人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑪(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『近距離武器部門』⑤》

 6月6日⑤(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 いよいよ『近距離武器部門』の男性部門決勝戦が行われる。

 

 剣王『カイエン』と『沈 光』殿は、舞台の両端に登壇し、中継するモニターには二人の事績が流れる。

 

 両者の様々な武勇伝や学んだ流派などが紹介され、会場全体が大きく盛り上がって行く。

 特に二人の崑崙皇国での様々な戦歴は、殆どの帝国民にとって目新しい事実で、相当に興味を引いたようだ。

 

 「ドオオオオオオオーーーーーン!」

 

 と開始の太鼓が叩かれて、空気が震動する中、試合が開始される。

 

 剣王『カイエン』は、明らかに通常より長い長刀を腰に下げ、自身の武器で有る『蛍丸』に寄せていた。

 対して『沈 光』殿は、短い『棍』を持ちジリジリと間合いを狭めて行く。

 いきなりカイエンが、鍔鳴りを連続で響かせて来て、それに対して沈 光殿は棍を縦横無尽に閃かせて、飛んできた斬撃を叩き落とす。

 そして最後に飛んできた斬撃二つを両足の脚甲で蹴り返し、それをカイエンは長刀で斬り落とした。

 

 「ブオオオーーーン!」

 

 と鈍い回転音を立てながら棍を振り回し、一足で間合いを詰めると沈 光殿は、頭上から棍をカイエンに叩き付けて来た!

 それに対してカイエンは、身体を揺らす。

 次の瞬間2メートル離れた横手に瞬間移動したように現れると、鋭い抜き打ちを沈 光殿の胴に放ったが、地面に這いつくばる様に長刀を躱して、そのまま水面蹴りをカイエンの足元目指して放つ!

 その蹴りを跳んでカイエンが避けると、明らかにその動きを読んでいた沈 光殿が逆立ちの体勢に成り、弛めていた脚を伸ばす様にカイエンの顔面めがけ蹴り上げた!

 

 「ガッ!」

 

 とカイエンが慌てて顔の前に翳した長刀で防御すると、その長刀を押し上げる様にカイエンごと沈 光殿は蹴り上げた!

 

 「ムウ?!」

 

 とカイエンは唸るが空中なので、それ以上動けない。

 

 《ン?それ以上動けない?!》

 

 そう空中だと、カイエン得意の神剣流奥義『影法師』が使えない!

 何故なら、あくまでもあの技は地面にシッカリと両足を踏んでいないと、踏ん張りが効かずに技を発動出来ないのだ。

 その事に気付いたらしいカイエンは、空中で顔を歪ませる。

 しかしその僅かな時間に、沈 光殿は次の技に移行している。

 沈 光殿は棍を地面に立てるとそれに乗って、空中に跳ぶ!

 まともに身体を空中では動かせずに、カイエンは下から鋭く貫いてくる沈 光殿の脚甲での蹴りを腹にまともに喰らった。

 かなりの滞空時間の蹴り飛ばしに合い、舞台端まで蹴り飛ばされたカイエンは、痛む腹を撫でてダメージを確かめている。

 

 正に空中と云う自分の独壇場での戦いに持ち込ませる沈 光殿の駆け引きの上手さは、まだ若いカイエンには相性が悪い様だ。

 沈 光殿は、両足をコンパスの様に動かして側転しながらカイエンに襲い掛かる。

 脚甲と棍を変幻自在に使い、立体的に攻め立てる沈 光殿に、防戦一方となるカイエン。

 このままジリ貧か? 

 と半ばカイエンの負けを予想していた処、カイエンが再度地面に蹴り落とされた瞬間、いきなりカイエンの眼が赤光を帯びた!

 次の瞬間カイエンが消えた?!

 

 「ヒィィィーーーン!」

 

 異様な高い音が舞台に響き渡るが、カイエンの姿は殆ど見えない?!

 

 《こ、この加速は!》

 

 そう帝国軍人が会得していて、「ナノム玉1」以上を服用している者が、イメージと絶え間ない訓練によって行使出来る様になる、帝国軍人の切り札『加速術』である。

 しかし、「ナノム玉1」で2倍速、「ナノム玉2」で3倍速までしか加速は出来ない筈で、アラン様ですら断続利用で辛うじて5倍速なのに、「ナノム玉2」服用のカイエンが3倍速を明らかに越えて、4倍速以上のスピードでの連続加速を行っている!

 沈 光殿も流石にこの速度には、驚いたらしく警戒の構えを取って、必死にカイエンの動きを掴もうとしている。

 だが音はすれど残像すら残さないそのスピードは、明らかに常軌を逸する物で、会場全体の緊張はピークに達して行く。

 

 「ギン!」

 

 金属音が鳴った。

 いきなりの事だったので慌てて注視すると、どうやら沈 光殿が突然繰り出された斬撃をギリギリで棍で弾いた様だ。

 だがそれは端緒であった様で、続け様に斬撃が四方八方から沈 光殿に襲いかかり、それの対処に沈 光殿は忙殺され、必死に棍を回転させて弾きまくる。

 そうこうする内に、弾き飛ばせない斬撃が身体に当たる様になり、徐々に沈 光殿はダメージが溜まる。

 肩で息をし始めた沈 光殿の前に、出し抜けにカイエンが姿を現すと袈裟斬りを沈 光殿に食らわす。

 急な袈裟斬りにも、その反射スピードで何とか防御した沈 光殿に切り返しの下段突き上げが襲う。

 これも防御出来たが、直ぐに面打ちがやって来る。

 それも防御すると、すかさず小手打ちが来る、際どくそれも避けると次には胴斬りが来る。

 

 《此れはもしやエターナル・ストリーム!?》

 

 そう、それは確かにコリント流剣術奥義エターナル・ストリームである。

 しかし、従来のエターナル・ストリームよりも明らかに切り返し速度が早く、恐らくは2倍以上である!

 その切り返しに付いて行ける沈 光殿も凄いが、やはり繰り出しているカイエンの方が凄い!

 よく見ると、カイエンの肌の見える箇所はミミズ腫れと毛細血管からの出血で、凄絶な有り様だ。

 恐らくは限界を越えた上に、更に限界を越えた代償であろうが、あまりにも無茶過ぎる!

 この技が不発に終われば後がないと覚悟した、正に背水の陣でカイエンは臨んだのだろうが、凄まじすぎる。

 やがてそのスピードに耐えられなくなった沈 光殿が、深々と胴を薙がれ舞台場で突っ伏した。

 

 そして審判が確認の為に舞台に上がり、沈 光殿の失神を確認し、カイエンの優勝を宣した。

 会場全体がスタンディングオベーションの波にさらわれていると、突然「バタンッ!」とカイエンがひっくり返った。

 ずっと残心の構えのままであったので、怪訝に思っていたのだが、どうやらあれ以上動けなかったと云うのが真実なのだろう。

 そのまま、過呼吸になってしまい双方共に担架で移動させて病院に向かわせる事になった。

 どうも、腕は確かなのだが全力を尽くし過ぎてしまうようで、些かカイエンのバランスの危うさに危機意識を持った。

 

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