受けて立つとは想像の埒外だった。

 

 やがて双方の気合が満ちて、場の緊張が急激に高まった!

 

 「キエエエーーーー!」

 

 裂帛の気合を込めた声を上げて、双方が一足で間合いを跳ぶ!

 

 「ガッ!」

 

 と双方の剣がかち合い、鍔迫り合いになる。

 

 「エヤアアアアッ!」

 

 と剣王『オウカ』殿が叫び、上段からの連打を『エルナ』殿に見舞うと、『エルナ』殿はシッカリと防御し、返しの胴薙ぎを放った!

 だがそれを想定していた剣王『オウカ』殿は、一気にバックステップして攻撃を避けると、先程と打って変わって中段の構えになる。

 それに対して『エルナ』殿は、抜刀術の構えを取り相手の出方を伺っている。

 試しのつもりか『エルナ』殿が抜き打ちの斬撃を放つと、剣王『オウカ』殿は長刀を最小の動きで振って斬撃を打ち落とす。

 すると、エルナ殿は連撃の斬撃を放ち、それに対してオウカ殿は長刀を円形に回して防御した。

 そしてエルナ殿は抜き打ちの構えから、オウカ殿に迫り胴を薙ぐ!

 その剣に合わせオウカ殿は柄でエルナ殿の剣を叩き落とすと、エルナ殿は手が痺れた様で硬直した。

 次の瞬間、オウカ殿は長刀を振り下ろすと下段から斬り上げた!

 

 「ギイイイインンン!」

 

 との金属音が鳴り、クルクルとエルナ殿の剣が宙を舞う。

 

 「・・・・・燕返し・・・・・!」

 

 シュバルツ殿が呟く、燕返しとは虎切りとも言われる、先に刀を振り下ろし、踏み込んできた相手を、刀を瞬時に返して切り上げる神剣流の技である。

 エルナ殿は、後方宙返りをしてサブウェポンのナイフを逆手に握った。

 オウカ殿はそれを見ても警戒を解かずに、『八相の構え』を取る。

 暫く双方が間合いの外で同心円状に回る。

 すると、ゆっくりとオウカ殿は長刀を円を描く様に回し始めた。

 

 《この様な構えは神剣流に無いが?》

 

 と疑問に思い横にいるシュバルツ殿に目を向けると、やはり疑問に思ってるらしく首を傾げ注視している。

 

 《とすると、オウカ殿の独自技か!》

 

 と痺れを切らしたのか、エルナ殿が左右に身体を振ってフェイントを掛けながら踏み込む。

 その踏み込みに対し、オウカ殿は剣速を上げて目まぐるしい回転となった。

 何とかその回転の下からエルナ殿は襲うべく、水面蹴りをオウカ殿の足元に放ち、それをバックステップで避けたオウカ殿目掛け、下からのナイフの突き上げをする。

 それを横回転して捌いたオウカ殿が、その間も回していた長刀を回転の軌道に乗せて斬りかかる!

 どうしてもリーチの差がある長刀とナイフの所為で、必死に距離を取って避けようとするエルナ殿に対し、オウカ殿が上手く長刀の回転に身体を乗せて来て、信じ難い事に体ごとの連続回転斬りを仕掛けて来た!

 横に8の字を描く様に身体を動かしながら斬りつけて来る動きに、徐々にエルナ殿は追い詰められて行き、長刀を受け続けていたナイフもボロボロになる。

 だが、容赦なくオウカ殿が攻め続けた結果、やはりナイフは保たに「ギイィィン!」と言う音とともに折れてしまった。

 そして首筋に長刀をゆっくりと突きつけられて、エルナ殿は降参を宣言した。

 審判がそれを確認して、オウカ殿の優勝を認めた。

 すると、会場全体から称賛のスタンディングオベーションが、決勝を戦った二人に浴びせられた。

 自分もその中の一人だし、周りに居た面々も大きく立ち上がって拍手している。

 特に大きく拍手しているのはクレリア様だ。

 然も涙を流して拍手している。

 判る様な気がする。

 我らが『クラン・シャイニングスター』を結成する前から、クレリア様とエルナ殿はシャイニングスターメンバーとして、苦難を共にしていた事は帝国の人々にとっては当然の認識だし、そのお陰で皇后付き親衛隊団長であると判っている。

 だが、今回の『世界武道大会』で見せた実力は、剣王に迫るものだと世界中に示したので、皆の認識も塗り替えられた事だろう。

 その証拠に、舞台から降りてくるエルナ殿は、やりきった顔をしてとても晴れ晴れとしている。

 

 《素晴らしいな、実力を出し切って満足している姿は!》

 

 そう思い一層にボルテージが上がった拍手の渦の中、クレリア様の元に歩み寄るエルナ殿は、非常に輝いて見えた。

 

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