人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記⑭(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『徒手空拳部門』③》

 6月7日③(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 昼食を観客席近くの場所でテーブルの上に、軽い食事(サンドイッチやワッフル、デザート等)が用意されていて、華族や貴族と王族の方々が摘んで行く。

 午後から始まる決勝戦が終わると、閉会式が行われて、選手も招いた打ち上げパーティーが迎賓館で行われる。

 なので、昼食は皆軽い量で済ませている。

 

 その横では赤ちゃんズと相棒の星猫兄弟5匹が遊んでいるので、華族達の女性陣が代わる代わる赤ちゃんズと星猫を抱き上げたり撫でて微笑ましい場が出来ている。

 

 暫くして、決勝戦の時間が来たので皆が観客席に戻って観覧する姿勢をとった。

 

 拳王『ダルマ』殿とミツルギ殿が舞台の両端に現れ登壇した。

 この二人は昨年も決勝戦を戦っていて、然も元々は同じ神拳流の兄弟弟子で、ミツルギ殿は元拳王、ダルマ殿は現拳王である。

 そしてミツルギ殿が神拳流を出奔して拳王から退いた理由は、ダルマ殿との同門同士の私戦の際にダルマ殿の両足を折ったと云う事である。

 そんな因縁の二人は今では同じ帝国の親衛隊長となり、例のダルマ殿の両足の怪我も『ナノム玉2』と病院での念入りのヒール治療で完治し、今や怪我を負った以前より強靭な脚に生まれ変わり、様々な蹴り技を帝国軍人に教授する師範として尊敬を集めている。

 方やミツルギ殿は、アラン様の作った帝国式格闘術を独自に発展させ、投げる・打つ・極めると云う総合格闘術を編み出し、言わばミツルギ流とでも言うべき流派を起こして内弟子を育てている。

 それぞれ別の方向で帝国軍に貢献しているので、アラン様は大いに評価していてこの大会が終わって帝都コリントに帰還した際には、それぞれの道場と親衛隊兼任の部隊を創設させる内示を出している。

 つまり今回の決勝戦は、今後創る各々の道場のある意味PRの側面もあるな。

 と、自分は局外の立場なので、暢気に考えた。

 

 やがて二人が中央の停止線で構えを取る。

 そして、

 

 「ドオオオオオオオーーーーーン!」

 

 と開始の太鼓が叩かれて、空気が震動する中、試合が開始される。

 

 いきなり双方が構えを解いて、蹴りをぶつけ合う!

 

 「ゴッ!」

 

 と鈍い音が弾けると、そのまま連続して双方の遠慮会釈無い連続蹴りが繰り出され、凄まじい連続音が会場の空間を埋め尽くした!

 

 「ドゴガガガガガガガガガッ!」

 

 とても人が出す蹴り同士の音とは思えないが、一通りの蹴り技を双方繰り出し尽くすと、ミツルギ殿が呻くように言葉を洩らす。

 

 「・・・まさかここまで出来るとはな。

 一年前までまともな蹴りが出来ない脚だったのが、信じられないぜ!

 ダルマよ、お前は脚を完治させただけでなく、徹底的に蹴り技を練り直して昇華させたんだな・・・!」

 

 「・・・一年前は、不自由な両足をある意味捨てて、両腕と拳を鍛え上げて技を練り上げましたが、やはり歪な所為で先輩に敗北しましたが、その直後にアラン様にもアッサリと負けたのですが、アラン様の心遣いと導きによって私は新たな武の道を示されたお陰で、何段階ものステップアップをこなして、この段階まで到達出来ました。

 その意味では、去年の敗北は私にとって益になる事が多く、先輩には感謝しております。

 なので、その感謝の念も込めて、この一年の自分の成長を先輩には受けて貰いますぞ・・・!」

 

 と二人はニヤリと笑い、楽しげに言い合った。

 

 次の瞬間、二人は全身を叩きつけ合うかの様な猛打を浴びせあった!

 

 「ドドドドドドッ、ゴガガガガガガッ!!」

 

 顔、腹、腹、肩、脚、腰、顔、顔、顔、腰、腕、肩。

 様々な部位と、急所目掛けて、突き、蹴り、肘打ち、回し蹴り、諸突き、踵落とし、手刀、肘振り上げ、唐竹割り、蹴り上げ等の技の限りを尽した猛打を双方繰り出しあった!

 

 至近距離の猛打の応酬は、たちまち双方の身体の表面にミミズ腫れと引っかき傷、そして打ち身を作るが、致命的な一撃を相手に叩き込めないでいる。

 

 暫くの撃ち合いで、二人共このままでは決め手に欠くと判ったのだろう、二人で申し合わせたかの様に、同時に後方に跳び距離を取る。

 双方呼吸を整える為に息吹を行い、大きく肺に息を吸い込む。

 

 そしてミツルギ殿は、頭上で両腕を交差させるとそのまま身体の前面でX字に構える!

 

 《あ、あれはコリント流格闘術奥義『八方拳』!》

 

 そうこの奥義は、あまりの習得の難しさの故に、正式な帝国式格闘術には取り入れず。

 コリント流格闘術を極めようとする、ごく一部の人間にのみ伝授している言わば必殺の奥義である。

 自分も何時かは習得したいと念じている。

 

 そのある意味極限の奥義の構えを見て、ダルマ殿はある種の覚悟を決めた顔をすると、無の構えを取る。

 

 意を決してダルマ殿は助走をして大きく跳躍する!

 そして大喝を発した。

 

 「『逆倒結跏趺坐・旋風縦回転蹴り』!」

 

 準決勝で見せた技の縦回転を、速度を増してミツルギ殿の頭頂部目掛け、ぶつけて来た!

 

 「カッ!」

 

 ミツルギ殿とダルマ殿が交差し、いきなり会場全体の時間が止まった様な気がした。

 上から襲いかかってきたダルマ殿が、宙に縫い留められるように動きを止めている!

 そしてそのダルマ殿の顔面の急所の『人中』に右拳の中立ち拳が、身体中央の急所『鳩尾』に左拳が叩き込まれていて、ダルマ殿の右脚の蹴りが、ミツルギ殿の肩口に乗っていた。

 

 実は瞬間の場面だったのであろうが、そのままダルマ殿は崩れ落ちて舞台中央で倒れ込み、ミツルギ殿は蹴りを入れられた右肩口を抑えているが、立っている。

 審判が、ダルマ殿の様子を確認して悶絶している事を確認し、ミツルギ殿の勝利を宣した。

 やはりミツルギ殿は強かったし、ダルマ殿も明らかに昨年よりも強かった。

 この様な高レベルの攻防が見れるとは、来年の『世界武道大会』も楽しみだ。

 と自分としては、非常に満足な大会であった。

 

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