人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑫(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『徒手空拳部門』①》

 6月7日①(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 『徒手空拳部門』の準決勝に出場する4人は、ミツルギ殿、拳王『ダルマ』殿、パヤット(褐色の男)、ヘクトール(例の大男)である。

 

 そして1回目の準決勝戦が始まった。

 

 「ドオオオオオオオーーーーーン!」

 

 と開始の太鼓が叩かれて、空気が震動する中、試合が開始される。

 登壇したのは、ミツルギ殿とパヤット。

 ミツルギ殿は、最近正式採用された帝国軍人用のインナースーツの上に道着を羽織り、自然体の儘だ。

 対するパヤットは、どっしりと腰を落として右半身に開き、右拳を突き出し左拳を後ろに引いている。

 ミツルギ殿は、神拳流に於ける『無の構え』、パヤットは、『半身上下の構え』と云った構えである。

 暫く双方が見合った後、かなり無造作にミツルギ殿がまるで挨拶を告げる様に、パヤットに近づく。

 パヤットの間合いに入った!と思った瞬間。

 

 「ハッ!」

 

 という気合いと共にパヤットが左拳を突き出し、それをミツルギ殿は半身に避ける。

 

 「吩!」

 

 その避けたミツルギ殿に向けてパヤットの右拳が襲いかかる。

 それを横に捌いてミツルギ殿の裏拳がパヤットの顔面に叩き込まれる!

 その右拳の裏拳をパヤットの右腕が受け止めて。

 

 「ケヤアッ!」

 

 との声と共にパヤットの左蹴りが横薙ぎにミツルギ殿の腹を狙う!

 

 「フヒュッ!」

 

 との呼気音を上げてミツルギ殿が空中に浮いて身を縮こまると、次の瞬間右脚と左脚の2段蹴りがパヤットの上半身を襲う!

 

 パヤットは両腕を十字にクロスしてブロックして受けるが、押されたやや後退した。

 その開いた間合いを一瞬で詰めると、ミツルギ殿の左右の拳の連打がパヤットに襲いかかる!

 それを必死の形でパヤットは両腕で捌くが、どうしても幾つかの拳がパヤットの身体に届いた。

 連打が終わったと同時にパヤットは大きく距離を取り、右拳を大きく後方に引いたやや変形の『半身の構え』を取った。

 その構えを見てミツルギ殿は、『前羽の構え』を取った。

 

 すると不思議な事が起こる。

 いきなりその姿勢を変えずにパヤットが吠えたのだ!

 

 「吩!」

 

 その短い気合いを込めた声が上がった次の瞬間、ミツルギ殿が『前羽の構え』のまま両手を突き出し発勁を放った!

 そしてミツルギ殿の直前の空間でミツルギ殿の放った発勁が、何かと衝突して衝撃音を立てた。

 

 「バンッ!」

 

 との音が起こると、パヤットは続け様に吠えた。

 

 「吩!吩!吩!吩!吩!」

 

 この連続の気合いに合わせてミツルギ殿はかなり威力のある発勁を前面に放つ!

 

 「バババババンッ!!」

 

 とのやや鈍い連続音がミツルギ殿の前面で鳴った。

 どうやら、発勁では無いがかなりの距離に飛ばせる遠当ての打撃を、パヤット放っているようでミツルギ殿は敢えて発勁で迎撃した様だ。

 

 見事に受けられたパヤットは、助走を始めると突然跳躍した!

 そして空中で大きく前転するとその回転と共に踵落としをミツルギ殿の頭頂部に叩き落とす!

 その強引なまでの攻撃にミツルギ殿は、これまた前転して躱す。

 いや、躱しただけで無くそのまま攻撃を放っていた。

 つまりその前転して躱す動きをそのまま攻撃に転用し、空中に有るパヤットの腹部目掛けて踵蹴りをぶち込んだのだ。

 

 「グムッ」

 

 とのうめき声を上げてパヤットは腹を抑えて後退したので、チャンスと見たミツルギ殿はパヤットの顔横に旋回蹴りを連続で浴びせ続ける。

 それをパヤットは腕で受けようとするが、腹を片腕で抱え込みながらなので受け止めきれずに、こめかみに諸に蹴りを喰らう!

 

 「ヌウウウッ!」

 

 と呻きながらゴロゴロと舞台の上で横に回転して避けると、ゆっくりと立ち上がる。

 往生際が悪いと最初は思ったが、パヤットの瞳を見てその感想を取り下げた。

 瞳は語っていた。

 

 「最後まで力を尽くして戦う!」っと。

 

 その覚悟を見たミツルギ殿は、大きく頷くと気を溜め始める。

 やがて気が十分に満ちたと判断したミツルギ殿は、ゆっくりとパヤットに近づく。

 その動きにパヤットは、何の衒いもなく更にはフェイントも交えずに真正面の中段突きを打ち込んだ。

 だがその中段突きをミツルギ殿は、やや屈む形で潜り込むと一本背負いの形で肩に乗せる様に腕で抱え込む。

 そしてそのまま背中に背負う形でパヤットを担ぎ上げた瞬間にそれは発動した!

 何とミツルギ殿は、背中に背負う形でパヤットを担ぎ上げた瞬間に『靠』を放ったのだ。

 然も十分に気を込めた靠である!

 恐らくパヤットは、全身に車両が正面衝突して来た様な衝撃を喰らったに違いなく、ミツルギ殿の背中からズルズルと崩れ落ちた。

 やはり流石の実力である。

 ミツルギ殿は、それ程の消耗をする事無く、決勝戦に駒を進めたのであった。

 

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